第9話 私に近づかないで…

玉緒は美魅の言葉が気になっていた、そりゃ分かりやすい本を見つけてもらったはいいが、あの態度と仏頂面はまるで人を避けている感じ全開だ。

「ん~何かほっとけないきがする」

玉緒は別に美紀に恋愛感情などを感じてる訳ではなく、何だか昔の狐の妖怪(正確には半妖)とバレて周りから完全に君悪がられていた頃に何となく似てる気がしたからだ。

玉緒はその後も図書室へ向かい美紀を探した、本を口実だが。

「先輩」

美紀を見つけた玉緒。

「…」

あからさまに嫌そうな顔をする美紀。

「また本教えてくださいよ!」

「…君さ…」

「ん?」

「一体何なの?私に恋でもしたわけ?」

「えっ!?」

美紀のいきなりの予想外の反応に驚く玉緒。

「いや!そんなんじゃ」

「女の子をいちいち話しかけてさ…君何なの?ただの噂通りの女好きなわけ?」

えっ!そんな噂ながれてるわけっ!

そりゃ、撫子も美玲もすごい可愛い。

その二人に言い寄られていれば噂は立つが、玉緒は学校ではそんな噂が一人歩きしてる事を知らなかった。

「ち!違う!俺は!」

「近づかないでっ!」

美紀が玉緒を突き飛ばすと、玉緒はあり得ない力で吹き飛ばされた。周りにの本棚は倒れ続け本や机はめちゃくちゃになる。

ドカーン

玉緒は窓際の机まで吹っ飛ばされた。

「きぃ~いててて!何だ今の力!」

玉緒が起き上がり美紀をみると彼女の目の周りに赤い模様とおでこから何やら角の様な物が生えていた。

「先輩…?」

「っ!…その…私…ごめんなさいっ!」

美紀は涙を流しながら図書室を出て行った。


「いててて」

玉緒は美玲と撫子にさっきの怪我を治療してもらっていた。

ちなみに今は夏目神社の離れ撫子の家に居る。

「玉緒一体どうしてあんな傷だらけだったのよ」

「ちょっとな」

「玉緒くん図書室でこうなったでしょ」

ギクリ

「何で分かった….」

「図書室があんな有様で玉緒くんが傷だらけ、大体察しがつくよ」

さすが撫子鋭かった。

玉緒が気になり跡をつけた撫子が玉緒を見つけて連れてきたのだ。

保健室の方が本来はいいのだが、あの有様を見たら保健室よりも自分の家の方がいいと踏んだ。おまけに身体中の怪我だ、下手に妖怪と勘付かれるわけにもいかない。

学校では正体を知られるはタブーだからだ。

「あの先輩にやられたのね!」

「いやあれは!」

「図星なんだね」

笑いながらなんか黒いオーラを放つ撫子。

「…はい…」

玉緒は白状した。

図書室で美紀に吹っ飛ばされ、彼女がまるで鬼みたいな容姿になった事まで。

「馬鹿みたいな怪力で吹っ飛ばされた?」

「ああ、ありゃ人間じゃないよな」

「玉緒その人どんな姿をしてたの?」

美玲が玉緒に聞く。

「うーん…一言で表すなら…鬼かな」

「鬼!?まさか…」

「美玲ちゃん何か分かるの?」

「玉緒…その先輩やばいわよ…」

「え?何で?」

美玲が顔を青ざめている。

「黒崎先輩は…鬼よ…」

「いや鬼みたいって話で」

「違うわよっ!」

美玲は声を上げた。

「え…」

「玉緒…黒崎先輩は本物の鬼なの…彼女は鬼族よ!」

「マジで鬼なのかっ!」

「鬼族は妖怪の中でも一二を争う怪力を持つ種族よ!」

美玲は語る。

鬼族は恐ろしい怪力を持ち主に山や島に住む妖怪で人里に現れる事はあまり無く妖怪や人とも滅多に交わらない種族らしい。

それは桃太郎や赤鬼の話から察するに鬼は人とは関われないのだろう。

「そんな種族が学校の生徒にいたなんてね」

「鬼族は人にかなり嫌われてる種族だからね〜私達みたいに人間ベースで溶け込んでいるなんて」

今の世の中は妖怪は認知はほぼされておらず、姿を表せば必ず騒ぎになる。

だから、今の妖怪の大半は姿を変えて溶け込んでいるのだ。殆どのが人間ベースで逸話にある姿を今は殆どとっていないから正体はほぼバレない。

(でも先輩は泣いてた…!)

俺は確かに無神経だったかもしれない…

でも、先輩は泣きながら謝りあの表示はどう見ても怯えていた。

「玉緒?」

「玉緒くん?」

「先輩は…あの力を鬼の力を怖がってたんだっ!」


次の日の夕方、玉緒達3人は図書室へ走る。

だが、図書室は昨日の一件で立ち入り禁止になっていた。

「こりゃい居ないわね…」

図書室を除くと無残にも壊れた机や本棚、ボロボロになった本が散乱している。

学校側も手を焼いているようだ、妖怪の仕業なんて今時誰も信じやしないし、それにいると判っていても口に出せない。

だから、部外者の犯行と言う事になり今騒がれている。

「凄い事になってるね…」

「おい!誰かいるぞ!」

玉緒は立ち入り禁止の図書室の片隅で誰かが佇んでいるのを見つけた。

「先輩!」

玉緒は美紀に声をかける。

玉緒は美紀が本当は自分の力を抑えきれず誰かを傷つけてしまった事を後悔しているのかもしれないと思った、かつての自分と同じだと思い。

もしそうならあの素っ気ない態度や仏頂面にも納得がいく、玉緒は美紀を何とか助けてやりたいと思う。

撫子も美紀も賛同し付いてきた。

「!?」

美紀は玉緒を見ると立ち上がりそのまま鬼化し走り出し、入り口の3人を蹴散らし図書室を出て行く。

ドアも壊して…

「いてて…やっぱ鬼なんだな」

「あの馬鹿力間違いなく鬼族よ」

「二人とも先輩を追いかけなきゃ!」

「私が先回りするから!」

美玲は羽をだすと窓から飛び去る。

「見つかるなよ美玲!よし俺達も行こう」

「うん」

玉緒と撫子も美紀にの後を追いかけた。

美紀は周りを気にせず走ってるせいで走った足跡がくっきりとめり込んで出来ていることに気付かなかった。

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