第12話:日曜、自宅にて。

真琴と別れた3人は、飛鳥の家に向かってゆっくり歩きながら、話しをしていた。


「ねぇねぇ、藤坂さんたちは今日は何をしていたんですか?」

「あぁ、僕とエリカは、昨日教えてもらった住吉大社と、翠さんに教えてもらった、

住吉公園に遊びに行って来たノよ。」

「わぁ、デートですね。どうでした?住吉は?」

「うん、素敵な佇まいで、良い雰囲気のところだったよ。」

「そうですか、それは良かったです。」

「特にエリカが住吉公園を気に入ってね。」

「へぇ~、エリカさん。住吉公園、広くてのんびり過ごしやすい公園でしょ?」

「えぇ、とても。あら?」

「ん?どうかしました?」

「それ?本か何か?」

「え?あ、う、うん、ちょっと、神戸のガイドブックを買って来まして。」

「神戸?」

「はい。」

「飛鳥ちゃん、神戸行くの?」

「えぇ、来週の日曜日に。」

「へぇ~…、もしかして、デート、とか?」

「え?あ、は、はい。」

「うわー、飛鳥ちゃん、彼氏さん居たっけ?」

「い、いえ、今はまだ。でも、片想いはしてます。」

「わぁ、青春ね。」

「何言ってるんですか。今はまだ転入前で休んでるけど、エリカさんやて華のJKじゃないですか。」

「まぁそうだけどね。」

「あ、家に着きました。」

「疲れたね、今日は。」

「そうですね、藤坂さん。」


そして飛鳥は、大きな門を開け、中庭を歩き、玄関のドアを開け、「ただいまー。」と、元気に家に入って行くと、翠さんが玄関にやって来た。


「お帰りなさいませ、お嬢様・エリカ様、歩様。」

「うん、ただいま。私、先に自分の部屋に戻るから。」

「はーい、あとでね。」

「あ、エリカ様?」

「あ、はい、なんでしょう?翠さん。」

「静岡のご自宅からのお荷物の一部が届きましたので、お部屋に運んで置いてありますので。」

「わぁ、もう届いたんだ?ありがとうございます!翠さん!」

「いえ。では、わたくしはご夕食の準備がありますので。」

「あ、翠さん!」

「なんでしょう?歩様。」

「今日はお弁当、ありがとうございます。住吉公園で頂きました。とても美味しかったです。」

「それは良かったです。包みはお預かりします。」

「ありがとう。じゃあエリカ、僕たちも部屋に戻ろっか。」

「はーい。」


そう言って、エリカと藤坂も、自分たちの部屋に戻って、部屋に入ると、

5つほどの、大きなダンボールが届いており、箱にはそれぞれ、

"衣類"、"日用品"、"割れ物"、"雑貨類"、"デジタル家電"などと書かれており、

エリカはまず、"衣類"と書かれているダンボールからガムテープをはがしていく。

すると、静岡に住んでいた時に良く着ていた私服や下着などの衣類全てが入っており、それを、エリカたちが住む大きな衣類ダンスに、少しずつ片付けていき、下の方から下着が、出て来ると、「あ。」と、エリカは少し恥ずかしそうに、藤坂にこう言った。


「藤坂さん?」

「あの、今からブラとかショーツ、片付けるので…。」

「え?ん、あ、あぁ。向こう向いてようか?」

「い、いえ、別にいいです。藤坂さんには、ホテル滞在中に既に私の全てが見られてますから。」

「ま、まぁそうだけどね。」


そう言いながらエリカは、

藤坂が見つめる中、自分の下着類を、丁寧にたんすの引き出しに片付けていく。


「ふぅ~…。やっと衣類終わった…。」

「ね、手伝おうか?」

「い、いえ、だいじょぶです。」

「ってか、やっぱお嬢様だね。」

「え?」

「下着だけでもの凄い数にビックリだよ。」

「そ、そうですか?女の子はこんなもんじゃないですか?多分、飛鳥さんや真琴さんも。特に真琴さんはモデルさんですし。」

「そうだよね。」

「さて次は何を片付けようかしら?」


そう言ってエリカは、残り4つのダンボールの前で立って考えていた。


「あ、これ、何が入ってるんだろ?」


と、"割れ物"と書かれたダンボールのガムテープをはがすと、大好きなアニメのDVDやCD、そして、様々なアニメグッズなどが箱の中狭しと、ケースなどが割れないように、パッキンなどでキレイに入れられていた。


「うわー、部屋にあったDVDとか、全部送ってくれたんだー。さっすが、じいだねー。」


藤坂が、そのダンボールの中を覗き込む。


「これ、君の部屋に行った時に棚に並んでたDVDとか全部?」

「そうです。」

「♪ふっふふっふふ~ん♪」と、エリカは嬉しそうに、DVDやCD類を、

ちょっとずつ、本棚に並べていく。


そこに、"コンコン"と、エリカたちの部屋をノックする音が聞こえた。


「エリカさん?私、飛鳥です。」

「はーい、どうぞー。」

「失礼しまーす、って、うわぁ。な、何ですか?このダンボールと荷物の山。」

「あぁ、今日、静岡の実家から届いたモノを今、少しずつ片付けてるんです。」

「そ、そうだったんですねー。手伝いましょうか?」

「そうですね、さっき、DVDとかCDの片付けが終わりましたので…。」

と、エリカは、棚に並べたアニメや声優関連のDVDやCDを飛鳥に見せる。


「うわー、こ、これ全部アニメ関係ですか?」

「はいっ!」


飛鳥は、特にアニメヲタク、と言うわけではなかったので、

このように大量のアニメ系のDVDなどを見るのが初めてで驚いた。


ふと飛鳥が、一際大きなダンボールに目が行って、エリカに質問した。


「エリカさん?」

「なぁに?」

「この、"デジタル家電

"って書いてあるダンボールには何が入ってるの?」

「あぁ…ちょっと開けてみますね。多分、デスクPCと液晶テレビ、そしてレコーダーかと思うんですけど…。」


そう言ってエリカは、デジタル家電と書かれたダンボールのガムテープを剥がすと、

中には、エリカが言ったとおりのモノが入っていた。


「ね?」

「ホントだ。ってか、エリカさんの液晶、私のよりサイズおっきいですね。さっすがお嬢様。」

「あ。」

「どうかしました?」


エリカは、

ダンボールに同梱されていたTV台が組み立てられなかったので、藤坂にヘルプを求めた。


「ね、ねぇ、藤坂さん。」

「なんだい?」

「TV台とか組み立てるの、手伝ってくれません?私、こうゆうの苦手で…。あと、配線とか…。」

「あぁ、うん、いいよ。飛鳥ちゃん?工具セットとかあるかな?」

「あぁ、はい、ありますよ?ちょっと取って来ますね?」


そう言って飛鳥は部屋から一旦出て、1階に下りて、翠から工具セットを借り、部屋に戻って来た。


「じゃあちょっと借りるね?」

「どうぞどうぞ。」


藤坂は、工具セットのケースを開けて、TV台に取り付けるネジのサイズに合ったプラスドライバーを探す。


「えーと、プラスプラス…。」


と、独り言いい、工具ケースの中からドライバーを見つけた。


「あったあった。ちょっと、2人とも、少し手伝ってくれる?」

「はーい。」

「はい。」


そして3人は協力して、エリカのTV台を組み上げた。


「ふぅ。台はこれでOK。次はTVだね。」

「飛鳥ちゃん?」

「はい?」

「この部屋に、TVのコードを繋ぐジャックってあるかな?」

「確かありましたよ?えーと…。」


そう言ってエリカは、テレビのコードを繋ぐジャックを探した。


「あ、あったあった、ここです。」


そう言われると藤坂は、ダンボールに同梱されていたテレビのケーブルを、ジャックに繋ぎ、32インチの液晶テレビの裏側に繋ぎ、ダンボールから、ブルーレイレコーダーを取り出し、

HDMIケーブルなどを出して、手際良く、テレビとレコーダーをセットした。


その様子を見ていた2人は、口々に、


「さすが男の人ですねー。」

「ホントホント、こんな難しい配線、ちゃちゃっとやっちゃうんですから。」

「いやー。僕が得意なだけで、こーゆうの苦手な男だって居るよ?」

「そうなんですねー。」

「よしっ!これでテレビとレコーダーのセッティングは出来たよ?あとは、関西地方のチャンネル設定だね。」

「飛鳥ちゃん?」

「はい?」

「大阪のテレビ局って、どれくらいあるの?」

「んー、結構ありますよ。地上波だけで、NHK総合と、Eテレ、そして、民放が、サンTVとKBSも入れたら、関西キー局は、7チャンネルあります。」

「そっか、じゃあ、TVとレコーダーのチャンネル設定しよっか。エリカ?」

「はい。」

「リモコン、使っていい?」

「うん、いいよ。」


藤坂はそう言うと、液晶の画面を付け、設定メニューから、チャンネル調整をしていき、

TVが終わったらレコーダーも設定して行き、全てのテレビの設定が終わり、

チャンネルが映ると、エリカと飛鳥が、「わー!映った映ったっ!」

と、歓声を上げた。


「さて、次は、パソコンかな?」

「あ、は、はい。いいんですか?」

「あぁ、いいよ。」


そう言って藤坂は、ダンボールからデスクトップPCを出し、部屋に添えつけられた勉強机の上に、PCをセッティングしていく。


そうして藤坂は、パソコンのセッティングも難なくこなし、試しに電源を立ち上げると、ちゃんと、ウィンドウズの画面が映った。

飛鳥の家の中には、超高速WiFiが、家中に飛んでいるので、

飛鳥が、SSIDと、暗号化キーを説明し、藤坂がそれを入力する。


そして、入力したコードを、“常時接続”にしておき、飛鳥の父の会社、

ユーキコーポレーションが運営するポータルサイトをトップ画面に設定しておき、

あとの細かい設定は、エリカ本人に任せた。


テレビ台の組み立てからパソコンの設定まで、その間約2時間。

藤坂は少し疲れたのか、「ふぅ…。」と、息をした。

そして、「ちょっと疲れたよ。ベッドで横になっていいかな?」

「あ、う、うん、ありがとう、藤坂さん。」


藤坂は疲れたのか、ベッドに横になって、少し目をつぶっていた。


と、そこへ、"トントン"と、部屋のドアをノックする音が聞こえる。


「お嬢様方、ご夕食の準備が整いましたが…。」

「あ、はーい!すぐにおりますー。」


飛鳥が言うと、エリカが藤坂を起こした。そして3人揃って食卓へと向かうと、

直輝が笑顔で自分の席に座っていた。


「あら?直兄、今日お父様は?」

「あぁ、親父なら仕事が遅くなるから、って。」

「そう…なんや。」

「翠さん、みんなにご夕食を出してあげて?」

「はい、ぼっちゃま。」

「あれ?直兄はいいん?」

「あぁ、僕はもう食べたから。」

「そうなんや。」


「お嬢様、本日の夕食は、久しぶりにクリームコロッケでございます。」


「うわーい!翠さんのクリームコロッケ!」

「お2人もどうぞ。」


と、食卓に、コシヒカリの白米と味噌汁、そして、クリームコロッケなどなどが出され、

飛鳥たち3人は、談笑しながら、翠の作った晩ご飯をゆっくり味わって食べていた。


「ねぇ、藤坂君?」

「あ、はい。」

「そう言えばさっき、君たちの部屋が何だかにぎやかだったけど。」

「あぁ、エリカの荷物の一部が届いてたんで、テレビやらパソコンやらのセッティングをしていたんです。」

「そうだったんだ。だから飛鳥が工具セットを持ってたんだね。」

「そやで、直兄。」

「で、セッティングは終わったのかい?」

「えぇ、おかげさまで。」

「まぁ、あぁゆうのは女の子は苦手なコが多いからね。」

「そうですね。」


男性2人がそうゆう会話をしている向かい側の席で、飛鳥とエリカも談笑していた。


「ねぇエリカさん?」

「なぁに?」

「さっきのアニメDVDのボックスがいっぱい並んでたけど、エリカさんがおススメの作品とかってあります?」

「え?飛鳥さん、アニメとか見ないんじゃなかったかしら?」

「まぁ。でも、あれだけの数のDVD-BOXを見たら、何か興味出て来ちゃって。」

「そう?じゃああとで部屋で教えてあげます。」

「わぁい。」


そこへ、直輝が割って入って来た。


「エリカはアニメが好きだったのかい?」

「え?あ、は、はい。」

「なぁなぁ、直兄。」

「なんだい?」

「エリカさんのコレクション、凄いんだから!」

「へぇ~…。僕は、アニメとかほとんど見ないからねー。」


そんなこんなで、子供たちだけの夕食が終わり、4人はそれぞれの部屋へ戻って、

エリカは、ダンボールの続きをし、藤坂もそれを手伝った。


飛鳥も、自分の部屋へ戻り、大好きなバンド・"メイデイ"の音楽を聴きながら、学校の課題をしていた。

課題をやり終えた飛鳥は、ひとまずパジャマに着替え、カーディガンを羽織り、エリカたちの部屋へ行った。


「エリカさん、藤坂さん?」

「あ、はい。」

「明日からまた月曜なので、課題も終わったし、私、今日はもう寝ますね?」

「あ、う、うん。さっきは荷物の手伝い、ありがとうね。」

「いえいえ。」

「明日、学校頑張ってね。」

「はーい。ほな、お休みなさーい。」

「はーい、お休みなさい。」

「お休み、飛鳥ちゃん。」

「では~。」


そう言って飛鳥は2人に手を振って、エリカの部屋のドアを閉め、自分の部屋に戻り、学生鞄に入れた、

明日の授業の教科書類などをチェックし直し、忘れ物などがないか確認し、

今日、阿倍野で買って来た神戸のガイドブックも鞄に入れて、部屋の中を見回し、ベッドに潜り込んで、リモコンで部屋のライトを消して、眠りに付いた。

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