123話 チェルノボーグ
「なッ……自爆!? というか、今あいつ……」
爆発の瞬間、ヤツは言葉を発した。
腕を無理矢理に引きちぎろうとするN2に対し、『くれてやる』と。
かつて襲ってきた黒の機械達とは違う。
ピノやN2達と同様に、はっきりと流暢に言葉を発した。
となると、やはり今回もこれまでと違う別個体とみていいだろう……。
雨が降っているにもかかわらず、爆風の勢いで砂埃が舞う。
そのことからも、小規模ではあるが凄まじい熱量だったことがうかがえる。
噴煙の中から先に姿を現したのはN2だった。
以前暴走状態は解けていない。
獣のように両手を地につけて背から伸びるアームをわなわなと動かし、更なる攻撃を仕掛けんと索敵しているようだ。
N2が何かに気が付き臨戦態勢に入る。
目を向けた方向には、左腕が消失し、欠損部から火花を散らしながらN2を睨みつける敵個体A。
「野郎……NO1になんてもん混ぜやがったんだ……くそが!」
やつは生きていた。
それどころか、言葉の意味は分からないが、まだぼやく余裕すらある。
さっきの爆発は自爆ではなく、N2の拘束から逃れるため……?
N2が再びやつに襲い掛かろうと手足に力を込める。
しかしその直後、睨み合う2体が同時に上空を見上げた。
「ストリめ……ようやく送ってきたか」
やつがそう言うと、空から何か黒い物体が降ってきた。
爪の大きさ程度のサイコロ状の黒い金属が、一つ一つ集まってさらに大きなサイコロ状の物体をかたどっている。
やつはその集合体の内からひとつ手に取り、そのまま口へ放り込んだ。
あの黒いサイコロはやつのエネルギー源なのか?
すかさず片目で覗くが、頭上のエネルギー値は減少を続けている。
いったい何をする気なんだ……。
やつが頭をこくんと動かし、サイコロを飲み込んだような動作をした直後、欠損したはずの左腕がみるみるうちに生えていった。
しかも元の大きさよりも増している。
続けて、治った方の腕でサイコロを更に数個口に放り込む。
「おいクソ野郎……おめえのことだよ、人間。ここまで生きた褒美だ、記念に変えようのない事実を教えといてやる」
俺の方を真直ぐ見つめ、背中からアームを4本生やしながらヤツが言う。
「俺様はオフィサーメンバーの一人、製造担当チェルノボーグ。どんなにあがこうが、おめえらはこの星からはぜってえ逃がさねえ」
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