第5話:飛鳥の初デート。
佑耶たちと別れた飛鳥と千春の2人は、無言のままモジモジしながら、
そこで、あまりに無言が続いたので、千春が男らしく、自分から話しを振った。
「ねぇ、悠生さん?」
「は、はいっ!!」
「悠生さんは、ホントにボーリングしたい?」
「わ、私、ボーリングなんてやったこと無いから、やり方も分からなくて。」
「そっか、僕も実は、"僕が教えてあげる"やなんて言ったものの、
僕も2~3回しか行った事ないんよ。」
「そうなんですか。じゃあどうします?」
「そうやなー…。」
「あ、映画とかどうですか?」
「映画?」
「はい。ダメ、ですか?」
「いいよ?なんか観たい映画あるん?」
「はい、さっき、響香ちゃん来るまでと藤坂さんたちと別れてから、まこちゃんと2人で買い物してた時、買い物終わったら映画観よう、って言ってたんです。」
「そっか、今って何してるんやろか?」
「あ、マルイのTOHOシネマ行きませんか?」
「そうやね。」
そして2人はマルイにあるTOHOシネマにやって来た。
「あ、あれ!あれ観たいんです。学園モノの恋愛映画。」
「恋愛映画かぁ…。これって実写?」
「そうですが…。先輩、実写ダメな人ですか?」
「ダメじゃないけど、どちらかと言えば苦手かなぁ。僕、実はアニヲタやしな。」
「そうやったんですか。どんなアニメ見るんですか?」
「いろいろ見るよ。もちろん恋愛モノもね。」
「だったら、こっちのはどうですか?
これも学園恋愛モノのヤツで、テレビで放送してたのの劇場版なんですけど。私もテレビ見てましたし。」
「そっか、これなら僕も見てたで。おもろかったわ。」
「じゃあこれにします?」
「そうやね。」
そう言って2人は、自動券売機でそれぞれチケットを買い、
フードコーナーでポップコーンとドリンクと、定番のスナックを買い、時間まで待っている間、少し話しをしていた。
「先輩の趣味って、アニメだったんですね。」
「そうなるかな。」
「そやったら、さっきの藤坂さんの妹さんいたでしょ?」
「あぁ、あの大人しい子な。」
「あの子もアニメ好きらしくて、それでさっきまで、オタロードに居て、藤坂さんとショッピングしてたらしいんです。」
「そうなんや。」
「そやから、先輩、あの子となら話し、合うんやないですか?」
「え?それって?」
「あの子、紹介してあげましょうか?」
「えー、でも、地方の子やろ?そんなん付き合われへんわ。それに、お兄さんがあの藤坂さんやったらな。」
「あ、そういやもうすぐ春の連休やなぁ…。」
「そ、そうですね。」
「悠生さんは、家族で旅行に出掛けたりとかするん?」
「まだ知らないです。」
「そっかー。うちのOBの男の先輩にな、むちゃ旅行好きな先輩がおんねん。会ったことないか?」
「先輩って、晃平先輩ならたまに見たことありますが。」
「そっちじゃなくて、碧樹巧って言う先輩やねんけどな。」
「あぁー、いつもタバコ吸ってる人?」
「そうそう。」
「多分今年も行ける部員集めてどっか旅行行きたがるで。」
「そうなんやー。でも、楽しそう。」
「そっかー?そう思うのも今のうちやで?」
「あの人、酒癖悪いから、酔っ払ったらかなり絡んでくんねん。」
「そうなんですか。」
「そう。しかも、今は男子部員、僕一人しか居ないから、僕にばっかり絡んでくんねん。女子には絡めへんねんけどな。」
「そうなんやー。」
と、そこへ、映画が始まるアナウンスが場内に流れた。
「間もなく5番ルーム映画の上映が始まります。皆さま、順番にチケットを係員にお渡しになり、中へお入りください。」
「あ、始まるね、行こか。」
「はい。」
そう言って2人は5番ルームの劇場へと行列に混じって、指定の席に座った。
「ポップコーン美味しいですね。」
「そうやね。」
「間もなく映画が上映されます。携帯電話などの電源をお切りになり…。」
と、館内アナウンスが流れ、館内の照明が落ち、暗くなり、
本編の前に、次に始まる映画の予告などが流れ、本編が始まった。
…そして。
映画が始まって約2時間半。
上映が終わってから2人はしばらくシートでボーっとしていた。
そして、飛鳥から話しを切り出した。
「まさか、あんなエッチなシーンが出て来るだなんて思いませんでした。」
「はい。仲の良い女友だちが、いつも、彼氏とのエッチな会話ばっかして来るんです。私、まだ処女だから、仲間の会話に入れなくって…。」
「そ、そうなんだ。女の子同士って凄い会話するんだね。」
「男の人は友達とかとエッチな会話とかしないんですか?」
「他の人は知らないけど、僕はしないよ。」
「そうなんですね。」
と、そこへ、係員が2人の元へやって来た。
「申し訳ありませんが、次の上映前の館内清掃に入りますので、そろそろ退出して頂けないでしょうか?」
「あ、す、すいません。」
そう言って2人は劇場からロビーに出て、晴喜が一言。
「あ、ゴメンネ、ちょっとお手洗い、行って来るよ。」
「あ、私も。」
2人はそれぞれ手洗いへ向かって、千春は室内で、鏡に向かって、
「はぁ~…映画にもビックリしたけど、あれって、僕に好意を持ってるんかな?
エッチを経験したいだけなんかな?どうなんやろ?分からんわ…。はぁ~…。」
と、心の中で呟いて、しばらく鏡を見ていた千春は、勢い良くパンっ!と両頬を叩き、気合を入れなおして、ロビーに出て行った。
すると、飛鳥が既にロビーから出て来ていて千春を待っていた
「あ、あのさ、悠生さん?」
「はい?」
「さっきの話しの続きなんだけど。」
「さっきの?」
「そ、その、エッチがどう、とか。」
「あぁ。はい。」
「あれって、どうゆう?」
「いえ、先輩が初体験の相手だったらいいなぁ…って思っただけです。そんなに深い意味は無いです。」
「そっか。ねぇ、このあとさ、僕とえ、エッチ、してみない?」
「えぇ?!い、今から、ですか?」
「う、うん。ダメ、かな?」
「う、うーん。」
「ダメじゃないですけど、でも、いきなりはちょっと怖い、って言うかなんて言うか…。」
「そっか、そうだよね、いきなりは怖いよね。ゴメンね。」
「い、いえ、イヤじゃないです。」
「ホント?」
「はい。私、先輩のこと、ちょっと前から気になってましたから。」
「そ、そうなん?」
「はい。」
「そっか。」
「先輩は、私の体に興味はありますか?」
「もちろんあるよ!」
「そうですよね。男の人ですもんね。」
「じゃ、じゃあ、ホテルかどっかい、行く?」
「んー…、でも、それはまたいつか今度。」
「えー?!そんなん!期待したやんか!」
「ゴメンなさい。私、ホンマに処女やから、男の人のこと、ホント、何も知らないし、怖いし、
いきなりは無理です。それに、ウチの親、特に父親は、凄く厳格な人だから、私が処女捨てた、だなんて知ったら先輩、多分ぶっとばされますよ?」
「ま、マジ?」
「はい。」
「そっか。じゃあしょうがないね。」
「そうゆうわけなんでごめんなさい。」
「いいよいいよ。気にしないで。」
そこで飛鳥はスマホの時計を見た。
「あ、もう7時回ってますね。」
「あ、そ、そうだね。」
「ウチの親、さっきも言ったように、厳しいから、時間にもうるさいから、もう帰らないと。」
「えー。」
「まぁまた部活で会えるじゃないですか。」
「そうやけど…。」
「じゃあ私はココで。初デート、緊張したけど楽しかったです。ありがとうございました!」
「あ、う、うん、じゃあね。」
「またデートして下さいね。」
「あ、う、うん、僕で良ければ。」
「じゃあ、また学校で。」
「気を付けてね。」
「はーい。」
そう言って飛鳥は千春を残して独りで映画館から出て行き、家路に着いた。
そして、独り映画館に取り残された千春は、スマホを取り出し、佑耶にLINE通話をした。
すると、2コールくらいで佑耶がLINEに出た。
「はーい、もしもーし。」
「あ、佑耶?」
「はーい。」
「今ドコにおるん?」
「ラウワンですけど。」
「何してん?」
「響香たちと一緒にスポッチャで遊んでますが。」
「えぇなぁそっちは余裕あって楽しそうで。」
「何かあったんですか?」
「あった、と言えばいろいろあった、かな?」
「ってか電話の後ろ、ボーリングの音とか全然聞こえませんが、静かですね。ドコにおるんですか?まさかラブホとか?」
「そんなんちゃうちゃう。ありえへんやろ。」
「まぁそうですね。」
「なんやねん。」
「あ、すいません、つい。で、ホンマ、ドコにおるんですか?」
「え、映画館。」
「映画館?ドコの?」
「マルイの。」
「あー。ってか何で映画館なんかに居るんですか?飛鳥ちゃんは?」
「さっき独りで帰ったわ。」
「は?」
「だから、もう帰った、って!」
「なんでですか?」
「家の親が厳しい人やから早く帰らなアカンらしくてな。」
「そうなんですか。」
「で、何の映画見たんですか?まさかアニメやないですよね?」
「当たりや。」
「マジっすか。初デートでアニメ映画なんてマジありえないっすよ、先輩。」
「悪かったな。」
「はぁ、今頃ホテルくらい行ってるおもたのになー…。」
「そっちは何して遊んでんや?」
「え?真琴と響香と3人でビリヤードやったり卓球したり。ハーレムで入れ食いぐいぐいですわ。」
「お前彼女おるやんか。」
「まぁそうですけど、彼女と友だちは全く別もんですから。」
「そっか。じゃあ邪魔したら悪いし、僕なんかそっち入っても場を暗くするだけやしな、僕も今日は家帰るわ。」
「あ、ちょちょっ!待ってください!いろいろ話し聞きたいですし!
僕らすぐスポッチャ出て行くから、ビックカメラとラウワンのある千日前通りの交差点まで来て下さいよっ!マクドでも入って先輩の話し聞いてあげますから!」
「そうか?でもまぁいいわ、今日は僕も疲れたし。それに、今日のことも小説のいいネタになったしな。」
「先輩、ネタの為に来たんですか?サイテーですわ、それ。そんなんやったらいつまで経っても彼女出来ませんで?」
「ほっといて。ほなな。」
そう言って千春は一方的にLINEを切って、千春も映画館を出て家に向かった。
「どうせ僕に彼女なんか作られへんねんから…。」
などと、心の中で思いながら一人、御堂筋線のなんば駅から地下鉄に乗って家に帰った。
その頃、ラウンドワンのスポッチャでは、佑耶が、響香と真琴に、先ほどの会話の内容を話していた。
「えー?!ボーリング、してなかったんかいな?」
「うん。そやねんて。映画観ててんて。」
「なんやそれー、おもろないなー。」
「ウチちょっと飛鳥にLINEするわ。」
そう言って真琴は飛鳥にLINE通話した。
が、なかなか出ない。
すると1分ほどして、飛鳥からメールがあった。
「ゴメン、今、ちん電の中やから電話出来へんわ、あとで家帰ったら電話するから。」
そうゆう内容だった。
「飛鳥、今、家に向かってるみたいやわ。ちん電乗ってるんやって。」
「そうなん?はぁー…。あの2人やったら上手くいくおもたのになー…。」
「どうする?今から。」
「今何時やろ?」
「もう8時か。」
「マクドでも食べてから帰ろっか?」
「そうしよそうしよ。」
みんなはそう言って、スポッチャで清算してラウンドワンから出て、
近くのマクドナルドへと入って行って、それぞれにバーガーを注文し、空いてる席に着いて、先ほどの話しの続きをしていた。
「先輩、今日のこと、小説のネタになった、って言ってたわ。」
「ネタ?!」
「なんやそれ。サイテー。」
「そやろ?でもな、先輩の気持ちも分かんねん。僕も男やからな。」
「なんで?」
「そら一方的に先に帰られてな、一人で映画館に取り残されたら、どうすればいいか分からんようなるわ。」
「まぁ、それはウチらも同じやんなー?」
「まぁな。」
と、そこへ、真琴のスマホに飛鳥からLINE通話が入った。
「は、ほひほひ?(あ、もしもし?)はふは?(飛鳥?)」そう言って真琴は口の中に残っていたバーガーをゴクンと飲み込んで、
「うん、ってか、まこちゃん、
「うん、3人でマクドでバーガー食べてながらあんたらの話ししとってん。」
「マクドか、えぇなぁ。私も行けば良かったわ。」
「で?
「
「あんた、先輩一人ほったらかして先に帰ったらしいやん。」
「あぁー…。だって先輩、映画観たあと、エッチせぇへん?って言って来たんやもん。」
「はぁ?なんなんそれ?」
「だって、映画の中に男女がエッチするシーン出て来てんもん。」
「はぁ?どんな映画観たん。」
「今公開中の恋愛モノのアニメ映画。」
「あぁー、それ知ってるわ。結構エロいヤツやろ?あんたよう入れたな。」
「だって内容知らんかってんもん。先輩が、実写よりアニメの方がいい、って言うから、そっちにしただけやもん。」
「まぁ、そうやろうけど…。」
「ご、ゴメン。」
「謝らんでええよ、そら処女の飛鳥がそんなシーン見たらいろいろ気にはなるわな。」
「うん。でな、映画終わってからな、先輩がな、いろいろ話しして来てな、“今からホテル行かへん?”って言って来てん。」
「そうなんや、それで怖くなって逃げ帰った、って言うわけやな?」
「な、なんで分かったん?」
「あんたの考えてることくらい分からんと、あんたの親友なんか務まらんわ。」
「そ、そっか。まぁ、実際、家のことも話したけどな。親が厳しいから早く帰らなアカン、って。」
「まぁな、あんたの
「うん。」
「まぁしゃーないわ。あんたにとっては中途半端な初デートになったけど、いい経験になったやろ?藤坂さんとも知り合えたしな。」
「あ、そ、そうやった。忘れてた。」
「忘れてたんかいっ!」
「まぁえぇわ、今日はゆっくり休み。」
「ありがとう。」
「ウチらもバーガー食べて少し話ししたら帰るさかい。」
「えぇなぁ、おそぉまで遊べて。」
「まぁな。ほなまたメールかLINE通話するわ。」
「分かった、今日はいろいろありがとうな。」
「うん、ほなな。」
そう言って2人は電話を切った。
「飛鳥、先輩から、"今からエッチせぇへん?"って聞かれてんて。」
「は?何それ?」
「そらそうなるやろ?」
「なんでもな、映画でな、男女のエッチシーンが出て来てんて。」
「なるほどなー、それで、先輩の身体が気になったんか、あの子。」
「そやろなー。」
「まぁでも、アニメとは言え、生まれて初めて男女のエッチシーンなんて見てもうたら一緒に居る相手の身体のこと、想像するわな。」
「まぁな。」
「それにしても、さすが、処女と童貞の2人やな。」
「そやな、それっぽい終わり方っちゃあ終わり方やったわ。」
「僕な、家帰ったらもっかい先輩に話し付けるわ。ちゃんとしてください、って。」
「うん、頼むわ。ウチらも飛鳥のこと、なだめて来るから。」
「じゃあ今日はこれで帰ろか。」
「そやな。」
「佑耶、今日はありがとうな。急に呼び出して悪かったな。」
「ええよええよ、久々に2人に会えて楽しかったしな。」
「ほなまたいつでも連絡ちょうだいな。」
「分かった。あ、僕、あっちやから。」
「そやったな。じゃあ、ここで。」
「うん、またなー。」
「またー。」
そう言って3人は別れ、佑耶は地下鉄千日前線のなんば駅方面へ、真琴と飛鳥は御堂筋線のなんば駅方面へと歩いて行った。
真琴と響香の家も、飛鳥と同じ帝塚山にあるので、帰る方向は飛鳥と同じなので、2人は話ししながら帰っていた。
「飛鳥のこと、どうしよか。」
「そやなー、難しい問題やなー。」
「飛鳥のお父さん、ホンマにキツイ人やからなー。」
「先輩と飛鳥、何とかくっつけたいけど、こればっかりは周りがどう言うてえも本人同士が分かり合えんかったらアカンしなー。」
「そやなー。」
難波から天王寺までは3駅なので、10分もかからず到着し、そこから上町線に乗り換え、2人は帰宅ラッシュの中、話しを続けていた。
「なぁなぁ。」
「ん?」
「ウチな、あとで飛鳥の家寄るわ。」
「そうしてくれる?」
「うん。ウチの方が真琴より飛鳥との付き合い長いからな。」
「まぁな。あの子もあんたの言うことやったら私より聞くやろ。」
「うん。」
そうゆう話しをしていると、車内アナウンスが流れて、いつの間にか姫松駅に着いていたので2人は慌てて電車から降りた。
「ほな、飛鳥のこと頼むわな。」
「うん、分かった。真琴も気ぃ付けて帰りや。」
「ありがとう、今日は楽しかったわ。またなー。」
「またー。」
そう言って響香は、飛鳥の家に向かって歩いた。
飛鳥の家は、姫松駅の停留所から7分ほど歩いた、帝塚山の住宅街の中の方にあり、
響香の家も飛鳥の家からはすぐ近くだが、真琴の家は2人の家とは反対方向である。
そして、飛鳥の家の前に着いた響香は、飛鳥の家のインターフォンを押す。
すると、翠が出た。
「はい、悠生でございます。」
「あ、こんばんは、響香です。夜分すいません。飛鳥、帰ってますか?」
「お嬢様ですか?はい、おられますが。」
「少し会いたいんですが。」
「少々お待ち下さい。お嬢様に聞いてまいりますので。」
そして、5分ほど待つと、大きな門が開き、翠が響香を出迎えてくれた。
「すいません、遅くに。」
「いえいえ。ささ、お嬢様がお待ちですよ。どうぞ中へ。」
「ありがとう。」
そう言って響香は広い玄関で靴を脱ぎ、飛鳥の部屋のドアをノックし、名前を呼んだ。
「飛鳥?ウチ、響香。」
「あ、うん、どうぞ。」
「ゴメンな、夜遅くに。」
「かまへんかまへん。」
「で、なんか用なん?」
「"なんか用なん?"ちゃうわ。今日はあんたにいろいろ説教しに来た。」
「説教?」
「so
や。」
「まず、先輩のことや。」
「先輩の?」
「なんであんな別れ方したんや?」
「だって先輩、いきなりホテル行かへん?とか言い出したんやもん。」
「そら、経験全く無いあんたからしたら怖いかも知らんけどな。でも、先輩置いてけぼりにして勝手に帰るんわ普通ちゃうわ。」
「あぁー…。だって私、普通ちゃうもん、処女やもん。」
「処女とかそうちゃうとかそんなん関係無い。常識のことを言ってるんや。」
「だって、家が厳しいのはホンマやし。」
「そらそうやけどな。」
「帰りの電車の中でな、真琴と2人で悩んどってん、あんたのことをな。」
「そ、そうなん?」
「そや。」
「まぁ、ぼちぼちやってったらえぇわ。あんた、先輩のこと、気になったんやろ?」
「え?う、うん。」
「そやから身体のこととか聞いたんやろ?」
「う、うん。」
「焦ること無い。先輩もまだガッコにおるんやから。先輩が卒業するまでにあんたが頑張ったらそれでええ。」
「あ、ありがとう。」
「今日はあんたも頑張ったよ。」
「ありがとう。」
「ほな、時間も遅いし、ウチも今日は帰るわ。ゴメンな、遅くに来て。」
「ええよええよ、あ、門まで送って行くわ。」
「ええって、ここで。ほな。」
「ほななー。」
そう言って響香は翠にお礼を言い、悠生家から出て、自分の家に向かった。
その頃飛鳥は部屋で、いろいろ考えていた。
「ゆっくりいけばいい、かぁ。はぁ。」
「先輩、怒ってないんやろか。」
「私なんかが彼女でええんやろか?」
「エリカさんみたいな美人ちゃうしな。」
「どうしたらええねん。」
などといろいろベッドの上で考えていたら、知らない間に寝てしまっていた。
今日は、藤坂たちとも初めて会ったし、色々あって疲れたのだろう。
飛鳥にとって、本当に、"いろいろな"出来事があった長い一日が終わった。
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