第22話:真琴の居ない日々。
真琴が芸能の仕事の為、東京へ旅立ってから早くも10日以上が過ぎて、先日の、
飛鳥と真生の大喧嘩もようやく収まり、真生も自宅へ戻った、とある平日の、ある日の1-A。
つい先ほど、お昼休みのチャイムが鳴ったばっかりだった。
そこで飛鳥が、スマホを取り出し、千春にLINEでメールした。
それは、こんな内容だった。
「先輩、飛鳥です。今からお昼ご飯、ご一緒しませんか?」
と言う内容だった。
そして飛鳥が待つこと2~3分。すぐに返事のメールが来た。
「飛鳥ちゃんからお昼誘ってもらえるだなんて、めっちゃ嬉しいよ!大歓迎だよっ!
で、ドコで待ち合わせようか?」
と言う内容だったので、飛鳥がスマホで連絡しようとした時、タイミング悪く、クラスメイトの結梨が声をかけて来た。
「あーっすか!」
「あ、季子ちゃん。」
「ん?誰かに電話でもしようとしてた?」
「あ、う、うん。」
「そか、ゴメン。ほなまたでえぇわ。ほななー。」
「ゴメンな、結梨ちゃん。」
「えぇってえぇって。」
そう言って結梨は教室の外へ出て行ったので、今度こそ飛鳥は千春に電話をした。
「あ、もしもし、先輩ですか?」
「やぁ、飛鳥ちゃん。」
「今、どちらですか?」
「ん?まだ教室だけど?」
「そっか、あ、えと、エリカさん、じゃなくて、青島先輩はまだ居ますか?」
「青島さん?居るよ?代わろっか?」
「え?」
「青島さん?電話だよ?」
「へ?私に?誰から?」
「出たら分かるよ。」
「もしもし?青島ですけど?」
「あ、エリカさん?私、飛鳥です。」
「あぁ、飛鳥ちゃん。もう、誰からかと思ったじゃない。鷹梨君のスマホから電話して来るから。」
「い、いえ。先輩と一緒にお昼でも、て思たんですけど、そう言えばエリカさん、先輩と同じクラスだったなー、って思い出して、それで変わってもらったんです。」
「優しい心配りありがとうね。でも、大丈夫よ。私もクラスで、良くお話ししてくださるお友だちが出来たから。だから、飛鳥ちゃんは、私に遠慮しないで鷹梨君とお昼休みデートして来なさい。」
「あ、は、はい。ありがとうございます。」
と、そうゆう会話を、飛鳥とエリカがしていると、エリカの元へ、
仲の良いクラスメイトたちがやって来た。
「あっおしっまさーん、おっひる行こっ!」
「あ、うん、待ってくださる?」
「はーい。」
「そうゆうことだから、じゃあまた帰る前に昇降口でね。」
「はぁい。」
そう言ってエリカは千春にスマホを返し、クラスメイトたちとお昼ご飯へと出掛けた。
そこで、千春が電話に出た。
「あ、もしもし?飛鳥ちゃん?」
「あ、はい。先輩。」
「どうしよっか?」
「そうですねー。私今、廊下歩きながら話ししてますので、今から先輩のクラスまで迎えに行きますね。だから、待っててもらえませんか?」
「え?いいの?」
「はい。」
「じゃあ、待ってるよ。」
「はーい。」
「じゃあ、あとで。」
「のちほどー。」
そう言って2人は長い電話を切って、飛鳥は千春のクラスへと急いだ。
そして、階段を上がり、千春のクラスの入り口に着いた時、千春のクラスメイトの女子生徒とすれ違ったので、その女子生徒に声を掛けた。
「すいません、先輩。」
「はい?」
「あの、鷹梨先輩、いらっしゃいますか?」
「あぁ、鷹梨君?ちょっと待ってね?たっかなっしくーん!可愛い女の子の後輩がお誘いよー!」
と、その女子生徒が冗談交じりに大声で言うと、教室内に居た生徒が一斉に飛鳥の方を振り向いたので、飛鳥の顔が急に真っ赤になった。
「ちょ!そんな大声で言ったら、その子に迷惑だろ?」
「ごめんねー。じゃあねぇー!」
と言って、その女子生徒は消えて行った。
そして千春も、飛鳥の元へとやって来た。
「ごめんね、うちのクラスの女子があんなこと言って。」
「いえ、だいじょぶです。」
「ささ、行こ行こ。」
そう言うと千春は飛鳥の手を引き出て行こうとすると、他の男子生徒たちから、ヒューヒュー!と、口笛を吹かれたので、2人は、そそくさと足早に教室から立ち去った。
そして、廊下を歩きながら、千春は話しを切り出した。
「あ、さっきはごめんね?」
「え、何が、ですか?」
「教室での冷やかしとか。」
「あぁ、だいじょぶです。付き合ったりすると、そんなもんだ、って、まこちゃんに聞いてますから。」
「そか。そう言えば楠木さんは?最近部活とかでもあまり見ないけど…。」
「まこちゃんですか?」
「うん。」
「えと、まこちゃんは今、テレビのCMの撮影と、映画の撮影が同時進行で行われてるので、その関係で、1学期の間、学校を休んで、長期休学中です。」
「そう、だったんだ。どんな映画撮ってるんかな?」
「さぁ、内容はまこちゃん自身も知らない、って言ってましたから。」
「ん?1学期の間?って言った?」
「えぇ。」
「じゃ、じゃあ、春の文化祭は?」
「多分、戻って来れないかも、です。」
「そう、なんだ。じゃあ、ミスコンとかも出れない、よね?」
「多分。」
「おぉー、他のクラスからはどんな子が出るか分かんないけど、ウチのクラスからは、青島さんが出るし、楠木さんが居ないんだったら、ウチのクラス、結構上位に食い込むかも?」
「あぁー、そうかも、ですね。だってエリカさん、めちゃかわいいですし。」
「うんうん。」
と、2人は話しをしながら中庭の芝生広場までやって来た。
「飛鳥、ちゃん?」
「はい?」
「学食行くんじゃなかったの?直接芝生広場まで出て来たけど。」
「あ、今日は、私がサンドウィッチ作って来たんです。先輩の為に。」
「えぇ!ぼ、僕の為に?」
「はい。まぁ、初めて作ったから下手だし、エリカさんや、家のメイドさんにも手伝ってもらったんですけどね。それでもよろしければ…。」
「全然いいよー!飛鳥ちゃんの作ってくれたものなら、何でも食べるよ!」
「じゃあ、どこで食べましょう?」
「そうだね、あそこの木陰なんか涼しそうで良いんじゃない?」
「じゃあ、そうしましょう。」
そして2人は、芝生の上にハンカチを敷いて、その上に座り、エリカと翠に教えてもらったサンドウィッチが入ったバスケットの蓋を開けた。
すると中からは美味しそうなミックスサンドが出て来たので、千春がビックリして…。
「うわーうわー、凄く美味しそう!!」
「そ、そうですか?」
「ど、どれから食べたらいいかな?」
「えと、どれからでも。」
「じゃ、じゃ、このタマゴサンドから。」
「はい。」
「いただきまーす。」
と、嬉しそうに千春は、飛鳥が自分の為に作って来てくれたサンドウィッチをほおばった。
「んー…、このタマゴの甘さが何とも言えない美味しさだねー。初めてとは思えないよ。」
「ほ、ほんまですか?」
「うん。」
「じゃ、じゃあ、つ、次はこっちのハムサンドをっ!」
「うん。」
と、飛鳥にせがまれ、千春はハムサンドを一口。
「ん~…!マスタードが効く~!」
「あはは、あははははは。」
「ん?どしたの?」
「や、先輩って、こんなに明るい人だったんだな、って。」
「そかな。や、でも、それを変えてくれたのは君だよ、飛鳥ちゃん。」
「わ、私ですか?」
「そ。先日の初デートの時だよ。」
「あぁー…。」
「キミのあの歌、今でもちゃんと覚えてるよ。」
「やーっ!それは言わないでー!」
「何でさ?いい歌だったよ?」
「い、いえ、いざ我に帰って自分の部屋で歌詞読み返したら、何かものすんごく恥ずかしくなって。」
「そっかな。いい歌だと思うけどな。」
「先輩、メイデイの歌、聴いたことあります?」
「あぁ、うん、君が吹部でプレゼンの時に説明してたやんか?」
「あぁ、はい。」
「あのあと家に帰って気になって、YouTubeで検索して聴いてみたんだよね。」
「そ、そしたら?」
「良かったよ。言葉は何言ってるか分かんなかったけど、ボーカルの人、むちゃカッコいいね。」
「わ、私、
「へぇ、阿信さん、って言うんだ、あのボーカルの人。」
「はい。」
「どんなトコが好きなの?」
「彼の創る歌詞の世界観や歌声、そしてライブでのパフォーマンス全てが大好きなんですっ!」
「そっかー、そんなに惚れてるんだねー。」
「ですよー。あ、でも、先輩の方がずっとカッコいいですよ。」
「そ、そんなん言われたら照れるやんか。」
と、そんな甘酸っぱい付き合いが始まったばかりの恋人同士の会話が続く中、お昼休みの終わりを告げる予鈴が校内中に鳴り響いた。
「あ、お昼休み、終わりますね。教室戻らないと。」
「そだね。」
「今日って部活、休みでしたよね?」
「そうだったね。」
「先輩?」
「なんだい?」
「もし良かったら、一度、家に遊びに来ませんか?」
「えぇ?!で、でも…、君のお父さんって、ものすんごく厳しくて厳格な人だったんじゃ…。」
「そうですけど、今は長期出張中でうちの会社の東京支店に行ってますから、全然大丈夫です。」
「で、でも…。」
「ま、まぁ、この話しはガッコ終わってからにしましょう?」
「授業、遅れちゃいますよ?」
「あ、うん、そうだね。」
「ほな先輩、また放課後にー!」
「はぁい。」
そう言って2人はそれぞれ、急ぎ足で自分のクラスへと戻って行った。
それから、あっと言う間に放課後がやって来て、2-Fの、千春とエリカたちのクラスでは、ホームルームが終わったあと、千春がエリカに少しだけ飛鳥のことで話しを聞いていた。
「ね、ねぇ?青島さん。」
「はい?何かしら?」
「飛鳥ちゃんのこと、なんだけどね?」
「あぁ、はい。」
「今日は部活も休みだし、ちょっとだけ2人で話し聞いてもらっていいかな?」
「えぇ?わ、私、ですか?」
「うん、ダメ?」
「あー、ダメ、ってわけじゃないけど、直接本人にいろいろ聞いてみたら?あ、ちょっと待って?」
と、一旦話しを止め、エリカは、自分のスマホを取り出して、LINEのメールを開く。
「あ、飛鳥ちゃんからだわ。」
「え?な、なんて?」
「だーめ、女の子同士の会話なんて聞くものじゃないわよ?」
「え?あ、う、うん。」
「ってか、へぇー、あぁ、そう、うんうん、なるほどねー。」
「ちょ、青島さんっ!何一人でうなずいたりしてるんだよっ!!」
「あっおしっまさーん!」
「あ、追川さん。」
「かーえろっ!」
「あ、はい、ちょっと待ってくださる?」
「あ、う、うん。」
と、追川をそばで少し待たせ、エリカは、右手の人差し指をビシっと、千春の方向に向け、こう言った。
「いい?ぜぇったいに、女の子、泣かせちゃダメだからね?そんなことしたら私、ホンキで鷹梨君のこと、怒りますから。いい?分かって?」
「あ、う、うん。分かったよ、肝に銘じて。」
「それでよろしい。あ、追川さん、お待たせー。さ、帰りましょ。」
「え?あ、う、うん。」
「ねぇ、学校の近くって、美味しいカフェとかって無いのかしら?」
「カフェ?」
「えぇ。私、今、住まわせてもらってる子と、そのお友だちたちとは、まだ、えっと、HOOP、でしたっけ?あそこにあるスタバしか行った事無いもので。」
「そうなんだー。じゃあ、MIOの中のカフェでも行く?」
「MIO?」
「うん、JRの天王寺駅にある駅ビルの名前だよー。」
「あ、そちらはまだ行ったことが無いので、そしたら、いろいろ教えてくださるかしら?」
「えぇ、喜んでー。」
と言う会話をしながら廊下を歩いて昇降口に着くと、飛鳥の姿に目が行って、エリカは、追川に、
「ちょっとココで待っててくださる?」
と言うと、エリカは、飛鳥の元へ行き、今日は、クラスメイトと、天王寺のステーションデパートでショッピングしてお茶してから帰るから、遅くなると思うので、翠さんによろしく伝えといてね?と言い、あと、「鷹梨君と上手くやるのよ。」と一言、言い残して、エリカは、追川の元へと戻って行った。
エリカと追川たちが学校を出て4~5分してから、千春が昇降口にやって来たので、飛鳥は、「鷹梨先輩っ!」と、声を掛けた。
「やぁ、飛鳥ちゃん。お待たせ。」
「い、いえ。」
「さぁ、帰ろっか。」
「はい。」
と、そこに、飛鳥のLINEに連絡のコールが鳴った。
「はーい。って、なんや、直兄か。どうしたん?こんな時間に。珍しいやんか。」
「珍しいやんか、ちゃうわ、ボケが。」
「は?」
「お前、今日、こないだの、"先輩"、家に呼ぶらしいな。」
「あー!」
と、飛鳥は、昇降口で大声を出した。
「ちょ、あ、飛鳥ちゃん、こんなところでそんな大声。」
「す、すいません。先輩。」
「だ、誰から聞いたんや?そんな情報。」
「誰、て、エリカしかおらんやろが、ボケが。」
「はぁー…エリカさんかー。」
「そんなわけやからな、僕も今夜は彼女と無理矢理約束付けたし、遅ぉに帰るから。翠さんにも僕からよろしく言うとくし、おとといまでおった真生かてもうおらんのやし、響香にも邪魔せぇへんように、って、エリカ、伝えてあるみたいやしな?
お前、先輩と2人で頑張るんやで?えぇか?分かったな?」
「頑張る、て、何を、や?」
「いろいろ、やっ!!以上、兄からの伝言でしたっ!!」
と言い、直輝は自らLINEを切った。
「ちょちょっと!直兄っ!って、はぁ、直兄もエリカさんも全く、どうしちゃったって言うのよ…。」
「ん?青島さんとお兄さん、どうかしたの?」
「や、これは、帰りながらお話しします。」
と言い、2人は昇降口で、革靴に履き替えて、2人で一緒に学校を出て、天王寺駅まで戻った。
「先輩?」
「ん?」
「先輩、私の家が、帝塚山にある、って言うのはご存知でしたよね?」
「え?あぁ、うん、知ってるよ。でも、どんな家だかは全く知らない。」
「そう、ですよね。」
「でも、帝塚山の名家、って言うくらいだから、多分ものすんごい大豪邸なんだろうなー、ってのは、想像はしてるよ。」
「大豪邸、ですか…、はぁ。」
そう言いながら2人はいつもの地下街を歩いて、上町線ホームに出て、ホームに停車している路面電車に乗り込んだ。
その車内…。
「ねぇ、駅って、やっぱ帝塚山三丁目とかあの辺り?」
「い、いえ、帝塚山、言うてもかなり広いので、私の家があるのは、姫松駅の停留所からすぐ近くです。」
「姫松?」
「はい。」
と、話しをしている間にも、電車は、天王寺駅前を出て数駅過ぎ、そこへ、自動アナウンス。
「次は、北畠・北畠。」
と、流れたので、飛鳥が一言。
「あ、先輩。」
「何?」
「この次が姫松駅です。」
「そうなんだ、結構近いんだね、天王寺から。」
「はい。」
そして、電車は、北畠停留所の手前の踏み切りから、自動車道との併用軌道に入り、北畠を出て、難なく姫松駅に到着し、飛鳥はIC定期をタッチし、千春は210円を支払い、2人一緒に降りた。
「ここが、私の生まれ育った町、帝塚山地区です。っても、本当に帝塚山、って名の付く住所は、そこの大通りを渡った南っ側なんで、この辺も帝塚山なのかどうなのか、は、私には分かりませんが、でも、近くには南海の帝塚山駅もあるので、この辺一体をそう呼んでるのかと。」
「なるほどねー。確かに、高級住宅地、って雰囲気だねー。」
そして2人は、手を繋ぎながら、上町線の通る表通りから、いつもの細い路地に入り、住宅街を歩く。すると千春が飛鳥にこんなことを言った。
「あ、飛鳥ちゃん?」
「はい?どうしたんですか?」
「な、なんか、凄いね。右も左も豪邸・豪邸ばっかで。」
「そうですか?」
「そうだよ、僕も中学までは、君らと同じ学校だったけどさ、僕の家はこの地区じゃなかったから。」
「何ビクビクしてんですか?」
「し、してないともさっ!」
「あ、着きました。」
「え?」
「ここです、私ん家。」
と、手を向けたその先には、まさに、”お金持ちの豪邸”と言った雰囲気の、大きな門が、千春の前に、どーんと構えていた。
「こ、ここ?」
「はい。」
「ほ、ホントに僕なんかが入っていいの?」
「何言ってるんですか、全然いいですよ?」
と言い、飛鳥がその大きな門をいつものように開けると、そこには、小さな池などもある、洋風の中庭があり、2人は、石畳の通路を歩き、玄関まで行く。
そして飛鳥が、玄関の鍵を開けようとすると、千春が飛鳥の手を持ち、こう言った。
「あ、飛鳥ちゃん!ちょ、ちょちょっと、待ってくれる、かな?」
「は?どしたんですか?」
「や、な、なんか、心臓がばくばくしちゃって。」
「なーに言ってるんですかっ!私の未来の旦那様がっ!!」
「はい?」
「あ、な、無し無しっ!今の、聞かなかったことにしてっ!!」
「ま、まぁ…。」
「だーいじょうぶですって。今、家の中には、一人のメイドさんしか居ませんから、大丈夫。」
「は、はぁ…。」
「ほな、鍵開けますよ?」
「う、うん。」
そして飛鳥は、いつものように鍵を開けて、元気良く、「ただいまー!」と言って、千春を連れ、家の中へと入って行くと、いつものように、翠が出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
「ただいまー、翠さん。」
「お嬢様?」
「んー?」
「こちらの方が、エリカお嬢様が話されてた…。」
「あぁ、うん、紹介するね。私の初彼氏で、将来のだんな様候補の、鷹梨千春先輩。」
「初めまして、千春さま。ようこそ、悠生家へ。
お話しは、エリカお嬢様とぼっちゃまから聞いております。
わたくし、このお宅で、40年近くメイドをさせて頂いてます、芳川翠と申します。
どうぞ、よろしくお願い致します。」
と、千春に向かって丁寧に挨拶をした。
すると千春も、開き直ったのか、挨拶をした。
「は、初めまして。僕は、鷹梨、千春、と、申します。今、飛鳥さんとお付き合いさせて頂いてます。さっき、飛鳥さんが、"将来のだんな様候補"だなんて言ってましたが、そんな話し、僕、今さっき聞いたので、ビックリしてて…。どうぞよろしくお願い致します。」
「はーい、挨拶終わりー。ほな先輩、私の部屋に行きましょう。翠さん、いつもの紅茶とお菓子、お願いね?」
「かしこまりました。」
そう言って飛鳥と千春の2人は、階段を上がり、自分の部屋へと入って行った。
「先輩、どうぞ。ここが私の部屋です。」
「おじゃましまー…、って、うわー!ひ、広―っ!」
「さっすが、お嬢様の部屋やねー。」
「は、恥ずかしいからあんまりキョロキョロ見ないで下さい。」
「あ、ご、ゴメン。」
と、そこへ、飛鳥の部屋のドアをノックする音が。
「お嬢様、お紅茶とお菓子などをお持ち致しましたが。」
「あ、はーい、どうぞー。」
「失礼します。」
そう言って翠は、部屋に入って来て、丸いテーブルの上に、紅茶セットとカップなどを並べていった。そして、飛鳥にこう言った。
「お嬢様、千春様の晩ご飯などは、どうされますか?」
「そうやね、聞いてみるわ。ねぇ、先輩?」
「ん?」
「晩ご飯、食べてくでしょ?」
「えぇ?そこまでしてもらっていいの?」
「いいですって、翠さんのご飯、美味しいんやから!」
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えます。」
「かしこまりました。」
そして飛鳥は、勉強机の上に置いてあるパソコンの電源を付け、メディアプレイヤーを開いて、千春にこう言った。
「先輩?」
「んー?」
「メイデイの歌、聴きますか?」
「あ、うん、ぜひとも聴いてみたいっ!」
「じゃ、流しますね?」
そう言うと飛鳥は、いつもの再生リストをクリックすると、「Let’s go party party allnight oh oh~♪」と、軽快なアップテンポのナンバーからメイデイの音楽が流れ始めた。
そして、「恋愛ing」が流れると、千春が一言。
「あ、この歌っ!」
「え?どうかしました?」
「これがあの時、神戸で歌ってくれた原曲?」
「あ、は、はい、そうです。」
「へぇ~、明るくていい感じの歌だねぇー…。」
「でしょう?」
「ね、ねぇ、先輩?」
「なに?」
「あ、あの、お願いがあるんです。」
「何かな?」
「あ、あの、そ、その、も、もう一度き、キス、してもらえませんかっ?!!」
「は?」
「そやから、キスです、キスっ!」
「キス…、ねぇ。」
「はい。」
「わ、私、初めて好きになった人を自分の部屋に呼んだ時は、メイデイの音楽をバックに、キスとかエッチなこと、してもらいたい、って、ずっと決めてたんです。」
「そ、そうなの?」
「はい。」
「だからその夢が今、まさに実現しようとしてるんです。」
「で、でも、下に翠さん、いるんじゃ…。」
「大丈夫です、翠さんもこのこと、知ってるみたいですし、邪魔しに来たりはしませんから。」
「ほ、ホント?ま、まぁ、飛鳥ちゃんがいいならいいけど…。」
「ほ、ホンマですか?わーい。じゃあちょっと待ってください?」
「え?あ、う、うん。」
と言うと飛鳥は、メイデイの、ピアノバラードの落ち着いたラブソングばかりを編集した、再生リストに切り替えた。
「ちょ、ちょっと、そんなムード出さなくても…。」
「や、だって、キスしたりエッチなことする時は、ムードが一番大切や、って、まこちゃんに教わりましたから。」
「そうなんや。」
「先輩?あ、ベッドへ…。」
「ん?あ、う、うん。」
「お、お願いします…。」
「う、うん。」
部屋の中に、メイデイのピアノバラードが流れる中、2人は、飛鳥のベッドの上で抱き合った。
そして、千春は、目をつぶっている飛鳥の唇に、神戸でした時と同じように、そっと口付けた。
その間約5~6分。
「ん…、ん…。」
と、2人のキスは続き、飛鳥はその間、勇気を出して、千春の手を取り、
自分の右胸にそっと手を添えた。
すると、その行為に驚いたのか、千春が、飛鳥の唇から自分の唇を離そうとすると、
飛鳥は無理矢理に千春の後頭部を抑え、キスを続けさせ、
そして、千春の後頭部を抑えてる手とは反対の手で、無理矢理に自分の胸を、千春に揉ませた。
そして、キスをしながら飛鳥の胸を揉むこと約15分。
千春も開き直ったのか、自ら、初めて触った女の子の胸を自分から揉み出したので、
飛鳥は、自分の手で押さえていた千春の手をそっと離した。
千春は、初めて触る女の子の胸の柔らかさに感動しながら、飛鳥の胸を揉み続けていた。
すると飛鳥も気持ち良くなり始めたのか、小さな声で、「あん、あん。」と、可愛く喘ぎ出した。
それは、普段一人で自分の胸を触る時よりも、全然気持ち良かった。
そして、20分ほど続いたキスに、飛鳥の方から唇を離し、「ふぅ…。」と、長いため息を付いた。
すると千春も、飛鳥の胸から手を離し、「ふぅ…。」とため息を付いた。
「せ、先輩?」
「ん、ん?」
「すっごく気持ち良かったです。」
「僕も、だよ。」
「夢が一つ、叶いました。」
「ってかさ、飛鳥ちゃんの胸。」
「あっ!」
千春から胸の話しをされると、飛鳥は、カーッと、顔が真っ赤になった。
「いきなりあんなことして来るからビックリしたやんか?」
「ご、ごめんなさい…。イヤ、でしたか?」
「イヤとかじゃないけど、むしろ嬉しかったよ。女の子のおっぱいなんて初めて触ったからね。」
「ど、どうでした?私のおっぱい。」
「何て言ったらいいのかな?僕も初めて触ったから良く分かんないけど、すんごく気持ち良かった。揉み心地も最高だった。」
「本当に?」
「当たり前じゃないかっ!!」
「先輩に、私の処女、本当に捧げたいんですけど、今日は、これが、今の私の精一杯です。」
「うん、無理しなくていいよ。」
「あれ?」
「どうしたの?」
「先輩の制服のズボンに何だか膨らみが…。」
そう飛鳥に言われ、千春は自分のズボンを見下ろすと、自身の男性器が激しく勃起していた。
それはそうだ、生まれて初めて、女の子の胸を長い時間揉んで居たのだから。
男性としては、当然の反応だ。しかも、千春はまだ16才の高校生だから、余計だ。
「そ、それって、先輩の、その…。」
「こ、これは、違うんだっ!や、違くないけど…。その、初めておっぱい触ったものだから、興奮して反応してしまって…。」
「ふぅ~ん…、やっぱ先輩も男の子なんですねー。」
「も、もうっ!」
と、飛鳥に言われ、千春の顔が真っ赤になり、照れていた。
「今って何時だろう?」
と、飛鳥は自分のスマホの時計を見る。
「うわっ、もう8時回ってますよ?」
「えー?!もうそんな時間?!」
「はい。」
と、そこへ、千春のスマホにどこからか電話の着信音が鳴った。
「は、はい、もしもし?」
「千春っ!あんた今ドコおんねん?」
「あ、お、オカン。」
「もう8時やで?晩ご飯とか作って待ってんのにやなー…。何時に戻るんや?」
「10時までには帰るから…。分かった。それとな、何か、あんた宛てに、出版社から書類、届いてんで?」
「分かった、って!急ぐから電話切るで?!ほななー。」
「あ、ちょ、千春!」
と、母の話しも無理矢理切って、「はぁ…。」と、ため息を一つ。
「はぁ…。」
「先輩?」
「んー?」
「今の電話って、先輩のお母さまからですか?オカン、って言ってましたけど…。」
「そう。何時に帰って来んねん?って言われた。」
「そりゃもう、8時ですからね。先輩の家って、ドコでしたっけ?」
「えと、
「東三国って、御堂筋線の?」
「うん。」
「ほ、ほな、ここからやったらちょっと時間、かかるんやないですか?」
「ま、まぁ。」
そう言って飛鳥は、少し乱れた自分の制服を整え、千春に向かってこう言った。
「先輩?」
「何?」
「翠さんのご飯は、また今度にしましょう。これから何度でも来れますから。」
「そやね。」
「私、停留所まで送っていきますから。」
「分かったよ、今日は、サンドウィッチとかいろいろ、ホント、ありがとね。」
「いえ、どう致しまして。じゃあ、行きましょうか。」
「うん。」
そう飛鳥に言われ、2人は、飛鳥の部屋を出て、玄関まで行き、飛鳥は、翠を呼んだ。
「翠さん、せっかく先輩の晩ご飯作ってくれてたのにごめんね、先輩、帰らなくちゃならないの。」
「かしかまりました。」
と、そんなやり取りをしていると、玄関のドアが開き、「ただ今戻りましたー。」と、
エリカが帰って来た。
「これは、エリカお嬢様。お帰りなさいませ。」
「ただいま、翠さん。」
「あ、飛鳥ちゃんと高梨君。お2人揃ってどこか行くの?」
「や、やぁ、青島さん。や、今から家に戻るから、停留所までおくってもらうところだったんだよ。」
「そっかー。2人とも気を付けてね。」
「ありがとう。」
「じゃあ先輩、行きましょう。」
「あ、う、うん。あ、翠さん、紅茶とお菓子、美味しかったです、ありがとうございました。」
「いえいえ、またいつでもお越しくださいね。」
「ありがとう。」
「じゃあ翠さん、エリカさん、私、ちょっと先輩を停留所まで見送って来ますね。」
「かしこまりました、お気を付けて。」
「はーい。」
「飛鳥ちゃん!」
「はい?何ですか?エリカさん。」
「またあとで、ね。」
と、エリカは、飛鳥に向かってウィンクをした。
「あ、は、はい。じゃあ、先輩、行きましょう。」
「うん。あ、青島さん、また学校で。」
「はーい。じゃあねー。」
そう言って2人は悠生家から出て行った。
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