113話 レイ様のお役に立ちたいのです
日の出と共に出発し、グレの背で揺られながら昨夜の経緯をN2から聞いた。
俺はいつの間にか寝てしまっていたが、昨日現れた狼はN2のおかげで動ける程に回復し、夜中の内にどこかへ行ったらしい。
「なるほどな。元々N2とラズが決めたことだし、俺は気にしてないよ」
気にしていないどころか、むしろ安心した。
一緒に連れてくなんて言い出したらどうしようかと思っていたくらいだ。
しかし、これで狼の目的は完全に分からなくなってしまった。
勝手な憶測ではあるが、黒い生命体が何故あんな生物を作ったのかも謎のままだ。
こんな広い星で遭遇したんだ。
昨日の狼のような、体が金属で出来ている生命体が他にもいる可能性だってある。
分かってはいたが、ただ水源へ向かうだけという旅にはならなさそうだ。
「レイ様、レイ様っ。少しご相談があるのですがっ」
N2が連れているカブト虫を気にしながらも、ピノが控えめに話しかけてくる。
「あのですね、ピノはもっとレイ様のお役に立ちたいのです」
「いやいや、もう十分ってくらい助かってるよ。ピノがいなかったら、今頃N2に何食わされてるか……」
「ありがとうございます。でも、そうではなくて、戦闘面に関しての相談です」
ピノは真面目な顔をしながらそう聞いてきた。
「以前ピノが寝ている間にN2とラズが戦った黒い機械は、とても強かったと伺いました。聞いた情報から察するに、今のピノの力ではレイ様をお守りする事は難しいと感じます」
ピノが寝てた時っていうと、ジャングルを焼き、ラズと動物達を襲ってたやつのことか。
「N2とラズにもアドバイスを求めたのですが、二人とも次は自分たちが倒すからと、まともな意見は貰えず……。レイ様なら、何か良き考えをお持ちかと!」
俺なら素晴らしい答えをくれるだろうという眩しい眼差しがピノから向けられる。
確かに……あいつらなら言いそうなセリフだ……。
んん……といっても、ピノの力は見たところ戦闘向きじゃないんだよな。
植物と話せる力に、急成長させる力。
土から栄養を吸収し蓄える力と、植物を分解出来る力。
唯一戦闘向きなのは蔓状の植物を操る力だが、黒い生命体に果たして有効なのかどうか……。
ガソリンをまく大きめのやつには効いたが、N2達と同じサイズの黒い生命体にはあまり効果がないようにも思える……。
そうつまり、ピノが求めているような良いアドバイスは俺からも出てこない……。
目線をピノに戻すと、相変わらず目をキラキラさせながら期待の眼差しを向けている。
こんな可愛い子に、お前は何もしなくていいなんて言えるだろうか。
いや無理だ、むしろそんなこと言うやつは俺がぶっ飛ばす。
「そうだな……じゃあピノにはもっと力を蓄えていてもらおうかな。いつ襲われても最良のコンディションで戦えるように、体調を整えておくんだ!」
俺からそう言われたピノは、ハッとしたように勢いよく返事を返した。
「分かりました!任せてください!」
よ、よかったのかそれで……。
てっきり怒られるかと思ったけど……。
とりあえず俺のアドバイスに納得したピノは、それからよく眠るようになった。
グレが休憩する度に、土に寝そべりお昼寝をする。
騙したようで悪いけど、ピノの気が済んだのならそれでいいか。
ピノの寝る頻度に比例して、N2が寝ているピノにいたずらする頻度も増えたのは言うまでもない。
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