第9話 いつも通りの日々

部屋のドアノブを回して部屋に入るとテーブルの前にある椅子に灰色の髪をした少女が座っている。

 …いやいやさっきまであそこで一緒に話してませんでした貴女!

 「帰った来た…お帰り、博人」

 青い瞳がこちらに向けられる。

 「いやいや…ただいま、エラ」

 「そろそろ寝るから部屋に戻れよ~」

 「ん?私はここで寝る」

 なに言ってるんだこのシンデレラ。

 「私の転生先は博人の隣だから近くにいなきゃいけない」

 だから何ドヤ顔で言ってんの。

 「冗談はほどほどにして寝るぞ」

 「一つだけ」

 ん?

 「一つだけ願い聞いてくれるって言った」

 …今この状況でそれ言うの。

 「もっと、もっと一緒に居たい」

 そんな儚げな顔で言わないで下さい。

 「もっと博人と一緒に居たい、これが願いじゃ駄目?」

 目尻に涙滲ましてそんな事言われたら拒否できないじゃん…まあどちらにしろ拒否権無いだろこれ。

 「何にもしないなら良いよ」

 まぁそういうことする子ではないと思うし大丈夫だろ。

 「うん!しないから大丈夫!」

 さっきとはうってかわって依美を咲かせている、さっきの儚げな表情はどこ行ったんだ。

 「お休み、エラ」

 「うん、お休み博人」

 俺は目を閉じて夢の中へ旅立って行った。

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 「んっ~」

 「おはよう、博人」

 横を見るとエラがいる。

 確か昨日一緒に寝たんだっけ?

 「おはよう、エラ」

 妙にツヤツヤしてるなエラ

 笑顔が増えた気がする、良い事だ

 エラと挨拶しているとドアを叩く音が聞こえた。

 「博人ー!おきた?」

 頭が覚めてきて思ったけどこれちょっとまずくない?

 「入るわよー」

 そうじゃんここの部屋鍵ついてないんだった!

 「博人?おき……斎藤さん?」

 ユノさん?おめめが息をしていませんよ?

 あと顔が怖いですよ。

 「違うんだ!俺は悪くない!!」

 怖い、ただただ怖い。

 あとそんな虫を見るような目止めてください。

 「へぇー。何が悪くないのかしら?斎藤さん」

 ユノがこちらに近づいてくる

 「これはエラが昨夜俺のベッドに入って来たから起きた出来事であって俺は悪くないぞ!……多分」

 「――エラ、真実を聞かせて」

 隣にいるエラが口を開く

 「昨日お願いしたら寝かせてくれた」

 「おいちょっと待とうか、それはあっている「あってるの!?」けど違うんだって誤解だよ!いや誤解じゃないけど」

 ヤバイヤバイめちゃくちゃ怒ってるよご立腹だ。

 「煮え切らないわね!ハッキリと言いなさい!」

 「だからそれを言おうとしてんの!」

 「なら聞かせなさい!!私が納得する理由を!!」

 ユノが顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。

 「エラに一つだけ願いを聞いてあげるって言う話をしたんだよ。そしたら一緒に寝てくれって言われたからさ、『何もしない』という条件付きで寝ました」

 これなら大丈夫だろ。

 ―――――――――――――――

 答えはげんこつでした。

 その後はこってり絞られたけどエラは注意だけされて終わり、理不尽だ……。

 「取り敢えず、おはよう。ユノ」

 ユノはため息をつく

 「おはよう、博人」

 また一日が始まる俺は体を伸ばして支度を始めた

――――――――――――――――

 「今日は依頼も無いし手伝えばいいんだよな?」

 隣に座っているユノに聞く。

 「依頼もたまにしか来ないと思うけどね、色々内容は変わるけど」

 あれってそんなに適当なやつなの?

 「あっ、来るわよ」

 目の前を見ると少し前のところが光出す。

 光が止むと中からスーツを着た社会人が出てきた。

 「ここはどこだ?」

 俺ってこんな感じに出てきたのか。

 イメージ的にはゲームの召喚みたいだな。

 「ええと、貴方は木村武志さん二十三歳ですね?」

 そう言えば仕事中のユノは見たことなかったな。

「はい、そうです」

 「最近の事は思い出せますか?」

 「はい、思い出せます、私は死んだんですよね」

 「はい、残念ながら貴方は亡くなりました」

 ユノは悲しそうな表情で告げる。

 お前俺の時こんなに親切じゃなかったよね。

 「そうですか…いや頑張ったんですけどね、間に合いませんでした」

あれ?何であの人死んだの?

 「ユノ、どういう事だ?どうしてあの人は亡くなったんだ?」

 ユノの耳元で向こうに聞こえないように喋る

 「ひゃっ、あ、貴女なにやって……はぁ」

 ユノは何で顔が赤いんだろ?

 「彼の勤めてる会社で火事があってそこから他の社員を逃がす為に最後まで残っていたのよ彼」

 何その主人公みたいなことやってるのこの人。

 バスで死んだ俺とは大違いだ。

 「貴女には転生する機会が与えられています」

 「転生……異世界に転生は出来ますか?」

 「ええ、出来ます」

 「異世界の転生でお願いします」

 「わかりました、貴方を異世界に転生させます」

 ユノが言うと同時に彼を包むように光の輪が出来る。

 「貴方の旅路に幸福が有らんことを」

 そのまま光は彼を包むと上に上がっていく。

 一瞬光が強くなるとそのまま消滅した。

 「これで彼は転生したわ」

 ユノはやりきったと言わんばかりの晴々とした表情でこちらに顔を向ける。

 「俺の時ってこんなに丁寧じゃなかったよね」

 「ギクッ」

 ユノの肩が跳ねる。

 「えーと?俺の転生先は芋虫って言ったよな案内人さん」

 おい目線をずらすなこっち向け。

 「な、なんの事かしら?」

 逃げようとしてるな?

 「俺、そろそろ転生「だから駄目だって」なんでさ」

 てか何で泣きそうな顔してるのこの人。

 「お願いよ…行かないで」

 こっちにしがみついてくる。

 「何でそこまでいこうとするの?」

 「いやそんな事言われてもなあ」

 特に理由がない。

 強いて言えば冒険したいかな?

 「なら良いじゃない、行かなくても」

 てかもう号泣してるし

 「寂しいのよ、博人がいないと」

 あり?

 「だって…前も言ったけどこんなに一緒に居た人居ないし…」

 なんかちょっとドキドキしてるんだけど。

 「いつも一人だったから寂しかったのよ~~」

 嗚咽が響く。

 確かに、俺が来たときはユノは一人だった。

 ずっと一人だったのか……。

 「わるかったよ」

 ユナの肩に手を置く。

 「ばが~~博人のばが~~」

 ポンポンと胸を叩いてくる。

 「わかった、わかったから」

 ユノの背中を撫でる

 「暫くは言わないから安心しろ」

 「本当に?」

 上目遣いは反則だってば。

 「ああ、本当だからさ」

 ユノの頭を撫でる。

 「うん」

 この話題はユノのトラウマスイッチなたいになってるな。

 この後ちゃんとユノは元の調子に戻りました。

 

 

 

  

  

 

 

 

 

 

 

  

 

 

  

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