第3話:遭遇。

今日は日曜日。部活も今日は休みなので、飛鳥は、真琴たちとは連絡を取らず、

朝9時に起きて、翠の作った朝食を食べ、

10時半には制服を着て、

一人で阿倍野へショッピングへ出掛ける為、姫松駅から路面電車に乗り込んだ。


その車内・飛鳥はスマホで音楽を聴きながらくつろぎながら、いつもの景色を見ていた。

松虫駅まつむしえきを出て、道路との併用軌道に入ると、

今日は日曜な為か、道が凄く込んでいて、信号も赤が重なり、電車もなかなか前に進めない。


松虫駅を出て7分ほどしてようやく阿倍野に着いて、ここから終点の天王寺駅までの一駅は、

最近真新しい線路に切り替わった為、すいすい走って、なんなく天王寺駅前に到着した。

そして、電車を降りて改札を出た飛鳥は、最近新しく再開発された歩道橋の上で、

どこに行こうか考えていた。


「んー…、今日はどうしようかなー…。」


と、そこへ、真琴からのLINE通話が鳴った。


「やほー。」

「あ、まこちゃん、おはー。」

「今なにしてん?」

「天王寺におるよ?」

「天王寺?誰と?」

「一人で。」

「なにしてん?」

「買い物しよっかな?って思って。」

「ヒドいやんかー、誘ってぇなー。」

「ゴメンな。」

「ほなウチも今から行っていいか?」

「季子ちゃんも来るん?」

「いや?今日は約束無いで?何で?」

「私な、正直、あのコ少し苦手やねん。」

「なんでや?」

「最近しょっちゅうエッチな話しばっかりして来るやん。」

「あー。」

「私、話しに入られへんもん。」

「そやなー。」

「ほな今日は飛鳥と私と2人で遊ぼっか。」

「うん、ありがとう!!」

「で、今、天王寺のドコにおるん?」

「さっき上町線で着いたばっかりで、ドコに行こか考えてたトコや。」

「ほなな、HOOP(フープ)にあるスタバで待っててぇな。」

「スタバで?」

「うん。」

「ウチも今から準備して20分くらいで行くから。」

「分かった、待ってるわ。」

「ほななー。」

「うん。」


そう言って2人は電話を切って、飛鳥はいつもの通学路でもある、天王寺の地下街を通って、

近鉄百貨店側のエスカレーターを上がり、地上に出て、百貨店の裏に広がる、

“あべのHOOP”に向かって、2階にあるスタバに入った。


まだお昼前な為か、今日はいつもの夕方よりは込んではなくて、席もいくつか空いてたので、

ラテを頼み、適当に窓側の席に座って、一人でラテを飲んでスマホをいじっていると、

隣の席にカッコいい男性と可愛い女の子のカップルが座って来た。


「エリカ?今日は何をしたい?」

「んー、オタロードに行きたい。」

「オタロードか。分かったよ。」

「東京のアキバとはまた違うんだよね?」

「全然違うと思うよ。」

「そっかー。楽しみっ!」


などと、標準語での会話を隣で聞いていたら、そこへ、真琴が到着した。


「飛鳥っ!おはー!ゴメン!待った?」

「おはよ。いや、待ってないで。」

「って!あっ!ふ・ふ・ふ…、藤坂さんっ!」

「は?何言ってん?」

「す、すいません。」

「はい?」

「すいません、藤坂佑輔ふじさかゆうすけさんですよね?私のこと、覚えてます?」

「えーと…。」

「楠木真琴です、モデルやテレビのお仕事で何度かご一緒させて頂いた。」

「あぁ!やぁ。その後、元気だった?」

「元気です。ご無沙汰してました。ってか何でこんなトコに居るんですか?」

「いや、妹と大阪旅行してるんだよ。」

「妹さん?そちらの方?」

「そう。」


飛鳥とエリカはすっかり蚊帳の外だった。


「なぁなぁ。」

「あ、飛鳥、ゴメン。」

「誰なん?その人。」

「あぁ、私と何回か一緒にモデルの仕事したことある、藤坂佑輔さん。」

「藤坂佑輔…さん?なんか聞いたことあるな。」

「テレビとかにも良く出てるやんっ!見たことないか?」

「あぁー!あるわっ!すごーい、私、芸能人の人、初めて見たわ。初めまして。」

「初めまして。」

「お、お兄ちゃん。」

「あ、エリカ、ゴメンね。」

「この人たちは?」

「あぁ、こちらは、僕がモデルの仕事で何度かご一緒したことある、楠木真琴さん。」

「初めまして。」

「初めまして。」

「この子、私の友だちで、悠生飛鳥ちゃんです。同じ学校でクラスメイトの。」

「やぁ、飛鳥ちゃん、初めまして。よろしくね。」

「よ、よろしくです。」

「エリカ、挨拶して?」

「は、初めまして、藤坂エリカ、です。よろしくお願いします。」

「藤坂さん、兄妹で大阪旅行ですか?」

「そうだよ。」

「このあとはどうされるんですか?」

「いや、今日は妹がオタロード行きたい、って言うもんだから、

行き方をスマホで調べてたトコなんだよ。」

「オタロードですか、じゃあ、私たちがご案内しましょうか?」

「いやいや、そんな、悪いよ。」

「全然いいですって!

それに、藤坂さんたちが知らない大阪の名所とかもご案内しますよ。な、飛鳥?」

「そうやなー、それ、楽しそうやなー。」

「じゃあ行きますか?藤坂さん?」

「そうだね。」


そう言って4人はスタバを出た。


「オタロかぁ…。ねぇ、藤坂さん?」

「なんだい?」

「もう新世界しんせかいとかは行かれましたか?」

「いや、まだだけど。」


「オタロ行くんやったら、地下鉄乗るより、こっから歩いて行った方がいろいろ見れて妹さんも楽しいと思うんですが。」


「じゃあ任せるよ。」

「はーい。ほな、こっちです。」


と言って真琴は、藤坂たちを連れて、HOOPを出て、"てんしば"方面に向かって歩いて行った。


その途中、真琴と藤坂は、仕事の話しで盛り上がっていたが、飛鳥とエリカはモジモジしていたが、飛鳥からエリカに話題を持ちかけた。


「え、エリカさんは何才なんですか?」

「私?私は16才の高2だよ?飛鳥さんは?」

「わ、私は15才で高1です。じゃあ先輩ですね。」

「そうね、あ、でも、そんなにかたくならなくて大丈夫だよ?」

「ありがとうございます。」


「藤坂さん?」

「なんだい?」

「ここが、“てんしば”です。」


へぇ~、ステキなトコロだねぇ。それにオシャレな雰囲気の場所だね。」


「そうでしょう?ウチらも天気いい日には飛鳥たちとここでお弁当広げて食べながら話ししたりするんです。」

「そうなんだー。あ、あれ、通天閣つうてんかくだよね?」

「そうですよ。」

「エリカ、見てごらん?あれが通天閣だよ。」

「へぇ~、初めて見た。変わった形してるね。」

「ウチらは生まれた時から見慣れてるけど、やっぱ初めて見る人がみたらそう見えるんですね。」

「独特なんかなー。なぁ、まこちゃん。」

「そやなー、東京タワーみたいにオシャレちゃうもんな。」


そう話しながら4人は、天王寺公園から新世界へ抜けられる通路を通り、新世界の入り口に着いた。


「藤坂さん、エリカさん、ここが新世界です。」

「うわー、凄いっ!面白そうなお店がいっぱいあるー!」

「そうだね、凄いね、僕もココは来た事無かったよ。これ、全部串カツ屋さん?」

「いえ、全部、って訳じゃないですよ。飲み屋さんとかもありますし。」


4人は、新世界を散策しながら通天閣通りの商店街を抜け、4人で一緒に、通りかかったおじさんに、一緒に写真を撮ってもらうよう、真琴がお願いし、

通天閣をバックに写真を撮ってから堺筋さかいすじに出て、

日本橋にっぽんばしの電気街を歩いていろんなお店を紹介しながらゆっくり歩いて行った。

そこで、真琴がスマホの時計を見ると、もうお昼を回っていた。


「藤坂さん、エリカさん、お腹、空いてませんか?もうお昼過ぎてますが。」

「あぁ、そうだね、空いてるかな。エリカは?」

「空いたかなー?」

「何か食べたいものってありますか?例えばタコヤキとか。」

「タコヤキはもう食べたよ。」

「そうですか。」

「ここ、日本橋は、ラーメン激戦区なんですよ。」

「そうなんだ。」

「美味しいラーメンとかいかがですか?」

「ラーメンか、いいね。エリカはどう?」

「お兄ちゃんたちに任せるよ。」

「じゃあ決まりだね。真琴ちゃんのおススメのお店に付いていくよ。」

「はーい。じゃあこっちですー。

あ、ココを曲がったらメイトが見えて来るので、そこから先がオタロですよー。」

「わー、楽しみっ!」

「つけ麵とかいかがですか?」

「美味しそうだね。」

「こちらの店なんかおススメなんですが。」

「じゃあココに入ろうか。」

「はーい。」


と、真琴がドアを開けて中に入り、店員と話しをする。


「すいませーん。4名、行けます?」

「はいよー、4名様、ご来店っ!」

「へいらっしゃい!」


そして4人は、それぞれ気に入ったつけ麵を選び、

美味しそうに食べた。

食べ終わってから真琴と藤坂は、仕事の話しで盛り上がっていて、

飛鳥とエリカは笑いながら会話をしていた。


「エリカさんたちはいつまで大阪に滞在してるんですか?」

「え?」

「あぁ、あと1週間は居てる予定だけどね。」

「そうなんですね。」

「エリカさん、学校は?」

「今は休んでるの。いろいろあって。で、気晴らしでお兄ちゃんに大阪に連れて来てもらってるの。」

「そうなんですね、優しいお兄さんですね。」

「飛鳥さんはご兄妹は?」

「うちにも兄が2人居まして、上の兄は東京でIT関連の仕事をしています。

真ん中の兄は大学2回生で、私のこと凄く溺愛してて、かなりシスコンなんですよ。」

「へぇー。じゃあ、飛鳥さんって、お嬢様だったりとか?」

「そうそう、この子の家、帝塚山の高級住宅地にある、お金持ちなんです。」

「ちょ、ちょっとまこちゃん!」

「ええやん、別に。」

「ま、まぁ…。」

「藤坂さん、偶然に再会出来ましたし、良ければLINEのアカウント交換とかして頂けませんか?」

「あぁ、いいよ。」

「飛鳥もしてもらったらどう?」

「え?い、いいんですか?」

「あぁ、構わないよ。」

「エリカさんもいいですか?」

「ええ、私も、喜んで。」


4人はそれぞれにLINE交換した。

そこで、飛鳥がふと思いついた。


「あ、そうや。」

「ん?どしたん?」

「さっき撮った写メな。」

「あぁ、通天閣の?」

「うん。あれ、スマホの待ち受けにしよかな?っておもて。」

「あぁ、それえぇなぁ。いいですか?藤坂さん?」

「いいよ、全然。僕たちもそうしようか?エリカ。」

「そうね。記念になるしね。ってか、大阪弁って面白いね。」

「そうですか?」

「なんか、漫才聞いてるみたい。」

「やっぱ他の地方の方から聞くとそうなるんですねー。」

「私らは毎日普通にボケて突っ込んだりしてるけどな。」

「せやな。」


飛鳥はウキウキしていた。

まさか自分が有名な芸能人と出会って、一緒の写メに写って、それを待ち受けに出来るだなんて。


「じゃあそろそろお店を出ましょうか。」

「そうだね。」

「すいませーん、清算お願いしまーす。」

「あいよー。」


藤坂とエリカは一緒に清算をし、飛鳥と真琴は割り勘で清算をして、店を出た。

「で、ココがオタロード、

略称・オタロなんですけど、エリカさんはどんなお店に行きたいんですか?」

「んー…私はアニメグッズがたくさんあるお店がいいですね。」

「じゃあやっぱメイトやザウルスとかですね。そちらまでご案内します。」

「ありがとう。」

「いえいえ。」


そう言って真琴は、最初にザウルスの場所を藤坂に教え、その後、メイトまで歩いて行った。


「藤坂さん・エリカさん、こちらがメイトです。」

「うわー、すっごいおっきい!うちの県のメイトと比べ物にならないくらいおっきい!」

「楠木さん、ありがとう。妹も喜んでるし、とりあえずはここまでで大丈夫だよ。」

「そうですか。」

「ま、この雰囲気だったら、この周辺にはいろんなお店がありそうだし、妹も楽しめるだろうしね。」

「そうですね。」

「そう言えば飛鳥?」

「何?まこちゃん。」

「今日はショッピングするんちゃうかったん?」

「そうそう、そうやねん。」

「そうだったの?悪かったね、お邪魔して。」

「いえいえ、藤坂さんと再会出来て私も楽しかったですよ。」

「私たちは特にアニメが好き、ってわけじゃないんで、

ザウルスやメイトくらいしか詳しいショップを知らなくて。あ、でも、

この辺り一体がオタロードなので、

いろんなアニメショップやメイドカフェなどがあるんで、妹さんも楽しめるかと思います。」

「そっか、あちこち案内してくれてありがとうね。

真琴ちゃんと出会わなかったらタクシーで来てたところだったから、通天閣で写メも撮れなかったよ。ありがとう。」

「いえいえ、大阪人としてのことをしただけですよ。袖振り合うも他生の縁とも言いますし。」

「そうだね。」

「あ、またお仕事でご一緒した時はよろしくお願いします。」

「こちらこそ。」

「それと、大阪滞在中、困ったことがあったら、私か飛鳥に、いつでもLINEしてくださいね。」

「ありがとう。」

「そう言えば、お2人はどちらにご滞在なんですか?」

「天王寺だよ?」

「あー、そやからさっきHOOPに居たんですか。ひょっとして、ハルカスの上のマリオットとか?」

「良く分かったね、そうなんだよ。」

「さすが藤坂さん、リッチですねー。」

「いやいや。」

「じゃあ私たちはこれで。今日は楽しかったです、ありがとうございました。」

「僕たちこそ、ありがとうね。」

「エリカさん、大阪観光、楽しんで下さいね。」

「ありがとう、飛鳥ちゃん。」

「では、失礼します。」

「あぁ、じゃあ、またね。」


そう言って4人はそれぞれ別れ、飛鳥たちはミナミのなんばCITY方面へ歩いて行った。


「いやー、ビックリしたわ、ホンマ。」

「ん、何が?」

「さっきまでのこと。」

「あぁ、藤坂さんのこと?」

「うん。あんな有名な芸能人と出会うやなんて思わんかったし、

一緒に大阪観光するとも想像付かんかったわ。」

「そやな。」

「それにしても妹さん、美人やったなー。」

「そやなー。ってか、藤坂さんにあんな可愛い妹さんが居たことにビックリやわ。」

「知らんかったん?」

「当たり前やん。現場ではあまりプライベートな話しとかせぇへんし。」

「そうなんや。」

「で、このあとどうする?なんばCITYまで来たけど。」

「そやなー、なんばパークスうろうろしていい?」

「えぇよー。あんたと2人で買い物するん、久々やからな。」

「ほなほな、買い物のあと、パークスシネマで映画とか観よ?」

「えぇよー。」


そう言って2人は,

南海電鉄なんかいでんてつのなんば駅周辺に広がるショッピングエリア、なんばパークスへと向かった。

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