78話 星空と宝石
N2達が掘削中の穴へ次々と入っていき、ただ土を掘っているだけでは到底聞こえてこない音が穴の中から響いてくる。
掘った土も地上へ運ばれてこないし、いったい何をしているのだろうか。
穴の中を少し覗くと、そのカラクリが少しわかった。
手順としては、まずミニN2達が固い地面や岩盤を砕き掘削していく。
その削った土をN2が圧縮し、砂や溶かした鉄と混ぜて内壁に塗っている。
塗られた土はそのままだと流れてしまうが、それを防ぐため浮遊する白い玉がレーザーを照射し、熱を加えて固めている。
暫くすると、ミニN2が内壁の材料となる金属や砂を運搬するため地上へとやってきた。
そして穴を覗き込む俺を不思議そうに眺めながら、材料を零しつつ穴の奥へと戻っていった。
作業が始まる前は芋を探すと意気込んでたが、結構きちんとやってくれている。
集中している時のN2は、無駄な動きがほとんどない。
直径60センチくらいの狭い穴ではあるが、このサイズの穴を掘るならこうだ! と言わんばかりの効率性をN2は叩き出している。
動画の早送りのような光景が、穴の中で行われていた。
発想から実行に移すまでの早さ、作業順序の優先度、持てる道具を最大限生かす効率性、どれか一つでも上回れるかと聞かれても、俺には無理だと答えるだろう。
掘削作業の音が遠のき、ずいぶん深く掘り進めたのだなと感じ始めた頃、穴からひょっこりN2が出てきた。
手には不思議な形をした石を持っている。
「どうした? なんだその石」
N2がテテテと目の前まで来て、手に持っている石をパカリときれいに半分に割ると、見事な紫色に輝く石の断面が姿を現した。
不思議な形をした石の中には、宝石が詰まっていたらしい。
そしてN2は半分に割った片方を俺に差し出した。
「あげるー!」
それを受け取ると満足したように穴の中へ戻っていった。
わざわざこれを渡すために出てきたのか。
N2が持って来た宝石は星空の明かりを吸収し、内部で乱反射し美しい輝きを放っている。
こういった天然鉱物には今まで縁が無かったからきちんと眺めた事は無かったけど、悪くないな。
土産に持って帰ろう。
ふとシェルター内を見回すと、宝石内で反射した光が夜空のような模様を描いていた。
宝石の角度を変えると模様も変わる。
まるで自分が星空を描いているような気分だ。
しばらくそうして遊んでいると、穴の奥からN2の声が聞こえてきた。
「レイーー! 部屋割りを決めよう! 降りて来てーーー!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます