79話 新拠点

 穴の奥からN2が呼んでいる。

 中を覗き込んでもN2の白い明かりがぼんやり見えるくらいで、深さがどれくらいなのかも分からない。


 これを降りて来てと言われてもな……。



「レイ様、お手伝いしましょうか?」


 手のひらで寝ていたピノがいつの間にか起きていて、そう問いかけてきた。


「おはよう。体はもういいの?」


「ええ、お陰様で。ありがとうございましたっ」


 そう言いながら、ピノはきちんと座り直し、深々と頭を下げた。


「いいえ、どういたしまして」



 胸のロゴもしっかりあるし、体色も鮮やかな薄緑色。

 いや、前よりも少し鮮やかさが増しているか?

 何にせよ、ピノも大丈夫そうでよかった。




「早く―!」


 穴の奥から再度N2の声。


 降りる手伝いをピノに要求すると、ピノはコクリと頷き手のひらから飛び降りた。

 そしてそのままシェルターの外へ向かったと思うと、植物の苗を数本抱えて帰ってきた。

 同じ先の読めない行動でも、N2にはちょっと悪いがあいつの時と比べて安心感が違う。


「シェルター内にも植物の種子はありますが、多分下まで届かないので」


 持ち帰った苗を穴の近くに植えながら、ピノはそう言った。

 それから手を苗にかざし、緑の粉を振り撒いていく。


「根を出来るだけ穴の底へ伸ばして」


 ピノがそう言うと植えられた苗がわなわなと震えだし、根を急激に伸ばし始めた。

 地面から伸びた根が隆起し、何本かが穴の方へ伸びていく。


「この子達は地上部の成長は高さ数十センチで止まってしまいますが、根はとても深くまで伸びるんです。これに掴まって下まで降りましょう」


 穴へ伸びた根がぐんぐんと伸びていき、次第に縄くらいの太さにまで成長した。

 何メートルか置きに節がある特殊な形状をしていて、その節を足掛けにして掴まっていれば根の成長に合わせて下まで降りられそうだ。



 ピノを肩に乗せて、穴の中を下っていく。

 3分程かけてゆっくりと降りていくと、下で待つN2の姿が見えてきた。

 穴の底へ到達した根は、着地した部分から朽ちていってる。

 ピノが無理矢理成長させたせいだろう。


 特に危なげなく地下に降り立つと、そこはトンネルのような空間になっていた。

 大きな通路の側面に横穴がいくつか開いていて、それぞれが部屋になっているらしい。


「レイはどの穴に住みたい?」


 ……はじめて言われたワードだな。

 そうか、今からここが俺達の拠点になるのか。


「任せる。けど、大体目途はついてるんだろ?」


「まぁね! じゃあ早速、案内しよう!」

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