第5話 俺の家族と転校生(1)
「着いたぞ」
椎葉に家というか住んでいるマンションに着いたことを伝えると少し驚いた様子を見せる。
「えっと、ここ、なんですか?」
どんな家を想像していたのかは分からないが、イメージと違っていたのだろう。
「どんな家を想像してたんだ?」
気になったので聞いてみると、
「いえ、マンションだとは思って無かったから」
「なんだ、そういう事か。色々あって一人暮らししてるんだ」
細かい説明をするのは面倒なので詳細な部分は省いて伝える。
「そうだったんですか、理由は聞かない方がいいですか?」
「そう思うなら聞かないでくれ」
「あっ、えっと、ごめんなさい」
普段の会話より低い声で言ったからか、椎葉は俺が不機嫌になったと勘違いしたのか謝ってくる。
「あぁ、悪い別に怒ってる訳じゃないから気にすんな」
「そうですか…」
椎葉が気にしているようなので話題を変える。
「そろそろ中に入るぞ」
「分かりました」
小さな声で返答してきた。そこから家の玄関までは俺達の間に会話は無かった。鞄から鍵を取り出そうとした所で今日が金曜日ということを思い出した。
「あ……」
「えっと、どうしたんですか?」
椎葉が不思議そうにこちらを見てくる。連れてきてしまったのは、俺の失敗だった。どうしようもないので諦めて玄関を開くと。
「おかえりっ!!お兄ちゃ〜〜ん」
「うぉ」
突然、飛びつかれ俺はバランスを崩して後ろに倒れる。上半身を起こし、見てみるとやはりそこには妹の
「詩織、いつも抱きついてくんじゃねぇよ危ないだろ」
「だってぇ、お兄ちゃんに会えるの週末だけなんだもん」
「もん、じゃねえよ取り敢えずどけ、今日は客連れてきたから」
身動きが取れないので詩織にどいて貰うことを促す。
「お客さんってそこで固まってるお姉さん?」
そう言いながら詩織は俺から離れ立ち上がる。俺も制服に着いた埃を払いながら立ち上がる。さっきから何も喋っていなかった椎葉に視線を向けると、何故か椎葉が固まっていた。
「どうした椎葉?すまんな何も説明せずに」
「えっと、そちらの可愛い子は?」
戸惑った様子で聞いてくる。俺は詩織のことを指を指しながら話を始める。
「こいつは俺の妹の詩織だ」
取り敢えず簡潔に紹介を済ますと詩織が口を開いた。
「お兄ちゃんが愛してやまない、妹の詩織です!」
「おい」
まともな自己紹介をするのかと思ったら違かった。
「それって兄妹で好き合ってるってことですか!?」
椎葉は椎葉でおかしな事を言い出したせいで、収拾が付かなくなってきた。
「あぁ!もう取り敢えず中に入るぞ」
そう言いながら俺は2人の手を引いて家の中に入った。その後2人を落ち着かせることが出来たのは10分後の話だった。
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