第10話 悲しみの共有
寂しん坊のサンタクロースでは何も成しえない――――カヒロタラー・カガマナナジ博士
金曜日の昼、求人に応募した。自殺したと言い換えても良い。半端な時に応募した所為で連絡が来なかった。なので土日を挟んで月曜日まで、このドンヨリした気持ちで過ごさなければならない。連絡が来て面接日が決まったら、面接日までドンヨリした気持ちで過ごし、採用されようとされまいとドンヨリした気持ちになる事が確定していて、もはや将来に希望はない。
俺の世界は悲しみに満ちている。もう何もかもが悲しい。頑張って一日中起きて、昼夜逆転を直したのに、次の日の朝に二度寝して夜まで寝ちゃって、一日でまた昼夜逆転した。この日に求人に応募する予定だったのにズレちゃったもんだから応募が金曜日になって土日挟むことになっちゃったし、夜に起きると何もやる気起きないから執筆も出来ないし、最悪だ。なんて悲しいんだ!
そんで起きてから飯を買いに行ったら、ゲオの、直角に曲がってて向こう側が見えない曲がり道があるんだけど、俺はゲオ側から出る際は必ず、一度首を伸ばして確認してからその道に出るのだが、全然確認せずに飛び出してきたニーチャンとぶつかって、何か「ぶつかってんじゃねーよ」感をそのニーチャンが出してきたので、俺も「てめーが確認しねーからだろカス」感を出してしまい、お互いが嫌な気持ちになった。悲しい……。
行きつけのスーパーに着いて、いつもと同じような惣菜を買ったのだが、夜とはいえ時間帯は早めだったので、まだ割引シールが貼られておらず、悲しい。
この時点でもう悲しみに満ちていたので、全然酒強くないし、気持ち良く酔えないの分かってるのにストロングゼロを買った。もう悲しすぎて。
そんでレジに行くと、ここのスーパーはもう4年くらい夜勤は爺さんしか居なかったんだけど、新入りと思われるおばさんがレジに入ってて、悲しいことにおばさんのレジは止まっていた。俺は爺さんのレジだったんだけど、まだ20時とか21時とかだから客も夜にしては多くて忙しくて、でもおばさんはレジのやり方分からないから爺さんに聞くしか無くて、爺さんもなるべく教えようと少し自分レジを空けたりしてたんだけど、おばさんは傍目から見てもトロくて、爺さんも苛ついて「ちょっとは自分で考えろ!」とキレて、俺は両方の気持ちが分かり悲しくなった。
この爺さんが普段は良い奴なのは4年このスーパーに通っている俺にはよく分かってて、深夜にまだ半額シールが貼られてないときでも、いつも来てくれるからってので半額にしてくれたりする気の良い爺さんなんだけど、やっぱり忙しくて心が磨り減っているときは、誰しも怒ってしまうのだ。俺がニーチャンにぶつかったときのように。
もちろん一番悲しいのはおばさんのレジに入ってしまった人で、そんなことはその場の登場人物全員が分かってて、このスーパーは悲しみに満たされていた。
帰り道も悲しかった。
俺は市役所の近くに住んでいるのだが、今の時期選挙をやっていて、もう市役所周りは死ぬほど五月蠅いんだけど、五月蠅すぎて部屋で一人でダンスっちまうくらい五月蠅いんだけど、市役所の前を通ると、
「さあ投票 あなたが主役の 選挙です」という標語があって、もう悲しくなった。俺が主役なわけないだろう。選挙なんて投票する側はモブもモブのドモブだろうよ。国がすぐバレる嘘をつかないでくれと悲しくて堪らなかった。
選挙カーも悲しい。もう五月蠅すぎる。夜勤で働いてた頃は本気でノイローゼになるかと思った。でも何が悲しいって、選挙カーで大声出してるおばさんは、何か良い人そうなんだ。「足を止めての声援ありがとうございます!」とか「大きく手を振っての応援ありがとうございます! 本当に励みになります!」とか言ってて、手を振ってる側も満更ではなくて、そこには悪意みたいなモノが一つもない完成された空間なんだが、声がでかすぎるんだ。あんたらはそれでいいかもしれないけど、ラージヴォイスなんだよ……。これもやっぱり誰が悪いとかいうより、悲しいことなんだ……。
政治家も悲しいよ。他の候補を下げて、ひたすら自分の名前を連呼する。完全に馬鹿を想定した喋り方だ。そんな演説を真面目な顔して聴く人、辛い言葉を浴びせる人、明らかにアルバイトのスタッフ、捨てられるチラシ、ポケットティッシュ、ラージヴォイスババア、フィーリングサッドマン……。
最近は悲しすぎて何もやる気が起きず、ぼけーっとPS4でYoutubeを見ているのだが、悲しすぎるよ……。PS4でYoutubeですよ皆さん。なんて、なんて……。
中学生の頃、PSPでエロサイトを見ていたのを思い出す。当時はPSP用にAVをめちゃめちゃ圧縮してアップロードしてくれている「PSPエロ動画倉庫」みたいなサイトがあり、大変お世話になったのだが、今思うと「PSPエロ動画倉庫」にまつわる全てが悲しいよ……。でもありがとう……人が人を裁くなんて出来ない……。今の中学生も独自のエロ文化があるのだろうな。
Youtubeでぼけーっと音楽を聴いていて思うのだが、奴らはどんだけ恋してるんだ。すごいな、恋が。彼らの想定する“君”は力を持ちすぎだろ。どんだけ救うねん。でも俺にはちっとも経験が無いから彼らを否定することは出来ない……。いつか俺もAAAに共感する日が来るだろうか。今はこいつら3pしてそうだなとしか思わないが、これが二人の結末と知っても好きだよって君に伝えたいと思うだろうか。やっぱりどっちも悲しいよ……。
ここまでずっと悲しい悲しいと書いてきたが、この悲しい全てを楽しいに置き換えてもこの話は成立する。結局は気持ちの問題なのだ。なら、悲しいよりも楽しいで生きた方が良さそうだが、でもそんなの馬鹿っぽいじゃないか! 今まで10回書いてきて、結局俺はどんな話をしようと「見栄やプライドが足を引っ張っている」てのが結論になり、いい加減捨てちまえって感じなんだけど、捨てられないし、捨てたくない。でも、前には進みたい。変えられない領域が広すぎるんだけど、それでも変化はしていかねばならない。
最近分かった。俺は寂しいんだ。今は真っ暗で、静かで、一人だ。俺は一人が全然余裕だと思っていたが、本当に全くの一人だと、やっぱり寂しいみたいだ。俺はインターネットに騙されていた。ネットを見ていても一人は一人だと考えがちだが、一人じゃない。ネットを見ている人間は孤独を気取ってはいけないよ、やっぱり。試しに、夜中、部屋の電気だけ付けて、ぼーっとしてみて欲しい。めっちゃ一人やぞ。めっちゃ一人。
PCが壊れてから、PS4やスマホを使う頻度が格段に上がった。それは調べなければならないことが有るわけではなくて、寂しいんだ。音のない世界が。Youtubeで音楽を聴くのも、一人だと思いがちだが、一人じゃないんだ。うっすらとした一人じゃなさがそこに存在している。
でも、俺は孤独に挑む。行動に苦痛が伴わないなんて、まず無い。
これからは満足のいく文章量を書けるまでPS4を起動しない。孤独だ。でも俺は孤独の意味を履き違えていたとはいえ、所謂普通よりは孤独に造詣が深いはずだ。孤独は俺の強みになり得る。これは俺の変えられる部分の話だ。
寂しん坊のサンタクロースでは何も成しえない。俺は確信している。今の時代はオールイン出来る者が勝つ時代だ。
一つめでたいこと発見した。g-mail15周年おめでとう!
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