第7話 転校生のお願い(2)
椎葉の家出ということに関して俺はそこまで驚かなかった。取り敢えず伝えるべき事を伝えることにする。
「椎葉、そんな大声で言うと詩織の部屋まで聞こえるぞ」
「あっ、すみません……」
椎葉は考えていたのか少し黙っていた。
「柊くん、なんでそんなに落ち着いてるんですか?」
俺の様子が気になったようで質問してくる。
「いや、驚いてはいるぞ顔に出ないだけだ」
さらっと嘘をつき椎葉の質問を終わらせる。
「で、なんでお前は、家出してきたんだ?」
俺は、家に泊めるかどうかを考える為に家出の理由を聞いてみた。
「それは……」
椎葉は答えづらそうに言葉を詰まらせている。俺はしょうがないと思いながら椎葉に俺の答えを伝える。
「分かった、しばらくは泊めてやる、取り敢えず泊まる用意とかはしてあんのか?」
「えっ、いいんですか?」
「泊めろって言ったのは椎葉だろ、それに俺も言いづらいこと聞いて悪かったな」
「いえ、それはそうなんですけど、聞かれるのも当然だと思いますし……」
「人なんだから誰でも言いたくないことの1つや2つあるだろ、それを聞いた俺が今回は悪かったんだよ。そういう事にしとけ」
「分かりました…」
椎葉は渋々ながらも納得したようなので詩織を呼んで夕食の準備をすることにする。
詩織の部屋の前に移動し、ドアをノックするとすぐに中から詩織が出てきた。
「はいはーい、もう話は終わったの?」
「あぁ、取り敢えず夕飯作るから手伝え。今日は3人分だ」
「ん、分かった」
詩織は何も聞かずに返事をしてくる。
(後で、説明はしないとな)
「それでお兄ちゃん今日は何作ろうか?」
「3人分になったし作りやすいオムライスでいいだろ。あとはサラダくらいで」
「分かった〜」
俺と詩織が夕食の準備を始めるとリビングにいた椎葉が俺の方に近づいてくる。
「柊くん、私少し外に出てきても大丈夫ですか?」
俺は準備をしながら答える。
「こんな時間になにしに行くんだ?」
「駅のコインロッカーに荷物を置いてあるのでそれを取りに行きたいんです」
俺の家から駅までは10分程度で行けるのだが時計を見ると今の時間は7時になるかという所だ。椎葉1人で行かせると迷って遅くなる事が容易に想像出来たので俺もついて行くことにする。
「それ、夕飯の後で俺と一緒に行くじゃ駄目か?」
「えっ?それってどういう…」
「椎葉1人だと迷って何時に戻ってこれるか分からないだろ」
「うぅ、それはそうかもしれませんけど」
「あと、遅くなって椎葉に何かあったら大変だろ」
ぐだぐだしてきそうなので本心を伝えることにした。すると椎葉は頷いたあと顔を俯かせながらリビングの方へ戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます