第3話 効率

効率の話をする。

 俺は効率というものを大事にして生きていて、実際効率を意識しすぎて却って効率が悪くなる程度の効率厨ではあるのだが、よくよく考えてみると俺の生活はまだまだ効率的に出来る点があると気付いたので、考察していく。


 俺はほぼ毎日スーパーで米と惣菜を買って食べているわけだが、毎日スーパーに買い出しに行くのはどう考えても効率が悪い。でもこれは引きこもり生活をしている俺に適度な運動と社会性を与える必要な行為なので考えないこととする。その際に出るゴミについて俺は考えねばならない。

 俺の部屋を見回すと、まずゴミが目に入る。1日分のゴミがそのままスーパーの袋に纏められ、部屋の中心に山を形成しているわけだが、いや、毎日捨てろよという話なのである。スーパーに行くために毎日外に出ているわけだから、前日の分のゴミ袋を持ち出せば、ゴミの溜まりようが無いのだ。分別を考慮しても、3日に1回持ち出せば十分に捨てられる。ため込んでいるから、臭うし、虫が湧くし、部屋が狭くなるし、纏めて捨てる際に大きなゴミ袋を用意しなければならないから、大した額ではないとはいえ無駄に金がかかるし、良いことが一つも無いのだ。


 もう一つパッと思いつくのは髪の問題だ。俺は全国の無職よろしく、特にこだわりがあるわけではないが無駄に長髪なので、ドライヤーに時間を取られる(実家から貰ってきた型落ちのドライヤーなのでパワーが貧弱。これも一つの効率の悪さだ)。俺は自分で髪を切っていて、切るのが面倒なので自分の中での限界ギリギリまで髪を切らないわけだが、髪を切る時間よりも、日々の、無駄に長い――というより多い髪を乾かす時間の方が圧倒的に時間を浪費していることにさっさと気付けという話である。


 もちろん、俺は既に気付いているのだ。ゴミの山を見るたびに、髪を乾かすたびに。俺は思っている。ソシャゲのスタミナを一つも余さないこの俺様が、何故こんなに効率の悪いことをと。で、その理由もやっぱり分かっている。


 花さか天使テンテンくんにおいて、神は生まれる前の魂に、才能の種“サイダネ”を授けるわけだが、俺には間違いなく“問題を先送りにする”サイダネが与えられた。そして、俺はそれを開花させてしまった。詰まるところ、全てはここに集約されているのだ。


 俺は子供の頃から、何かに取り憑かれたかのように、ひたすら問題を先送りにしてきた。朝起きる時間を先送りにし、宿題を先送りにし、説教を先送りにし、受験勉強を先送りにし、将来を先送りにしてきた。それでも、なんとかやってきた。俺には先送りにする才があったから。

 今、俺はゴミ捨てを先送りにし、カットを先送りにし、管理会社やプロバイダからの電話を先送りにし、就活を先送りにし、生きることを先送りにしている。

 そして、重要なのは、俺は先送りにしているだけで、問題は一つも解決していないのだ!!!

「仕事は見つかりましたか?」という親からのLINEを既読スルーしたところで、親からの圧が無くなるわけではない。インターフォンの電源を切ったところで、いつかは訪問絡みの数多ある面倒に付き合わねばならないのだ。

 そして、先送りにしてきた問題が効いてきている。

 朝起きる時間を先送りにすることで、慌てて準備するも信号やらの兼ね合いで遅刻してしまうことはよくあり、社会に出たときに困るのはお前だと怒られるたびに「社会に出たらちゃんとやるわボケ」と心の中で毒づいていた俺だが、社会に出てもやっぱり起きる時間を先送りにし、遅刻し、社会人としての自覚が云々かんぬん怒られている。そして、繰り返す。

 部屋の掃除を先送りにしていることで、台風に破壊されたベランダの修理のために管理会社に電話することが出来ず、管理会社からのおそらくその件であろう電話に出ることが出来ず、先送りにしている。

 ああ、先送り、先送り。先送りすら、先送り。俺の毛根先祖返りYOYO!


 詰まるところ、俺はサボりであり、良く言えば省エネ主義なのだ。美少女が降って来れば俺の人生は完成するが、来なければただの怠け者である。生きろ! このクソッタレな世界を!



 今思い付いたことだが、相手が善人だという前提を持てば、人生楽しく生きられそうだなという話。

 例えば、良くある話として、コンビニの店員に連絡先を書いた紙を渡すというのがあるが、相手が善人だという前提があれば、受け取りを断られたとしても、馬鹿にされることは無いわけだから、ノーリスクである。相手が馬鹿にしてきたら、ああ、コイツは屑だな、屑に対して心を動かす必要は無いと自分を守れるわけである。

 まあそれはやり過ぎとしても、信号を渡っている際、老人がかなり重そうな荷物を持っていて、タラタラ歩いているときに、荷物を信号を渡りきるまで持ってあげるような、所謂少し押し付けがましい親切を行う際、相手は善人だという心構えが出来ていると、気兼ねなく、善行と思しき行為を行えるのではないか。

 まあ俺はこんな考え方出来ないからやっぱいいや。ここに到達するのはまだまだ先の話で、ひとまず目先のことを考えよう。いや目先のことをちゃんとやれって話だろ今回! たわけやがって!


 そういえば俺が4月中に仕事を~みたいに言って置きながら、今現在全く仕事を探してないのも先送りだな。でもさ~“今”じゃないんだよな~仕事は。もう探さなきゃいけない段階なのは間違いないけど、今、特に、今日って感じじゃないんだよな~。つーかさ~、それが人間っしょ!w

 先送りは俺の根深い問題なので、先送りします。まずは執筆を!


 というわけで、今日は洗濯をする。俺の記憶の限りでは、今年に入ってから1回もしてない。3ヶ月くらい同じ服着てる。くっさ。こうして文字に起こしてみると酷いな。よし、今すぐ洗濯をします! やれることからやっていけ!


 そろそろ思想の弾が尽きてきたので、アイデアを小説に昇華する練習をする。今まで以上に時間がかかるだろうが、今日だって本当はもっと書けるはずだろう。時間はたっぷりあるんだから、もっと言葉をひねり出しても良かったはずだ。ここまで3回書いてきたが、はっきり言ってコストは余り掛かっていない。今まで頭の中で考えてきたことばかりだからだ。ここからが大変な部分で、質と量の問題が出てくるわけだ。ひとまず、継続。


洗濯しろ!

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