第4話 転校生との帰り道

俺が昇降口に着いたときには、もう椎葉が見当たらなかった。ついさっき椎葉が言っていた「じゃあ、いいです」は椎葉が袖を掴むことに対してだとは思ったが、先に帰ってしまったのかと思い、俺は急いで靴を履き替えて急いで正門まで移動した。だが、正門に行くまでの間に椎葉を見つけることが出来なかった。頼み事があるのは椎葉の方だから、まだ

帰ってないことを信じて少し待ってみることにした。5分位待っていると椎葉らしき人影が俺の方へ近づいてきた。俺の事を探していたのか息を切らしながら少し怒った様子で文句を言ってくる。

「はぁ…はぁ…なんで、先に行っちゃうんですか!」

「いや、椎葉が先に行ったと思ったからここで待ってたんだが」

「私、方向音痴って言ったじゃないですか」

その言葉を聞いて察しがついた。恐らく椎葉は俺より先にに昇降口に行ったが迷って俺が何処にいるか分からなくなってしまったのだろう。どうしたら学校で迷うのかは分からないが俺の事を探していたことは分かったのだが、俺の言い分を言っておくことにした。

「先に行ったのは椎葉の方だからな」

「うぅ…それは…そうですけど……」

自分の方が悪いということを分かっているからか文句を言ってくるがどんどん声が小さくなっていく。

(はぁ、学校でこの様子じゃ一緒に歩くだけじゃまた迷いそうだな)

そう思い俺は黙って手を差し出す。椎葉は不思議そうな顔で俺の事を見ている。

「迷われる方が面倒だ、一緒に来るんだったら袖掴んでろ」

そう言うと少し迷っていたようだが、すぐに俺の手を握ってきた。

「俺は袖って言ったんだが」

「いいじゃないですかそれぐらい袖も手も変わりませんよ〜」

「やめろ、手を握るな、袖を掴め」

「い〜や〜で〜す」

「はぁ、もういいや、さっさと行くぞ」

俺は諦めて帰ることを促す。

「あ、はい、わかりました」

椎葉の返事を聞いて俺は自宅に向かって歩き始める。しばらく歩いていると手を繋いで歩いているので椎葉の歩調に合わせていたが、俺が椎葉の隣に行こうとすると半歩ほど椎葉が後ろにさがる。

「なんで後ろに下がるんだ?」

不思議に思い椎葉に聞いてみると

「えっと、なんか恥ずかしくなっちゃいまして」と返された。

「恥ずかしいなら手を握るのをやめればいいんじゃないか?」

「それは嫌です」

きっぱり言い切られ手を握ることをやめさせることが出来ないことを確信させられた。

「じゃあせめて歩きづらいから隣歩いてくれるか?」

「うぅ、分かりました」

何故か、椎葉が譲歩したみたいになってしまったが、まぁ仕方ないだろうそうこうしている内に俺達は家についた。

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