第8話 その冷たさ鬼のごとし
美玲が転校してきて少し経った頃、学校で小テストが始まった。
プシュー
高円寺玉緒は頭から煙を出していた。
玉緒は割と勉強は出来る方なのでこんな頭を悩ませるような事は無いはずだが。
「んー目がチカチカする」
玉緒は読書が何故か苦手だ。
それ故に国語や古文なども文章系の成績だけはあまりよろしくないのだ。
おかげで追試だ…
「玉緒大丈夫?」
「文章だけは無理だ」
「でも他の教科はいいじゃないですか!私なんか英語と数学がダメで」
「私なんか英語だけよ!」
美玲は胸を張る。
「張る胸はあるのはわあったから押し付けるな」
玉緒は真っ赤になりそう言った。
「美玲ちゃん!そんな事をする暇あるなら英語やって下さい!」
撫子は美玲を引っぺがしそう言った。
「いいじゃないの減る物じゃないし」
「好感度が奪われます!」
「いいじゃない!よこしなさいよ!」
「いやです!」
こら人の頭の上でもみ合うな。
「重い…」
「「馬鹿!」」
「いて!」
玉緒は二人に小突かれた。
放課後、玉緒は図書室へ向かう。
せめて読みやすく分かりやすい本でならし追試に備えようとしていた。
「図書室なんて久々だな」
玉緒が図書室に入るとほぼガラガラだった。
「あれ?人いないな」
玉緒が受付に行くと、そこには黒髪で眼鏡をかけた文学少女っぽい女子がいた。
「あの~」
「なにかしら?」
少女は読んでいた本を畳む。
「あの俺本読むの苦手で、何か読みやすい参考書ってあるかな?」
「……」
少女はじーっと玉緒を見る。
「あ、あの?」
「あるわ…付いてきて」
少女は立ち上がり玉緒を案内した。
「この参考書なら読みやすいと思う」
少女は一冊の本を棚から取り玉緒に渡す。
「ありがとう、えーと…」
「黒崎よ…黒崎美紀…」
「黒崎か…俺は…」
「高円寺玉緒くんでしょ…」
美紀は答えた。
「有名だからね…烏杜さんと夏目さんに好き好き光線出されてる…」
「 なんだそりゃ…」
「有名な噂よ…後、私は二年生よ…後輩くん…」
美紀はそう言うと受付に戻った。
放課後、玉緒達は夏目神社の離れの撫子の家で勉強会をしていた。
玉緒は美魅から勧められた参考書を読んでいた、玉緒は読書は苦手だが本は読みやすく分かりやすくて勉強が進む。
「玉緒その参考書わかりやすいの?スラスラ問題解いてるけど」
「まあな」
正直、参考書でこんな勉強が進むとは思わなかった。
「黒崎先輩が勧めてくれた本読みやすくてわかりやすいんだよな」
「黒崎先輩!?」
「撫子知ってんの?」
「うん、あの人夕方誰もいない図書室でいつも本を読んでて、しかもかなりの仏頂面で素っ気ないって聞いたけど」
黒崎美紀は学校で成績は全教科満点が当たり前の秀才で勝つ眼鏡美人と言われているが、とっつきにくくかつかなり仏頂面と言われている堅物な女子生徒という話だ。
「そんな堅物な人が俺に本を勧めてくれたのか?」
玉緒は美紀は何だかミステリアスな雰囲気を持つ美人だと思った。
「いでで!」
玉緒は美玲と撫子に両方からつねられる。
「何すんだよ!」
「いま何か腹たつ事考えたでしょ!」
「他の女の子の事考えたでしょ!」
何で分かった!?
次の日の放課後、玉緒はまた図書室へ足を運ぶ。
玉緒が図書室へ入ると、黒崎美紀が受付でまた本を読んでいた。
「先輩」
「?ああ…」
美魅はまたじーっと玉緒を見る。
「何?」
「あ!また本を選んでもらおうと思って!本苦手だけどこの本凄い読みやすかったから」
「…別に…いいけど…」
美魅は本棚へ向かう。
「なあ先輩は本好きなんすか?」
「…別に…」
「え?だってあんな読みやすい本知ってて」
「本は私を…避けないから…」
美魅はそう言うと本を取り玉緒に押し付けて立ち去った。
玉緒は美魅の言葉が気になっていた、そりゃ読みやすい本を見つけてもらったはいいが、あの態度と仏頂面はまるで人を避けている感じ全開だ。
「ん~何かほっとけないきがする」
玉緒は別に美魅に恋愛感情などを感じてる訳ではなく、何だか昔の狐の妖怪とバレて周りから完全に君悪がられていた頃に何となく似てる気がしたからだ。
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