第4話 得た物と代償

エラとの待ち合わせ場所

 「おはよう、エラ」

 「おはよう、博人」

 そこでエラの服装に目がいった

 「来てくれたんだ、うんよく似合ってる」

 「あ、ありがとう」

 無表情だが照れてるのか頬が少し赤い気がする

 「は、早く行こう」

 恥ずかしがってる姿が可愛いと思ったのは秘密で

 ―――――――――――――――

 「今日の買い物は終わり」

 相変わらず無表情で言ってくるな

 「今日はどうする?」

 「今日はちょっとお出かけしたいな」

 「どこに?」

 いったいどこに行こうというのだね!!

 「街を少し出たところに行きたいの」

 「ん、行こうか」

 ……あれ?今更ながら俺って凄い事してない?

 ――ふと、隣にいる銀髪の少女を見てみる

 「どうしたの?」

 うん、可愛い

 「いや、なんでもないよ」

 ちょっと上擦った声が出てしまった

 てか本当に今更だけどエラって世間一般的に見てみても無表情ではあるが顔が整っている

 つまり美少女と言っても過言では無いだろう

 ……なんでそんな子と一緒に街歩いたりしてるの俺?どうしたのモテ期ですか?

 「本当に大丈夫?無理してない?」

 へ、平常心平常心だ

 「だ大丈夫だじょ」

 「だじょ?」

 か、噛んだーー!!いやー!!

 「顔が真っ赤だけど」

 「本当に大丈夫だから!気にしなくて大丈夫だから!」

 落ち着く為に、昔の事をとっさに思い出した…

 ―――――――――――――――

 これは四年前、高校一年生の時の思い出だ

 当時俺には佐々木と言う友達がおりよくそいつと一緒に遊んでいた

 八月の夏休みに佐々木が

 「斎藤!プールに行かないか!」

 こいつは突拍子も無くいきなり言ってくる

 「え?俺泳ぐの苦手なんだけど」

 「え?泳ぐの?見るんじゃなくて?」

 プールで何を見るんだよ

 「きまってるだろ?おっぱいだよ」

 「おうおう落ち着こうか佐々木君、プールはそんなことする場所出はないぞ?」

 「え?違うの?おっぱい見ないの?」

 「エロガキかて」

 「でも揺れてたら見るだろおっぱい」

 揺れるものには目が行きます

 「もうおっぱいから離れろよ…」

 そしてなんだかんだプールに来てしまった

 「なぁ斎藤、俺小学校の時にカタツムリやってたんだ~」

 「カタツムリ?なにそれ?」

 「プールの中で体育座りすると体が横に浮くんだけどそれがカタツムリの殻に似てるからカタツムリって呼んでる」

 なるほど、でもそれ何が楽しいの?

 「それ、やるとどうなるの?」

 「世界が横に見える、つまり水中の水着を見放題!!」

 こいつはもう救えないかもしれない

 この時、事件は起こった

 カタツムリをした佐々木の海パンに別のこの子のビート板が刺さりケツが丸出しになってしまった

 それだけならまだ良かった、いや良かないけど

 足が地面に着いてないからそのまま回転してしまった

 ビート板が刺さりながらケツを丸出しにして回転している佐々木はなんと言うか哀れだった

 まあ自業自得だろ

 佐々木と俺はビート板をケツから抜いてそのあと直ぐにプールから出て帰った

 ―――――――――――――――

 …あれ、すごかったぁ

 その光景を思い出したら驚く程冷静になった

 「さて、行こうか」

 「う、うん」

 若干戸惑っているようだけど気にしないでいこう

 街を少し出たところにあったのは小さな墓地だった

 エラは墓の前で屈んでいる

 「ここはね、私のお母さんのお墓なの」

 お母さん亡くなってたのか…

 「お母さんはね、いつも優しくしてくれたんだ、一緒に散歩してくれたり、毎日が楽しかった」

 「でも今のお母さんは私に厳しいんだ、最初は優しかったんだけどあとからだんだん厳しくなってきて、いつも一人で雑用させられてて本当は凄く辛かった」

 エラが立ち上がる

 墓には来たときには無かった花束が供えられている

 「でも――今はね、博人が一緒に居てくれるから毎日が楽しいんだ」

 とエラは少し笑いながらこちらに振り返った

 拝啓、現世に生きている妹よ、兄の死因は尊死です

 「こんな毎日がずっと続いたら良いな」

 尊さに抗えずエラの頭を撫でてしまう

 「うん、そうだね」

 少しくすぐったそうにしながらエラは答えた

 ―――――――――――――――

 その日を境に少しずつ本当に少しずつだがエラに表情が出てきた

 「なんでエラには表情が無かったんだろ」

 エラと別れた後にふと思った

 「元々表情を表に出さない性格なのかもね」

 「なるほど?」

 なんだろう、デジャブを感じる

 「なんでここに居るんですかねユノさんや」

 「いや、別に会いたいとか、心配とかしてた訳じゃないからね!?」

 この子だんだんポンコツになってきてませんかね

 「へーそーなんだー」

 目を細めて目線を合わせると直ぐにユノは目線を反らしてくる

 「別に悪気がない事を踏まえてこれから言う言葉を聞いて」

 彼女はさっきまでのポンコツオーラから切り替えて真面目な表情をしていることからこれから言う言葉は余程重要な事なのだろう

 「彼女とはあまり会わない方が良いわね」

 分かっている、これは彼女の本心出はないことはわかっているんだ

 エラの微笑んだ表情が脳裏をよぎる

 「なんで、なんでなんだよ…」

 「それはね、このままだと、本来あるべき道から遠ざかってしまうからよ」

 「でも、エラはやっと表情が出てきて!この前だって楽しいって言ってくれた」

 『毎日が楽しいんだ』という言葉を言うエラがふと頭に浮かんだ

 「だからそんな悲しいこと言わないでくれよ、それもよりによってユノが」

 「私だってこんな酷な事を貴方に言いたく無いわよ!でも、そうじゃなきゃ彼女はずっと独りになるの!」

 !!

 「あなたあくまでも依頼なのよ!?それを忘れてないで、達成までの期間限定でここに居られるのよ?」

 「別れたあと、苦しくなるのは彼女よ!その事を忘れないで」

 俺何も考えてなかったのは俺だったのか

 「ごめんユノ、何も考えてなかったのは俺の方だった」

 「こちらこそごめんなさい、貴方にも辛いこと言ったわね、もっと言いようがあったかも」

 「これからはエラと会うのは控える事にする」

 この時なんとなくだが、エラという人物はこの世界にどのような存在なのか解ったような気がした

 ―――――――――――――――

 「エラ、ごめんもう君とは会えないんだ」

 誤魔化してもダメな気がしたからストレートに言った

 「え?」

 「ごめん、詳しくは言えないんだけど、今やってる事が忙しくなっちゃって」

 「な、なんで?」

 「だから、詳しくことは言え「なんで?」…え?」

 「いや、だから会え「なんでって聞いてる」」

 なれ?何か想像してたのと違う

 何かもっとこう、しおらしいのを想像してたんだけど

 「あ、でも少しの間だけだし、頻度が減るだけだから」

 ごめんなさい、誤魔化します

 だって凄く怖いもん、目が特に怖い

 「本当に?少しってどれぐらい?」

 「一週「三日に一日」…はい」

 なんだろう、この逆らったらヤバそうな雰囲気は

 「もし、もしもう会えないってわかったら?」

 「探して捕まえるから」

 本気の目だった

 ―――――――――――――――

 「ごめん、無理だった…」

 ユノに事後報告をする

 「なんでよ!」

 「だって怖かったんだよ!目があれ人殺せるよ?」

 「はぁ…で、どうするのよ(ぶっちゃけるともう収集つかないのよね)」

 「どうするって…どうしよう」

 やばいどうしよう

 ユノの方を見ると目を細めてユノがこちらを凝視していた

 「はぁ―もう本当は収集つかなくなってます」

 「え?」

 もしかして俺失敗した!?

 「まぁ舞踏会に送る依頼は消えてないから送ることにはかわりないけどね」

 「まぁでも3日に一回って話つけたし取り敢えず明日、明後日はこっちにいようかな」

 「いいかもね、そう言うのも」

 「いや、無理か雑用手伝うって言った手前行かないのはちょっとな」

 「変なところで律儀よね」

 呆れた顔でユノが言う

 「よく言われます」

 苦笑いで返しておこう

 「まぁでも手伝うだけにしようかな、そのあとを三日に一回にしようと思う」

 「その心は?」

 「ほら、エラって一人の時間があまり無い気がして」

 「いや貴方さっきまで思ってたこと復唱しなさいな」

 なんかバカを見る目になってきた

 「だってエラって俺以外にも友達が居たら雑用終わったあとの空いた時間俺が居ちゃその子と遊べないと思ってさ」

 友達が居るかはわからないけど、買い物に付いていってる時は普通に街で話しかけられたりしてたから

 悪いようにしてるのはエラの継母と姉二人だと思うし

 「それに、―いつまでも一緒には居られないのがわかってるから」

 やっぱり寂しい気持ちはある

 「彼女が俺が居なくても大丈夫って言うぐらいになれば良いかな」

 笑顔だけど涙で頬を濡らして『今までありがとう』とか言われたい

 「究極的には今までありがとうって言われたら満足かな、いい思い出になれればそれで」

 例えるなら社会人が学生時代の友人を思いだす感覚である

 「それぐらいになったらベストね」

 ユノが頷く

 「取り敢えず今日はもう寝ようか」

 「ええ、お休みなさい、博人」

 「お休み、ユノ」

 俺は控え室もとい自室のドアを開けてベットに入る

 部屋になんとも言えないような違和感が漂う

 具体的なは言えないしそこまで部屋にこだわってないから今まで気にならなかったけどあらためて見ると何かがおかしい気がする…怖いから寝ましょ

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

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