第2話 依頼対象を訪ねて

あれから一ヶ月がたったんだがそろそろ転生を考えている

 「なぁユノ、俺そろそろ「ダメよ、」ええ…まだ何も言ってないじゃん」

 「転生なんてダメよ!博人が行ったらすぐに死んでしまうわ」

 俺はどれほど弱く見られているんだろう

 「いや、どっかの街に下ろしてくれたら大丈夫だから」

 「ダメよ」

 ユノの表情を視ると凄く真剣な顔をしている

 「俺さ、料理人になりたいんだ」

 「うん」

 「昔から料理が好きで色々作ってた」

 「うん」

 「だから転生して「ダメよ」…もしかして俺のこと嫌「そんな事をあるわけ無いじゃない!!そう思われてたら心外だわ!」必死だなぁ」

 行かないで行かないでと腰にしがみついているユノを見て深くため息を着いた…俺いつになったら転生出来るんだろ

 このやり取りは今回が初めてではなくこれで五回目ぐらいである

 「あっ今日の昼何食べる?」

 「う~ん、手早く済ませられるのが良いわね…サンドイッチで!」

 「わかった、作ってくるよ」

 ―――――――――――――――

 サンドイッチ

 まず、サンドイッチパン2枚、バター、ハム4枚、レタス、マヨネーズを用意してサンドイッチパンにバターを塗りレタスは水でしっかり洗って水を切りパンのサイズにあわせてたたんだ後、キッチンペーパーで包んでおく

ハムは半分にカットしてサンドイッチに上下左右に円形が内側になるように2枚づつ置く。これを2セット作る

 最後に畳んだレタスの中にマヨネーズを適量入れてハムにのせ、チーズを上にのせたあと挟んで完成

 ―――――――――――――――

 「出来たぞー」

 「ありがとう」

 「今日はハムのサンドイッチでございます」

 ユノは目をキラキラさせながらサンドイッチを見つめている

 ここまで喜んで貰えると作ってくれた側としても嬉しい

「頂きます!…美味しい」

 幸せそうな顔で何よりです

 「あれ?そう言えばこの書類に書いてあるのは何なんだ?」

 「ああ~これは…確か依頼ね」

 「依頼?」

 「そう、依頼ね、この人を助け無くてはいけないらしいのだけれど」

 「ええと、『エラを無事に舞踏会へ送る』これ簡単なのか?」

 「物によるわね、簡単なのもあるし難しいのもあるわね、今回は簡単なやつかな?」

 「俺行っても良い?」

 「ダ、ダメだわ」

 「頼むよ、一ヶ月外に出てないって結構こっちとしてはきつくて」

 「私の事がそんなに嫌なの?」

 「そんな事は無い!お世話になってるし、むしろ好きなぐらいだよ」

 「良かった…」

 「いいわよ、行っても」

 心なしか凄いキラキラしてらっしゃる

 「良いのか?」

 「ええ、でも気を付けて、干渉し過ぎちゃだめよ」

 ?

 「大体こういう人は世界の重要人物だからあまり干渉しちゃうと本来有るべき未来とは違ってしまうから」

 「そうすると…世界が壊れるとかするのか?」

 「いえ?そんなことは無いわよ?ただ、話が変わってしまうだけ」

 まぁ大丈夫でしょうけどと言いながらこちらに向かってくる

 「気を付けてね?本当に」

 「大丈夫だよ、ちゃんと帰って来るって、しかも送るだけだよ?直ぐに帰ってくるよ」

 「本当に?」

 こういう、涙目で見上げてくるのは反則だ

 「帰ったら美味しい料理何か作るよ」

 「期待して待ってるわ…行ってらっしゃい!」

 ユノが笑顔で言ってくる

 「行ってきます!」

 だから笑顔で俺も返した

 ___________________________

 「行ってしまったわ…」

 私は彼の居なくなったところを見て呟いた

 酷く寂しくなるのを感じる、今ままで感じた事の無い感情だ

 ずっと案内しかしていなかったからこんなに人と接する機会など無かったのだ

 「お腹すいたなぁ」

 いつもなら博人が作ってくれる

 が今はその博人がいない

 「早く帰って来てよね…」

 彼女は誰もいない空間で机に突っ伏していた

 ―――――――――――――――

 目を開けるとそこは中世の街中だった

 周りを見ると紳士服を来ている男性やドレスを着た女性、馬車などがある

「まずはエラを探さないと」

 街中をひたすら歩いていくと一人だけ銀髪の女の人がいる

 綺麗な青目をしている

 周りのみんなは茶髪や金髪が多いのに珍しいなんて思いながら見ていると突然家から出てきた人に押し倒された

 中から三人の美女が出てくる

 「私たちは出掛けてくるから」

 「部屋の掃除をお願い、あと買い物も」

 「じゃあ私たち行ってくるからよろしく」

 三人は家の前に停まっている馬車に乗って何処かへ行ってしまう

 「大丈夫ですか?」

 「え?私ですか?」

 銀髪の少女は無表情でこちらを見つめる

 「いやいや、さっき踏まれてたでしょ?」

 「はい、そうですけど…」

 なんで『それが?』みたいに顔を傾けてるの?

 「あ~もう、何処か怪我してない?」

 頭を掻きながら少女に近付く 

 「い、いや」

 …あれ、俺はこの子を気遣ってるんだよね?なんで恐怖の対象みたいになってるんだ?なにげにこちらにも精神的なダメージが入るんですけど

 「服が汚れてるし、ほら」

 地面に倒れていたから結構汚れている

 「なんでこんなことしてくれるの?」

 「いや…だって汚れてるしそのままだといやでしょ」

 というかこの子ずっと無表情で

 顔立ちが良いから余計に怖い青い目なんてこちらを凍らせるが如し眼光を放っている

 「こんなことされた事無い…」

 「された事ないって言われても、ほら立ち上がって」

 「うん、わかった」

 立ち上がった。

 「次は何をしたらいいの?」

 「え?」

 「だから次は何をしたらいいの?」

 「いや知らないけど、服の埃とか払ったらいいんじゃないかな?」

 「そう、わかった」

 埃を払った

 「いつもはどうしてるんだ?」

 「姉さまから頼まれていつも掃除や買い物をしてる」

 「それ以外の時は?」

 「洗い物や洗濯」

 う~ん、これはあれかな?召し使いかな?

 「雇われてる?」

 「いいえ、雇われてない、姉ですもの」

 こきつかわれすぎじゃありませんか?

 「その間姉は何をしてるの?」

 「舞踏会やパーティーへ出掛けてる」

 「行きたいとか思ったことは?」

 「何度かあったけど、ドレスとか私は持ってないし、似合わないから」

 「でも、思ったことはあったんだろ?」

 「あったけど、それに今は時間が無い…だから行けない」

 「時間があれば行くの?」

 「え?」

 「俺が手伝ってやる」

 「なんで?お互い名前だって知らないのにそこまでするの?」

 「特に理由があるわけ無いじゃないよ」

 人と話すときはまず話す人の目を見なきゃ伝わらないって誰かが言ってた

 「でもやることにいちいち理由考えてたらめんどくさいし何も出来なくなるから」

 「だから、理屈で動くことは止めただけだよ」

 ちょっとくさいな、てか言ってる自分の顔が赤くなるのがわかる位に熱い

 「顔が赤くなってるよ?大丈夫?」

 「今良いこと言ったじゃん!?そこら辺は言わないのが気遣いでしょ!?」

 さらに赤くなりそうですやめてください。

 「ん?そうなの、ごめんなさい」

 …謝らないで、顔から火が出そうです

 「俺の名前は斎藤博人、よろしく」

 「私はエラよ、よろしくね」

 「よし、取り敢えず手伝うよ、そうすれば自分の時間が出来るだろ?」

 

 「本当に良いの?迷惑じゃない?」

 「大丈夫だよ、迷惑なんかじゃないから」

 「…ありがとう、まずは――」

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

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