第2章~真琴の居ない日々~
第21話:飛鳥の従姉妹。
真琴が芸能の仕事で東京に旅立ってから数日が過ぎたとある日曜の午前。
悠生家の玄関のドアが開き、元気な声で、
「こんちはー!」
と言う挨拶がしたので、翠が出迎えるとそこには、少しの荷物が入ったバッグを持った高校生くらいの女の子が笑顔で立っており、翠に挨拶をした。
「やほ翠さん。お久しぶり。」
「これは
「うん。あ、ねぇ、飛鳥は?部屋に居る?」
「今日は日曜日でございますので、お嬢様はお友だちとお出掛けになられました。」
「友だちって、まこ?それとも響香?」
「いえ、真琴様たちとは違う別の方、と聞いておりますが。」
「そっか。ってか、おじ様、居る?」
「だんな様は今は東京支店のほうに長期出張中でございます。」
「じゃあ、直兄は?」
「ぼっちゃまも本日は彼女様とデートで外出中でございます。」
「なぁんだ、誰も居ないの?せっかく来たのに。」
「申し訳ございません。」
「ね、入ってもいい?」
「もちろんでございます。」
と言う、そんな会話を玄関先で2人がしていると、1階のお手洗いに行っていたエリカが、
パジャマの上に薄手のカーディガンを羽織った姿のままで、口にてを添え、
「ふわぁ~」と、大きなあくびをしながら歩いて来た姿に、真生が気付き、翠に質問した。
「ん?ね、翠さん。」
「はい、なんでしょうか?」
「あの子は?」
「エリカお嬢様でございます。」
「エリカ、さん?お嬢様?」
「この家にあんな子、居なかったよね?」
「えぇ。」
「ねぇ!そこのパジャマ姿のJCくらいの背の小っちゃい子!!」
と、真生は、エリカに向かって、エリカが最も気にし、敏感に反応するワードに気が付き、
「だ、誰がJCだ、コラーっ!!」
と、声の方に向かってお決まりのセリフで怒鳴って、玄関の方を向くと、真生が驚いた。
「あ、す、すいません、つい、あまりにちっちゃかったもので…。てか、あなた、どちら様?」
と、真生。
「そ、そうゆうあなたは?」と、エリカもちょいキレ気味で質問返しをした。
「あぁ、えと、挨拶が遅れたわね。ごめんなさい。私、ここ、悠生家の雅輝おじ様の姪っ子で、
飛鳥の従姉妹で同学年の、
「あら、飛鳥ちゃんの従姉妹さんでしたか、これは失礼しました。
私、少し前からこちらで住まわせてもらい、飛鳥ちゃんと同じ鈴ヶ丘に通わせてもらってる、青島エリカと申します。どうぞよろしく。」
と、エリカがお辞儀をし、真生と会話をしていると、そこへ、2階の廊下から、男性の声で、
「おーい、エリカ~?」
と言う、声がしたので、真生は、その声の方に振り向き、翠に質問した。
「ま、また知らない人が出て来た。ね、ねぇ、翠さん、あの男性は?」
「あぁ、あちらの方は、エリカお嬢様の恋人の方で、エリカお嬢様と同じくこの家で生活してる、藤坂歩様でございます。」
「あ、エリカ、そんなトコロで何してるんだい?おや?翠さん、そちらの方は?」
と、藤坂が、翠に質問しながら階段を下り、玄関までやって来た。
「キミは?」
「あ、えと、飛鳥の従姉妹で同学年の、悠生真生と言います。」
「藤坂、歩さん?です、か?」
「え?あ、あぁ。初めまして。藤坂歩と言います。今、こちらでエリカと一緒に生活させて頂いてるんだ。と言っても今は仕事の関係で、東京に居るんだけど、今日はたまたま用事があって、この家に戻って来てた、ってわけ。飛鳥ちゃんの従姉妹さんなんだ。よろしくね。」
「よ、よろしくお願いします。」
と、一通り挨拶が終わったところで、翠が一言。
「ささ、玄関で立ち話もなんですから、奥の応接間へどうぞ。」
「あ、私、パジャマと羽織のままですいません。さっきまで寝てたので…。」
「い、いえ、おかまいなく。」
そう言って翠と子供たち3人は、応接間へと向かった。
「皆様、少しお待ちくださいませ。のちほど、お紅茶とお菓子などお持ちいたしますので。」
「ありがとー、翠さん。」と、真生。
「…で。」
と、真生が、バッグを床に置き、2人にいろいろ質問をした。
「ねぇ、えと、エリカ、さん、でしたっけ?」
「あ、はい。」
「あなた、年はいくつなの?」
「私ですか?私は、16才の高校2年生です。」
「そう言えばさっき、"青島エリカ"です、って名乗ってたわよね?」
「はい。それがどうかしましたか?」
「や、日本で青島って言うたら、と、それと、おじ様と繋がりとかあるんだったらひょっとしてあの、青島貿易の関係の方かなぁ?って思って。」
「良くご存知ですね。飛鳥ちゃんから何か聞いてました?」
「い、いえ、何にも。飛鳥、普段は全然メールとかLINE、よこさないもので。」
「そうなんだ、えぇ、確かにウチの実家は青島貿易で、お父様がそこの社長をしています。」
「ほ、ほんまやったんですか。す、すごーい…。そんな大企業のご令嬢様がどうして、飛鳥なんかと知り合い、ってか友だちなんですか?で、この家に住んでて、鈴ヶ丘に通ってるんですか?あ、飛鳥と仲が良いってことは、真琴や響香とも仲良いいんですか?」
「えぇ、そうなりますわね。」
「で、飛鳥と知り合ったきっかけとかって、教えてもらえます?」
「んー…、何て言ったらいいかなぁ?どうしいましょう、藤坂さん。」
「ありのままに話したらいいんじゃないか?」
「じゃ、じゃあ、少しながーい話しになりますが、よろしいでしょうか?」
「え、あ、う、うん、いいわよ?聞こうじゃない。」
と言うと、エリカは、真生に、どうやって飛鳥たちと出会い、そして、何故今ここで生活してるのか、などなど、包み隠さず話しをした。
ただ一つ、藤坂が芸能人だ、と言う事だけは隠して。
そして、長いエリカの話しが終わると、それを聞いていた真生は、
「はぁ~…、世の中って分からないものねー…。」
と、かなり驚いていた。
そして、エリカの、さっきから、“藤坂さん”と言う言葉に薄々何か感付いていた真生は、藤坂の顔をジーっと見つめていて、それに気付いた藤坂が、一言。
「ん?どうしたんだい?真生ちゃん。」
「えと、間違ってたら申し訳ないんですが、藤坂さん、って、あの、芸能人の藤坂裕輔さん、ですか?」
「困ったな、さすが、良く見てるね。ご名答、だよ。」
「えぇ~~~~~???!!!」
「ほ、ホンマにあの、藤坂裕輔さんなんですかっ?!」
「あぁ、そうだ。」
「じゃ、じゃあ、さっき名乗ってくれた、歩、って名前は?!」
「あぁ、あれは、本名だよ。僕は、芸能活動、芸名でやってるからね。」
「はぁ~…。やっぱ、すんごいですねぇ。。。」
「何が?」と、エリカ。
「日本有数の大企業のご令嬢には、それに見合った恋人がちゃんと居るんんだなー、って。」
「そうかな?私たちは私たちで、普通に付き合ってるだけですけど。」
「そうゆう真生ちゃんは?彼氏、居るんでしょ?」と、藤坂。
「えぇまぁ、一応、私も鈴ヶ丘通ってますし。本家の飛鳥お嬢様と違って、ウチは分家ですので、おじ様ほど家の親は厳しく無いので、一応居ますが…。」
「え?真生ちゃんも鈴ヶ丘通ってるの?普段、全然見かけないけど。」
「え?あー、はい。私は天王寺校の方じゃなくて、
「み、三國高等学校?」
「えぇ。」
「鈴ヶ丘って、私たちが通ってる天王寺の学校があるだけじゃないの?」
「そうですよ?鈴ヶ丘学院は、大阪市内各所に、保育園・幼稚園が各一つずつと、小学校が二つ、そして、中学校が二つ、高校が三つ、IT関連に特化した専門学校と、医療・福祉関連に特化した専門学校が一つずつ、そして、大学が市内と府内各所に五つ、大学院が市内に二つ、と、全て共学の様々な学校がある、総合学園なんですよ?」
「すごーい、知らなかった。そんなにあったんだ、鈴ヶ丘って。じゃあ、大阪では結構有名な学校なんだ?そんなにいっぱいいろいろあるなら。」
「そうかも、ですね。」
と、そこへ、翠が、三人分の紅茶とお菓子などを持って来て、また食堂の方へと戻って行った。
「藤坂さんは、東京でお仕事って、ひょっとして、浩兄の支店で働いてるんですか?まさか、違いますよね。芸能人だもの。」
「まぁ、近いっちゃあ、近い、かな。」
「は?」
「僕ね、今はね、飛鳥ちゃんのお父様と、エリカのお父様の会社が共同で出資して新たに設立された芸能事務所に移籍して、そこで今、テレビのCMの撮影と、映画の撮影の仕事で、東京に行ってるんだよ。もちろん、真琴ちゃんも、僕と同じく、新しい事務所に移籍してね。」
「は?まこ、読モ辞めたんですか?」
「んー…、辞めたんじゃなくて、本当に芸能人になった、って感じかな。」
「そ、そうなんだ。私の知らないところでそんなことが…。ってか、おじ様凄過ぎや。」
「ん?何が、だい?」
「いや、青島貿易さんと共同出資で芸能事務所を作る、とか。」
「まぁー、その話しを最初に聞いた時は、僕も同席してたから、ホントにビックリしたよ。
あ、そうそう。」
「はい?」
「これは、エリカももちろん、だけど、真生ちゃんにも聞いておいてもらいたいんだけど、飛鳥ちゃんだけには、ぜぇ~ったい、内緒にしてくれる、って、約束してくれる?」
「え?あ、はい。」
「うん。」
「真生ちゃんさ、飛鳥ちゃんの従姉妹で、同学年だったらさ、飛鳥ちゃんが大好きな台湾のロックバンド、知ってるよね?」
「あぁ、確か、"メイデイ"、でしたっけ?もちろん知ってますよ?音楽も聴かされてますし。」
「えとね、事務所を設立する時にね、お父様がね、台北にある彼らの事務所まで出向いてね、
日本でもし本格的に活動してくれるなら、我々の事務所に入ってくれないか?って、お父様が直々に、彼らに会いに台北まで行って、メンバーさんたちと、向こうの事務所スタッフの了承を得てね、今、メイデイのメンバーの皆さんも、僕らの事務所に所属してるよ。」
「えーーーーーっ??!!お、おじ様、やり過ぎや…。それって、飛鳥が彼らのこと、好きだから、ですよね?きっと。」
「や、それだけじゃないみたいだよ?彼らの人気や知名度ってさ、世界中でも凄いらしいじゃん?」
「そうみたいですね、って、私は飛鳥から聞いてるだけですが…。」
「だからね、日本人にももっと彼らのことを広めたい、と本気で思ったらしいよ?」
「そ、そうなんだ…。」
「それでね、今作ってる映画にもね、ボーカルの阿信さんやメンバーさんも出演することが決まってるし、音楽全般をメイデイさんにお願いしてるみたいなんだよね。」
「はぁ~…。」
「いいかい?このことだけはぜぇったいに飛鳥ちゃんには内緒だよ?分かったかい?」
「はぁ…。」
「うん。」
「な、なんか、数ヶ月この家に遊びに来ないだけで、いろんなことがあったんですねぇ…。」
「そうだろう?僕らだって驚いてるんだから。ただ普通にエリカと2人で大阪に旅行で遊びに来て、エリカの状態が良くなったら2人で掛川に戻る予定だったもんだしね。それが今、こうしてここで、
飛鳥ちゃんの家で、エリカと一緒に生活してる、だなんて、静岡を出て来た時は、これっぽっちも思わなかったからね。ね、エリカ?」
「そうですね、私も、高熱出さなかったかったら多分、今、ココに居ないでしょうし、飛鳥ちゃんたちとも、”兄妹設定”なままでお別れして、静岡に戻って、普通に元の学校で、静岡の田舎で生活してたと思います。ホント、飛鳥ちゃんやおじ様、お父様や皆さんに感謝の気持ちで一杯ですわ。」
と、3人が応接間で会話をしていると、玄関のドアが開き、「ただいまー!」と、聞きなれた声がし、翠が出迎えると、飛鳥が帰って来ていた。
で、応接間では…。
「あ、飛鳥ちゃん、帰って来たみたいだね、いいかい?2人とも。さっきのメイデイの話しだけはぜぇったいに内緒だよ?それ以外は別に話ししてもいいけど。」
「了解です!藤坂さん。」
「わかったわ。」
そして、玄関では。
「あれ?ねぇ、翠さん、この靴、誰か来てるの?」
「それは、真生お嬢様のお靴でございます。それと今、用事で歩様が東京から戻られてます。」
「藤坂さん、帰ってるんだ!久々に会いたいなー。ってか、真生来てるん?何しに来たん?」
「さぁ。」
などと言う会話が応接間に聞こえ、真生が一言。
「何しに、て、飛鳥のにゃろ~…。」
「まぁまぁ。」と、抑えるエリカ。
「で、みんなは応接間に居るのね?」
「はい。」
「じゃあ、私も行こうっと。」
「みんな、ただいまー。」
「おっす!、あっすか!」
「あ、ま、真生…、ひ、久しぶり。」
「なんやねん、高校上がってから初めてこの家に遊びに来たのにやで?おじ様は東京、あんたは誰かと出掛けてる。直兄もデート。どうなっとんねん、この家は。
んでや、更に驚いたんはこのお2人や。まぁ、さっきな、そこのエリカさんから、今までの経緯は全て聞かせてもろたけどな?」
「そ、そうなん?」たじたじする飛鳥。
「あら?飛鳥ちゃん、どうなさったんですか?」
「い、いえ、何にも。」
「あ、こいつね、昔から私のこと、避けるんです、何故か。」
「はぁ。」
「同学年の従姉妹なんて、私らだけやのに、私、もっとこの子と仲良うなりたい思てんのに、この子、昔からあんまり私と会話してくれないんです。」
「そう言えば飛鳥ちゃん?」
「なんでしょう?エリカさん?」
「今日は誰と遊びに行ってたの?」
「えと…、クラスメイトの女の子と、阿倍野で少しだけお茶してました。」
「本当?」
「え、は、はい。」
「嘘でしょう?」
「は?」
「鷹梨君と、でしょう?」
「は?ななな、何を突然。」
「飛鳥ちゃんの嘘ぐらい、最近は見抜けるようになったわ。」
「そ、そんなぁ~…。そんなスキル身に付けなくていいですよぉ~。」
「ねね、エリカさん?」
「なぁに?真生ちゃん。」
「その、"鷹梨君"って?」
「な、ま、真生にはかんけー無いやんかっ!ってか、藤坂さん、帰ってたんですね!」
「やぁ、元気そうで何よりだよ。」
「どうですか、撮影のお仕事は。」
「まぁ、まだ始まったばかり、って感じかな。」
「ってゆーか、会話逸らすなっ!飛鳥っ!!」
「う、うるさいなー!真生は少し黙っててよっ!」
「まぁまぁ、お2人とも!冷静になって。」
「どうやらお2人には少々複雑な事情があるみたいだね。」
「ねぇ、真生ちゃん?」
「はい、なんでしょう?エリカさん。」
「悠生家には、真生ちゃんのご家族以外にもご親戚の方っていらっしゃるの?」
「え?あぁ、そりゃー居ますよ?おじ様とお父様の世代には兄妹が多いですから。」
「へぇ~、おじ様たちって何人兄妹なの?」
「んと、父方…、いわゆる飛鳥の方、悠生家の方だけで、
「じゃあ真生ちゃんの家も帝塚山に?」
「
「でも、私らの世代で、同世代の従姉妹って、私と飛鳥の2人だけで、あとはみな、年が離れてたりするので、私はこの子ともっと仲良うなりたい思てますのにこの子、昔から私のこと避けるんです。なぁ、飛鳥?私、昔、あんたに何か悪いことでもしたんか?」
「わ、分からん。よぉ覚えとらんねん。」
「覚えとらんてあんた…。」
「そうだ。」
「は?」
「ねぇ、飛鳥ちゃん・真生ちゃん。」
「はい?なんでしょう?エリカさん。」
「今日を機会に、お2人とも仲良しになられてはどうでしょう?」
「は?いきなり何を…。」
「私には、うちの父には兄妹なんて居ませんし、一人っ子だったようなので、私の父方の親戚で、私の世代には、私以外子供は居ませんし、ましてや、私も一人っ子なので、飛鳥ちゃんのようなお兄様方も居ないです。だから、お2人みたいな従姉妹で、同学年で、女の子同士って、すごっく羨ましいんです。たとえそれが、普段言い合いばかりしてる間柄であっても。」
「エリカさん…。」
「だからね、真生ちゃん・飛鳥ちゃん、お2人とももう高校生なんだし、この辺で、昔何があったかは知りませんが、もう一度最初から仲良くなられてはどうでしょうか?」
と、そこへ、家のインターフォンが鳴ったので、翠が応対すると、響香が、
「こんにちはー、飛鳥、居ますか?」と、インターフォン越しに話しかけて来たので、
「少々お待ちくださいませ。」と、翠が言い、飛鳥たちの居る応接間に行き、飛鳥に、響香が来たが、どうすればいいか尋ねると、「あ、入れてあげて?」と言う返事が来たので、「かしこまりました。」と言って、玄関に戻り、入り口のドアを開け、響香を招き入れ、応接間に案内した。
そして、翠に案内されながら、応接間に入った響香は、部屋の雰囲気に驚いた。
「な、なな、なんや?このどんよりとした重たい雰囲気は?」
「やほー!響香っ!おひさしー!」
「あ、真生やないかっ!久しぶりやなー。その後、元気にやっとったんか?」
「あぁ、私は元気やで。」
「なんやて?あんたも鈴ヶ丘行ったんやってなー?」
「うん。」
「しかも、三國高校の方やて?」
「そや?」
「あっち、天王寺校より偏差値高いんやったんちゃうん?」
「まぁなー。」
「あんた、そんなに頭良かったんやな。」
「まぁ、な。」
「で、な、なんなん?この重たい雰囲気は?ってか飛鳥、どないしたんや?元気無いやんか?」
「なんでもないっ!」
と言い、飛鳥はバタバタと走って、階段をかけ上がり、自分の部屋のドアを勢い良く開け、バタンっ!と、勢い良く閉めて、部屋にこもってしまった。
「な、なんやねん、あの子。ってか、あっ!藤坂さん!」
「やぁ、響香ちゃん。難波でのカラオケ以来だね、お久しぶり。」
「キャー!大好きな芸能人から名前まで覚えてもらってたー!あ、す、すいません、エリカさんおるのにはしゃいでしまって。」
「いえいえ、だいじょぶです。」
「で、飛鳥、どないしたんですか?」
「ってか真生、あんたまた飛鳥に要らんこと言うたんちゃうやろな?」
「わ、私は別に何も…。あの子が私を避けてるだけや。」
「あぁ、いつものやつか。」
「そう。」
「何であんたらって昔っからそんなに仲悪いんやったっけ?何かきっかけがあったんちゃうんか?そうちゃうかったら、あの子、あんなにあんたのことこんなに嫌がれへんやろ?」
「あ、響香さん。」
「なんでしょう、エリカさん。」
「今、まさにそのことで、お2人の間柄を取り持とうとしてた所へ、響香さんが来た、って言う…。」
「そ、そやったんや。ウチ、タイミング悪かったかんかな。」
「まぁ、少しだけ。」
「私は別にあの子のこと、キライでも何とも思てへんで?あとは、あの子が私にどう接して来るか、次第やからな。」
「そうやなー。あの子、普段はおっとりした普通のお嬢様やねんけど、いざ、こうゆう時になったら、周りがどんなけ何を言うても説得しても聞かへんむちゃ頑固なトコ、あるからなー。」
「どうしたらいいでしょう?」と、エリカ。
「んー。」
「私は、先ほど真生ちゃんと初めてお会いしたばかりですので、私じゃ説得力無いですし、響香さんだったら、小1の頃から飛鳥ちゃんとの長い付き合いがあるので、真生ちゃんとのお付き合いも長いんでしょう?」
「ま、まぁ、それなりに、こいつとも長いですが。」
「だったら、響香さん、真生ちゃん連れて、飛鳥ちゃんの部屋で、3人で話しして来て下さる?」
「は?」
「だって、私みたいなよそ者が関わる問題じゃございませんもの。」
「え、エリカさんがそう言うんでしたら…。真生、おいで。飛鳥の部屋、行くで。」
「あ、う、うん。ほな、エリカさん、藤坂さん、また後ほど。」
「はーい。」
そして、応接間に残されたエリカと藤坂の2人も少し無言だったが、エリカから話しを切り上げた。
「藤坂さん?」
「何?」
「さっき、真生ちゃんが来た時、2階から私のこと、呼んでませんでしたっけ?何か用事があったんじゃないんですか?」
「あ、そう言えば…。んー、なんだっけ?忘れちゃったよ。」
「な、なんですの?それっ!」
そして響香と真生の2人は、階段を上がって飛鳥の部屋のドアをドンドンと叩いていた。
「おーい、飛鳥ぁ~?おるんやろー?ウチや、響香や。なぁ、開けてぇなー。」
…、何度響香が呼んでも返事が無い。ドアノブを開けようとしたが、鍵がかけられている。
「アカンわ。あいつ、鍵かけてるわ。」
「はぁ…。私、今日は帰るわ。」
「そんなんでえぇんか?あんたら、従姉妹同士やろ?身内同士でそんなずっと揉めたまんまで大人になってもえぇんか?この家みたいな名家、他に無いんやで?さっきもエリカさんに言われたんやろ?”私には兄妹も親戚も居ないから、2人が羨ましい”、って。」
「うるさいなー、響香。」
と、ドアの向こうで、響香が真生に怒鳴ってる声を、飛鳥はドアの壁越しに聞いていた。
「もう、響香もみんな、私のこと放っといてくれるかっ?!!飛鳥っ!!あすかっ!!ってば!!このドア開けぇや!!この弱虫お嬢様っ!!あんた、そんな腰抜けやったんかっ!!何がそんなに私のこと気に食わんねんっ!!言いたいことあるんやったら自分の口からハッキリ言えー!!このバカ飛鳥っ!!はぁはぁ…。」
と、真生は、飛鳥の部屋のドアを叩きながら、大声で、自分の言いたいことを言うだけ言って、廊下の床にへたれついた。
「そんなに私が嫌いか…。」
「真生…。」
「響香…助けて…。私、あの子と仲良うなりたいねん。」
「分かった。ウチに任せ。」
と言うと響香は、「すぅ~!」と、大きく息を吸い、ドア越しに飛鳥に向かって大声でこう言った。
「飛鳥っ!!あんた、どうせこのドアの壁越しに今までの話し全部聞いてたんやろ?
ウチ、それくらいのことは全部お見通しやで?!
あんたのこと、あんたの家族以外で、あんたのこと誰より一番理解してんの、何と言っても私やからなっ!!それだけは自負出来るでっ!!
せやからな、これ以上何言うても出て来ぇへんねんやったら、いくら小1からの付き合いとは言え、あんたとの親友とか幼馴染の縁、金輪際切らせてもらうでっ?!
世間一般的に言う、絶交やっ!!通学の時も、停留所で会っても、真琴やエリカさんだけには会話するけど、あんたとは今後一切話しもせぇへん。相談も何も乗ったらへん!!一切見放すでっ!!それでもえぇんか??!!
5回数えるまでにこのドア開けて、あんた出て来ぇへんかったら、ウチはもうこのまま自分の家帰るけどえぇんか?!ほな数えるでー。
ごーぉ…、よぉーん…、さぁーん…、にぃーい…、飛鳥ー、これで最後やでー。どうするんやー。」
と、そこへ、ドアの鍵がそっと開く音がした。
そして、ゆっくりとドアが開き、飛鳥が恐る恐る部屋から出て来た。
部屋から出て来た飛鳥の瞳には、大粒の涙がボロボロこぼれていた。
それを見た響香が驚いて、こう言った。
「ちょ、あんた、部屋の中でそんな泣いてたんかいなっ!!」
「響香ちゃん…。私、私…。もうアカンのや…。」
「何がや?何がアカンねん。言うてみぃ。先輩か?」
「ちゃう、そんなんちゃうねん。まこちゃんおらんようなって、ガッコで独りになって、もう10日ほど経つのに、未だに落ち着かんねん。お父様も東京支店に長期出張中でずっとおらんし、藤坂さんも誰もおらん。なぁ響香ちゃん、私、どうしたらえぇのん?」
「私とエリカさんがおるやないか。それやったらアカンのか?」
「だって、だって、響香ちゃんガッコ違うし、エリカさん学年一個上やし、今までずっと、クラスでも部活でもまこちゃんと一緒やったから私、あの子おらんようになってから、さみしゅーてさみしゅーて、毎日がつまらんねん。」
「やっぱあんたのここ最近の一番の悩みはまこやったんか。」
「うん。」
「響香ちゃん、私、別に真生のこと、避けたりとかキライやとかそんなんちゃうねん。」
「ほななんでこの子のこと昔から避けたりすんねん。この子が来たら、常にウチの後ろに隠れとったやないか。」
「何でそうなったか、原因は今はもう忘れた。ホンマに忘れてん。だって、子供の頃の事やもん。」
「そら、なー…。」
と、飛鳥が出て来たところで、エリカと藤坂たちも応接間から飛鳥の部屋の前まで上がって来た。
「飛鳥ちゃん、大丈夫?」
「あ、エリカさん。私、私…。ひく、ひく…。」
飛鳥は大泣きしながら、エリカの小さな身体に抱き付いた。
「藤坂さん?」
「なんだい?響香ちゃん。」
「どうしましょ、この問題。」
「そうだねぇ、今ココに、直輝さんが居てくれたら彼のことだから、きっと一言でビシっと何か言ってくれるんだろうけど、僕じゃあ、ねぇ…。」
「そうですね…直兄なら、そうしてくれるんでしょうけどね…。ってかホンマ、大事な場面でおらんこと多いんやから、あの直兄は。」
と、直輝の噂をしているところへ、玄関のドアが開き、「ただいまー。」と、少し疲れ気味の声で、直輝が家に戻って来た。
「あ、噂をすれば。おーい、直兄~っ!!」
「なんや、響香か、来てたんかいな。ってかどないしたんや?そんな廊下の真ん中で、みんな揃って。ってか、藤坂君、帰ってたんかいな。どうしたんや?映画の撮影は?お?真生もおるやないか。一体全体、そんな廊下で何しとんねん。」
と言いながら、靴を脱ぎ、階段を上がり、みんなのところへ行くと、飛鳥と真生の2人がワンワン泣いていた。
「な、なんや、この2人、どうしたんや。」
「どうしたんや、て、決まってるやないか、直兄。いつものあれや。」
「あぁー…。またか。全くこいつらはホンマ、子供の頃から変わらんな。」
そこで直輝が息を吸い、大きな声で。
「飛鳥っ!真生っ!お前ら、いがみ合うのも大概にせぇっ!!お前ら、いくつやねんっ!!15才やろ?高校生やで?!飛鳥もっ!!一人しかおらん同い年の従姉妹相手に、いつまでビクビク怯えてんねんっ!!えぇかげん大人にならんかいっ!!ったく!!」
と言う、直輝の言葉に、飛鳥は涙を拭った。
そして、真生に向かってこう言った。
「ま、真生?」
「何?飛鳥。」
「多分、私が悪かった思うねん。」
「は?」
「子供の頃からな?」
「うん。」
「あんたが来たら、お父様がな、あんたのことばっかり可愛がるやろ?」
「そうやったか?」
「そや。」
「で、あんたな、私の部屋に入って来てはな、しょっちゅう私のオモチャ持って帰ったりとかしててな。それだけちゃう。ここ、私の家やのにな、私より扱いがええんやもん。ケンカしてもいっつも負けるし、何やっても敵わへん。高校進学する時かて、ホンマは私かて三國高校の方、行きたかった。
でも、まこちゃんが、進学考えてた時、天王寺のがえぇ、言うし、まこちゃんと離れたくなかったし、それに、私の偏差値やったらどう考えても三國入られへんのん知ってたし。せやから、同じ鈴ヶ丘でも、本家の私の方が、偏差値で劣る天王寺で、何で分家のあんたが三國やねん、って、あんたの学力に私、嫉妬してたんやと思うわ。だってな、お父様な、あんたが三國受かった、って、叔父様から聞いてた時な、私が天王寺受かった時よりすんごく喜んでたんやもん。それが気に食わんかってん。」
「はぁ…、そんなことやったんかいな。あんた、ホンマお嬢様やからな。私からしたら、あんたの方が羨ましいんやで?どない言うても私の家は分家やからな。あんたの方が周りからいろんなことしてもらってたの、しょっちゅう羨ましく思てたわ。まぁ、子供の頃に、私が何したから、あんたが私のこと怯えるようになった、とかは、ここで一旦、お互いに水に流そうやないか?まこはおらんけど、みんな見てくれてるし、何より、響香がおる。それでええやろ?な?飛鳥。仲直りしよや。」
「う、うん、分かった。私も、あんたとも仲ようなりたい。」
「それでええ。」
「よぉっし、そこのお嬢様2人っ!!」
「な、なんや?響香?」
「話しはまとまった。2人とも、仲直りの握手しぃ。」
「あ、握手?」
「そや?」
そう響香に言われ、飛鳥と真生の2人は、まだ瞳に涙が残りながらも、笑顔で握手をし、仲直りして、それを廻りで囲んでみていた直輝・エリカ・藤坂の3人は、温かく拍手をした。
「良かったわ、これでお2人は本当に従姉妹になれたのね。あ、そう言えば。」
「ん?どうしたんだい?エリカ。」
「真生さん?」
「は、はい。エリカさん。」
「あなた、この家に来た時、確か中くらいの大きさのバッグ持って来てたけど、あれ、まだ応接間にありますが、あれには何が入ってるのでしょうか?」
「あっ!!す、すっかり忘れてたっ!!」
「な、なぁ、飛鳥?」
「何?」
「しばらくこの家、泊めてくれんか?」
「はぁ?突然何言い出すんよ?」
「私な、オトンと大喧嘩してな、学校のやら自分の荷物まとめて家出して来てんっ!!」
「は?家出?また?ほんま、真生は昔から叔父様と仲、悪いな。」
「あんなおっさん、もう知らんわ。なぁ、泊めてぇなぁ?」
「んー、でも今、お父様東京やしなー。」
「えぇやん、真生の気が済むまで、ウチからガッコ通ったら。僕が叔父様に言うとくから。」
「ほ、ホンマ?ありがとーっ!ホンマ、頼りになるわ、直兄。」
「いやいや、それほどでも。部屋ならいくつか空いてるからな。あとで僕が翠さんに言って準備してもらっておくからな。」
「ありがとう。」
「で、藤坂君はどうしたんだい?映画の撮影は?」
「あぁ、そのことですよね。」
「うん。」
「えっと、お父様が、大阪の本社に大切な書類を忘れた、とかで、その時に、僕も、この家の部屋に、いくつか忘れ物してたの思い出して、大阪本社に書類取りに行った帰りに家に戻って来て、
部屋から出て来た時に、真生ちゃんが来て、で、最初、応接間で談笑してたら響香ちゃんが飛鳥ちゃん宛てに遊びに来て、その後、飛鳥ちゃんが戻って来て、2人の大喧嘩が始まって、直輝さんが戻って来て、ようやく収まった、ってワケ。」
「そうやったんや。そんなん、何も藤坂君使わんでも、本社の幹部に郵便か何かで送ってもろたらえぇ話しやのに。な。で、藤坂君はいつまで大阪におるんや?」
「あぁ、えと、僕自身も、大阪本社の方に芸能事務所の件で少し、用事があったので、じゃあ、僕が戻ります、って言って、それで今朝、東京から戻って来て、今夜の新幹線で東京戻ります。」
と、藤坂が言うと、
「えーーーーっ!!!!もう帰るんですかぁ??!!今朝突然戻って来たのにっ!!!!」
と、エリカが大声で言う。
「せっかく、せっかく久しぶりに会えたのに、デートもしてもらえないんですか?」
「しょうがないじゃないか、エリカ。僕だってしたいさ、エリカとのデート。でも、仕事なんだから。」
「分かってる。分かってるけど…。」
「藤坂君?」
「はい?」
「新幹線は何時や?」
「んー、特に切符は買ってませんので、最悪、最終の、のぞみに乗れたら、品川駅で、浩輝さんが車で駅まで迎えに来てくれるそうで。」
「そか。ほなエリカ。」
「はい?なぁに?お兄様。」
「お前、今日、今から藤坂君が東京戻るまでの間、2人でデートして来い。」
「は?」
「そやから、藤坂君が東京戻ったら、今度いつまた会えるか分からんねんで?!」
「そう、ですね。」
「ってか、今、何時や?うお。もう夕方か。お前ら、何時間ケンカしとったんや、全く…。
藤坂君は、大阪本社からこの家まではどうやって戻って来たんだい?」
「あ、えと、本社で知り合った幹部の方が車に乗せて来てくれました。」
「ま、そらそうやわな。地下鉄とかまだそんなに分からんやろからな。」
「はい。」
「そんなわけやから、僕が、新大阪まで藤坂君乗せていくから、エリカ、お前も一緒に来い。」
「はい?私も、ですか?」
「そや。時間まで大阪でデートしぃ、言うてんや。」
「お兄様…、ありがとう。」
「直輝さん、ありがとう。」
「な、直兄?」
「なんや?飛鳥。」
「わ、私は?私は行ったらアカン?」
「当たり前やろ。何を考えとんのや、お前は。お前はこの家で、響香と真生と3人で遊んどけ。」
「わ、分かった。」
「よし、話しはまとまったな。2人とも、準備出来たら教えてや。僕の車で出掛けるから。」
「ありがとう。」
「はい、お兄様。」
そう言われ、とりあえず、飛鳥と真生の大喧嘩は収まり、真生は疲れたのか、飛鳥の部屋のベッドで、少し横になっていた。
そして、響香は、飛鳥の部屋に入って、飛鳥をなだめていた。
藤坂と直輝は、食堂で、翠の入れてくれた紅茶を飲みながら、デート用に、部屋でオシャレをしているエリカを待ちながら、男同士で話しをしていた。
「で、その後、どうなんや?」
「はい?」
「そやから、あっちでの生活とか。まこの様子とか。」
「あぁ。そのことでしたら、真琴ちゃんも日々の撮影に追いつくので精一杯らしくて、その日の仕事が終わったら、僕は、スタッフやお父様たちと打ち上げに行ったりしてますけど、真琴ちゃんは一人、ホテルの部屋にスッと戻って、ぐったりしてるみたいです。」
「そうか。まこ、元気無いんか?」
「んー…、元気は、あるみたいですけど、今は学校じゃなく、大人たちばかりに囲まれての仕事ですので、それで疲れてるんじゃないかと…。」
「そうか。…、あ、そや。藤坂君、ちょいココで待っててくれるか?」
「あ、は、はい。」
そう言うと直輝は、一人食堂から出て、再び飛鳥の部屋のドアの前にたち、ノックした。
「お~い、飛鳥~?僕やー。あーけーろー。」
「あ、直兄?ちょい待って。」
と、飛鳥がドアを開けた。
すると直輝は、部屋の中に入って来て、さっきの藤坂の話しを、飛鳥・真生・響香の3人に説明した。すると、飛鳥がこう言った。
「なぁあんや、まこちゃんもそんなに疲れてんやったら、私にメールの一つでもよこせばえぇのに。」
「そんな簡単な話しちゃうやろ。」
「で、どうするん?直兄。」
「そやからな、お前ら3人…、って、あれ?エリカは?」
「エリカさんやったら部屋でメイク中や。」
「そっか。飛鳥、ちょい呼んで来い。」
「はぁ?」
「えぇから呼んで来いっ!」
「わぁーかった、って!」
そう言うと飛鳥は、自分の部屋を出て、エリカと藤坂の部屋のドアをノックした。
「エリカさぁ~ん、私ですー。」
「あ、はーい。どうぞー。」
「入りますね。」
「はーい。」
そう言って飛鳥は、エリカの部屋に入り、私の部屋に来るように説明した。
それから、少しして、デートに行く準備が整ったエリカも部屋に来て、4人が揃った。
「えぇか?みんな。最高の笑顔でまこに伝えるんやで?」
「分かったよ、直兄。」
「動画モードにするからな、えぇか?みんな。」
「OKやで、直兄。」
「じゃあ、撮るで?」
と、直輝がスマホのカメラの動画ボタンをタップし、ピントを4人に合わせると、4人は声を揃えて笑顔でこう言った。
「おーい!まこーっ!毎日どうしとんのやー?映画の撮影、しんどいやろうけど頑張りやー!」
と言ったあと、一人一言ずつカメラに向かってそれぞれに話ししていく。
で、4人のコメントが終わったところで、直輝が、カメラの動画モードのボタンをタップし、保存ボックスにデータを入れた。
「今の動画な、藤坂君のスマホに赤外線で送ってな、彼が東京戻ったら、彼からまこに送ってもらうようにするからな。」
「うん、分かった。直兄、ありがとう。」
「いいって、で、エリカは準備出来たんか?」
「はい。」
「ほな、荷物持って一緒に来い。」
「はーい。」
「じゃあ、飛鳥、お前ら、仲良う遊んでるんやで?分かったな?」
と言い、直輝は、飛鳥の部屋のドアを閉めて、廊下を歩いて食堂へ行った。
「お待たせ、藤坂さん。」
「やぁ、エリカ。…、って、え、エリカ?」
「はい?」
「わぁー…、な、なんか、今まで見たこと無いメイクしちゃって、まぁー…。」
「え?な、何ですか?変、ですか?」
「そうじゃなくて、むちゃくちゃ可愛いよ。ね、直輝さんっ!」
「うん。さすが、天下の青島貿易のお嬢様、ってトコやね。」
「そ、そんな…。」
と、2人から褒められ、エリカは照れてうつむいてしまった。
「よぉっし、ほな行くで、2人とも。」
「はーい。」
「はい。」
「じゃあ、翠さん?」
「あ、はい、ぼっちゃま。」
「僕な、今から自分の車で、この2人を新大阪まで送って来るから、帰りは遅くなるし、夕食はえぇから。2階に、飛鳥たち3人が残ってるから、その3人に、何か食事作ってやってくれるか?」
「かしこまりました。」
「ほな翠さん、子供らのこと、頼むな。」
「はい、お気を付けて、行ってらっしゃいませ。」
そう言って直輝たち3人は、彼の車で悠生家を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます