第3話 俺の友人と転校生

椎葉が荷物を教室に置いてきているということなので少々、面倒くさいが一緒に取りに行く事になった。

「......」

「......」

さっきまで話していたのが嘘のように俺と椎葉の間には会話がなかった。俺からは話すことがないので、会話が無くなるのは当たり前といってしまえば当たり前なのだが、ここまで静かだとさすがに並んで歩いているのに様子を見た人は何かあったかと、勘違いするかもしれない。まぁ何かあるにはあったが、それを誰にも知られないようにしたい俺は、何でもいいから話題を考えていた。教室の前まで来たところで後ろから声を掛けられる。

「優と椎葉さん?何やってんのこんなとこで?」

振り返るとそこには新聞部に所属している友人の風見渚かざみなぎさがいた。何でこいつと仲良くなったのかは忘れたがとりあえず友人の一人である。

「別に、椎葉が迷ったらしいから案内してただけだ」

「あれ?まだ椎葉さん、まだ迷っちゃうんだね、もうちょっとしっかりしてると思ってたんだけど」

「いや、しっかりしてるかと迷うのは関係無いと思うが?」

と言葉を返すと、

「冗談にマジな返答しないでよ~、だから優は面白くないって言われるんだぞ」

なんて事を言ってくる。

「私、実は方向音痴なんです。学校の中でも迷ったりしちゃうんです」

と椎葉は椎葉で真面目に答えてしまっている。このままだといつになっても椎葉との話ができないので話を打ち切ろうとすると、渚が何かを思い出したように小さく「あっ」と声を漏らした。その後に

「ごめん、僕テニス部に取材に行くとこだったのすっかり忘れてたよそろそろ行かないとだからまた明日ね」

と続けて言ってきた。

「そうか、じゃあまた明日な」

「またね、風見くん」

俺と椎葉は風見に声をかけてようやく帰れる状態になった。俺は椎葉に荷物を取りに行くことを促す。すると椎葉は教室の中に入ってから10秒程で出てきた。

「それじゃあ、行こう」

そう声をかけて俺が歩き出すと、何も言わずに椎葉が俺の制服の袖を掴んできた。様子を見るために振り返ってみる。すると椎葉が

「私は、方向音痴なのでこうさせてください」

と小さな声で言ってきた。俺はその言葉に対してこう答えた。

「屋上から教室まで迷わず俺に付いて来れたんだから大丈夫だろ」

すると椎葉は「じゃあ、いいです」

と言って俺の袖から手を離して一人で下駄箱の方まで行ってしまった。

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