第5話 Cendres
私の生まれは貴族だったけどそこまで裕福ではなく凄く恵まれてると思っていた
お母さんは私に優しくしてくれたし色々教えてくて昔話を聞かせてくれたし、商店街や公園とかにも一緒に良く行ってくれてた
だからお母さんが亡くなった時は凄く悲しかったし、朝おはようと言っても誰も返事おくれないことがそれを余計に認識させて悲しくなった
お父さんはずっと家にいなくて出稼ぎしているから家には滅多にいない
でもやっぱりリビングとかキッチンを覗いてしまうのは仕方ないと思う
居ないとわかっていてもやっぱり探してしていて改めて実感すると余計に寂しくなった
そこから暫くたって家に一人で住んでいると家に女の人が三人やって来た、どうやらお父さんは再婚したらしい
新しいお母さんは最初は優しかった、家事を手伝ってくれたのが嬉しかったしお姉さんと話すのも楽しい
けど、一番嬉しかったのは自分の他に一緒に暮らして暮れる人が居ることが凄く嬉しかった
お母さんが生きてたらこんな生活をしてたのかなって考えて懐かしい気持ちを思い出す
一ヶ月ほどたった頃からだろう
お母さんは家事をだんだんしなくなってきてお姉さん達とはあんまり話さなくなって日常会話をしなくなった
朝のおはようもなければ夜のお休みもない
家族というより同居人に近くなって、私は使用人みたいになってた
なので私は昔の一人で住んでいるのと変わらない気がしている、いや昔よりも酷いかもしれない
最近では三人で舞踏会やパーティーに行っても私は家でお留守番
出掛けるとした買い物だけ
お母さんとお姉さんが帰って来たら夕食の支度や掃除などの雑用をしなくてはいけない
夕食に至っては「そんなご飯は食べれない」と捨てられることも少なくない
終わる頃には日付が変わる位になっていて休憩しているとお母さんは「灰まみれで汚いからあっち行って」と言ってくる
お姉さんも私に悪口を言ってくる
そこから離れたあと、明日の準備をしてから寝るの日々が続いた
最近笑ってないし、そもそも表情を表に出すと三人が突っ掛かってくるので機会がなかった
あの日もいつもと同じように三人がパーティに行くために馬車に乗るのを見届ける
「私達は出掛けてくるから」
「部屋の掃除をお願い、あと買い物も」
「じゃあ私たち行ってくるからよろしく」
今日は押し倒されたあと少し踏まれた
足元を見るとスカートが汚れている、今日もまた一日が始まると思うと気が重くなった
昨日はお姉さんに
「表情が無いからまるで人形をみているようだわ」
と笑われた
昔はもっと笑っていた、笑えた筈なのに今は笑うことが出来ないと思うと自分はもう駄目かもしれないと思い始める
すると上から声が聞こえた
「大丈夫ですか?」
声のした方へ顔を上げると
男の人が立っていた
誰に話しかけているのかな?
…目があっていると言うことは私かな?
「え?私ですか?」
人に心配されるなんていつぶりだろう
「いやいや、さっき踏まれてたでしょ?」
「はい、そうですけど…」
別にこういった仕打ちにはもう慣れてしまっているからどうってことはない
すると男の人は頭を掻きながら
「あ~もう何処か怪我してない?」
「い、いや」
心配してくれたのはお母さんぐらいだったしましてや赤の他人に心配されたこなんて無いから戸惑ってしまう
なんでここまで見ず知らずの私を心配してくれるだろう
すると彼は手を伸ばして私を立ち上がらせようとする
「服が汚れてるし、ほら」
服に付いてる汚れを叩いて落としてくれている
「なんでこんなことしてくるの?
「いや…だって汚れてるしそのままだといやでしょ?」
この人は多分凄く恵まれた環境で暮らしていたのだろう、って私はこの時に思った
子供は基本親に教わった事にもとずいて動くからきっと彼の両親はとても彼に優しいのだろう
私も一度そんな家に暮らしてみたいな
毎日朝起きて洗濯をしたあと朝食を作り食器を洗ったあと洗濯物を取り込んで買い物に行く
お姉さん達が帰って来たら夕食の準備をして掃除をして、そこから自分の時間になるけどもう夜遅いし朝は洗濯するから寝なくてはいけない
これが私の日常で、誰も私に話しかけてくれなければ心配もしてくれない
「こんなことされた事無い」
「されたことないって言われても、ほら立ち上がって」
私は伸ばされた手に自分の手を重ねた
彼は色々な事を言ってきたけど一番驚いたのは私の雑用を手伝うって言ってくれたことだ
でも目を見ると本気て言っていることがわかる
「特に理由があるわけ無いじゃないよ。でもやることにいちいち理由考えてたらめんどくさいし何も出来なくなるから。だから、理屈で動くことは止めただけだよ」
嬉しかった
これまで一人だったから誰かが一緒に居てくれることが凄く嬉しい
けど、彼の顔が赤くなっている
「顔が赤くなってるよ?大丈夫?」
「今良いこと言ったじゃん!?そこら辺は言わないのが気遣いでしょ!?」
この人は別に悪い人では無さそうだ
「ん?そうなの、ごめんなさい」
「俺の名前は斎藤博人、よろしく」
「私はエラよ、よろしくね」
ここから私と博人との物語が始まった
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