第26話 VS仮免試験
やはり教習所には驚きが無い。
俺が教習所について書けることは、俺のチンポの律動と受付のおばちゃんが何故かタメ口の二つだけだ。
最近の俺はとにかくフラットであろうとしていて、隙あらば知らない人に話しかけんとしているのだが、この“知らない人”が、ある程度以上可愛い女の子に限定されているということを、そろそろ認めねばならない。つまり、フラットではなくチンポの律動なのだ。 大変おこがましい話だが、あまり可愛くない子には一切話しかける気力が湧かない。というのも、可愛い子は話しかけられるのに慣れているから、俺みたいなのが話しかけてもにこやかに対応してくれるということを俺は知っているので、可愛い子の方が話しかけやすいのだ。俺が話しかけた、俺の次に試験を受ける人は、既に3回も試験に落ちているというのに、誰よりも明るく俺と喋ってくれるのである。
ただ、正しく自分を見つめると、結局チンポが律動しているわけだが。
時系列がおかしくなるが、今日の教習所からの帰り、昔の旅人みたいに笠を被って、腰にビニール袋をくくりつけ、ふらふら歩いている小太りのおっさんとすれ違ったのだが、ネタではなく、急に切りつけられるんじゃないかと本気で怖かった。こんなに風流な風体で、俺の愛すべき人種であるはずなのに、実際にすれ違った際、俺が感じたのは恐怖のみだったのだ。
俺がやっていることはこのおっさんと同じだ。同じ教習生とはいえ、知らない人である俺から話しかけられるというのは、恐怖であるに違いはあるまい。
どこまでイケて、どこからがイケないのか。こういう優男の押し引きを一切修めてこなかった俺には分からない。これから学んでいかねばならないわけだが、外した場合のリスクが圧倒的なので、結局置きにいってしまう。俺はすんでの所で狂えない。覚悟が足りない。あと、敢えて外すみたいなお笑いは大体ウケない。ある程度関係を構築しつつある職場でも結構外すし、前の合コンみたいな初対面の場だと全くウケない。
受付のおばちゃんは狂っている。誰に対しても、何故かタメ口なのだ。しかも、自然にさらっとタメ口なわけではなく、違和感を覚えるようなタメ口なのだ。あれ? 今……って感じのタメ口なのだ。世界を変えたいと願うなら、俺にも、彼女の様な意思力が必要なんだろう。
何故俺のチンポが律動し始めたのか。やはり、俺ほどのものでも、周りの環境から影響を受けてしまうのだ。
はっきり言って、24歳で恋愛経験が無いのは異常だ。少年よ、目を覚ませ! 現実を見つめろ! 俺たちの人生は間違っている!
恋バナというのは、意外にも安パイな話題であり、働き始めだととりあえず恋バナで仲良くなるのが無難なわけだが、みんな遊んでるのに、俺だけ遊んでないのだ。俺は思想を語ることは出来ても、エピソードを語ることは出来ない。俺は恋愛的弱者なのである。
一つ勘違いしないで頂きたいのは、俺は恋愛にこだわっているわけではない。“弱者”という部分にこだわっているのだ。俺はやはり地上最強を目指しているので、弱者であってはならない。ただ、恋愛に関しては今まで一切を遠ざけてきたから、完全に弱者なのだ。地上最強を目指すには、俺にとって恋愛は避けて通れないわけである。
俺は心に恋愛要素を組み込んでこなかったから、どいつもこいつも下らなく見えてしまう。どーせ俺のこと好きじゃないし、こいつらに俺の事なんて解せるわけがないと。それは真理ではあるのだが、恋愛をしてきた人間は、しっかり心にフィルターをかけて、その事実を誤魔化し、可能性を信じているのだ。俺もフィルターをかけなければならない。感覚を鈍らせるという成長もあるのだ。次、少しでもチャンスがあったら、死ぬほど前ステしてみよう。多分俺はその子を愛せないし、その子も俺を愛せないだろうが、俺は高みへ近づくはずだ。
禁欲では高みへ到達できない。俺が真の聖者になろう。
ちなみに仮免は受かった。落ちてろよ! オチがつかないだろ!(ニチャァ
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