第2話 転校生のお願い(1)
明日葉との通話が終わり、椎葉との話もとい椎葉からの頼みを聞くことができるようになった。携帯をマナーモードにしてからズボンのポケットにしまってこれ以上話が進まなくならないようにした。その後、椎葉を見ると少し不機嫌そうだった。
「
小声で何かぶつぶつと何かを言っていたが、よく聞き取れなかった。
「すまん、話の途中で」
と明日葉からの電話で話を遮ってしまったことを謝る。すると椎葉は
「えっ、あっ、うん、大丈夫。じゃあ話しても大丈夫ですか?」
と聞かれ俺は首を縦に振る。
(これでようやく話が出来るな)
と俺は思いながら椎葉の事をしっかりと見る。
「実は、私を柊くんの家に泊めて欲しいんです」
俺は、耳を疑った。先月、転校してきた椎葉に突然、「あなたの家に泊まらせて欲しい」なんて言われたら、自分の耳を疑うしか無いと思う。俺は一応確認のために椎葉に問い返す。
「すまん、椎葉、確認のためにもう一度同じ事を言ってくれないか?」
俺は聞き間違いだと願っていた。当然、聞き間違いなんかでは無いと分かってはいたが、少しでも希望を持っていたかった。
「えっと、それはいいですけど、私だってこれ言うの恥ずかしいんですから、しっかり聞いてくださいね」
椎葉の頬が少し赤くなっていることに気付いた。本当に恥ずかしいと思っている様なので聞く態度を改める。
「じゃあ、もう一度だけ言いますよ?私を柊くんの家に泊めて欲しいんです」
少しの間、二人に静かな時間が流れる。
「やっぱり、聞き間違いじゃなかったか」
そう言葉を漏らすと
「聞き間違いだと思ってたんですか!?」
と椎葉が驚きの声が上がる
「というかどこが大したお願いじゃないんだよ!!」
俺は思わず言い返してしまう。すると
「うぅ、そんなこと言われたってしょうがないじゃないですかぁ~」
と言いながら椎葉はいじけてしまった。その様子を見てさすがに言い過ぎたと思った俺は、椎葉のお願いについて詳しく聞くために喫茶店にでも移動しようということを提案すると、椎葉から少し潤んだ目で「柊くんの家じゃダメですか?」と言われた。
俺は迷った、一人暮らしの男の家に椎葉のような女子を連れていくのはさすがにまずいと思った。だが、教室で話しづらいと言って二人きりになれる屋上でこの話をしているのに、喫茶店のような誰が聞いているか分からないところに言って学校のやつがいたら面倒になると思ったので、仕方なく俺は家に椎葉を連れていくことにした。
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