77.5話 ドクターとLEチルドレン3 ~ギルと15人の子供達~

「ねぇねぇドクター! 今日はどんなお話を聞かせてくれるの?」


「アタシ、この間の続きが聞きたい! ほとんど水ばかりの星で暮らす動物のお話!」


「ダメだよ! 今日はフィルの番なんだから! フィルはきれいな花を咲かせる植物の話が聞きたいって言ってた! フィル、そうでしょ?」


「こらこら喧嘩するな。そもそも僕は君達に勉強を教えに来てるんだ。お話はきちんと勉強をしてから。いいね?」



「「「はーい!」」」



 ギルフォードの業務は忙しく、毎日顔を出すことは出来なかったが、時々来て話をしてくれる彼を子供達全員が慕っていた。

 そんなことを半年も続けていると、施設の子供達は次第に増えていき、やがて15人にまで増えた。

 子供達の様態はギルフォードの適切な処置と、ボランティア達のお陰でとても安定していた。

 ここまでLEの進行を遅らせることが出来るのならば、きっと治す方法もあるはずと独自に調べてはいたが、都市の医者は戦地に駆り出されているのもあって、調査は困難を極めた。

 子供達に直接病気のことを話したりはしなかったが、全員に変わった目の隈があることから、少なからず自分達には何かあると気付いていたのかもしれない。

 けれど、そんな不安をかき消す程に子供達は良く笑い、よく学んだ。


「さぁ、フィル。今日は君の番だ。どんな話が聞きたい?」


「さっきも言ったでしょ! きれいな! 花を! 咲かせる植物! の! 話だよ!」


「ニアは少し黙っていなさい!」


 ニアは3番目にギルフォードが拾ってきた子だ。

 思いやりがあるのだが、その優しさを押し売りしてしまうのが玉に瑕。


「……ふぃ、フィルは、動物の話でもいいかなー……なんて」


 フィルは引っ込み思案な大人しい子。

 6番目にギルフォードに拾われてここへやってきた。


「よぉフィル、アタシに気ぃ使って言ってんのか? まぁ、さっきはああ言ったけど、たまには植物の話も聞きたいと思ってたところだぜ?」


 ローズは気が強くて口は悪いが、周りをよく見れる皆のお姉ちゃん的存在だ。

 ギルフォードが2番目に連れてきた子。


「なら僕は体の鍛え方を聞きたい! そしたらもっと畑仕事が出来るよ!」


 ジッドは体が一回り大きくて欲張りな子。

 連れてこられたのは11番目だが、元々の性格もあってか物怖じしない、というか空気が読めない。


「なら、の使い方がおかしいぞージッド……。それは個人的に教えてあげるからまた今度ね」


 ローズがジッドの頭を叩き、ここはフィルに譲れとジェスチャーをする。

 空気を察したフィルが小さく口を開き、

「……ドクター。……フィルは、植物の話が聞きたいです」


「うん、いいよ。じゃあこの間研究所に持ち込まれた、静電気を発生させる植物の話をしようか。ある周期で夜中に一斉に花を咲かせるんだけど、これを暗闇で観察するととても幻想的でね。見付けた調査員が言うには…………」












「父さん、お帰り。今日も遅かったね」


「アル、起きてたのか。ただいま。いつも悪いな」


「ううん、今日も僕は母さんとノアをしっかり守ってたよ!」


「偉いぞ! お前がいてほんとよかったよ」


「それでさ、父さん。次のお休みはいつ? 新しく考えた化学反応の実験を一緒に見てほしいんだけど……」


「……あーごめんな……。父さん忙しくてしばらく休みが取れなさそうなんだ」


「そっか……わかった。頑張ってね、体に気を付けて」





 それから数日後、ギルフォードが施設に向かうと、門に数台の軍用車両が止まっていた。


「(なぜこんな場所へ軍が……?)」


 焦ったギルフォードは勢いよく車から飛び出し、門から数分歩いたところにある別荘へ急いだ。

 玄関にはガスマスクと銃を装備した兵数人と、ギルフォードの研究の指揮を執っている大佐が来ていた。


「やぁ、久しいねドクター・ギル。我々の研究を遅らせておいてこんなところに来ているとは、結構な身分じゃないか」


「大佐……どうしてあなたがここに……」


「都市に感染者がいないか定期的にチェックしているのだが、上空から調査したところこの地域により強い反応があってねぇ。我々もまさかこんなところで反応があるとは思ってなかったからね、最初は検知器の故障かと思ったんだが……念のためな?」


「そんな検知器があるなんて、僕でさえ聞いたことがないですよ……」


「そうだったのか? 足らんなぁ勉強が。まぁとにかく、中を見させてもらうよ……」


 ギルフォードの抵抗を無視し、大佐と数人の武装兵はずかずかと施設に上がり込んでいった。

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