34話 くろ の きかい

 熱に弱いピノに対し、N2は平気で炎の壁を越えてきた。

 その後も、冗談を言えるくらい平気で動き回っている。

 N2は暑さの問題はないみたいだ。


「レイ! やつが来るぞ!」


 デカN2に殴り飛ばされた黒い生命体が、ようやく炎の中から出てきた。

 予想はしていたが、これといったダメージは無さそうだ。


「俺が確認した限り、やつは両腕から炎と燃焼性の高い液体を出して攻撃してくる。まだ何か攻撃手段を隠してるかも」


 おーけー! 、とN2。

 デカN2を操り、黒い生命体に再度突進していく。

 しかし今回は、上手く受け止められてしまう。

 やつより一回り大きいデカN2の突進を止めたということは、パワーも相当ある。


 黒い生命体と、デカN2の力はほぼ互角。

 押し合う2体をよそに、肩に乗ったN2は右腕にチャージを始める。

 ひ、卑怯だ。


 N2がエネルギー弾を打つ寸前、黒い生命体が危険を察知してか、押し合うのを止め後ろに飛んだ。


 体制を崩すデカN2。

 放たれたエネルギー弾は黒い生命体を捉えられず、虚空を貫き、後方の地面に着弾した。


 着弾の衝撃で地面は抉れ、周囲が土埃で包まれる。

 相変わらずとんでもない威力だが、これでもかなり抑えている方だ。

 本来なら、辺りが消し飛んでもおかしくない威力がでる。

 多分俺を気遣ってのパワーセーブだろう。


 以前N2が倒した個体は、エネルギー弾を防いでいたのに対し、この個体は回避行動を取った。

 見た目の形状と、攻撃手段なども加味すると、やはり目の前にいる黒い生命体は、以前倒した個体と別の個体とみて間違いないだろう。

 つまり、攻撃を当てさえすればダメージが通るとみていい。


 N2達と距離を取った黒い生命体は、突然足の形状を変形させた。

 元々湾曲していた2本の脚は、どうやら折りたたまれていたらしく、変形を終えると草食動物を思わせるようなバネのきく形状に変わっていた。

 

 その後、前傾姿勢を取ると、今度は黒い生命体の方から突進してきた。

 しかしスピードは変形前と比べ物にならない。

 おそらくやつはN2のエネルギー弾を回避するべく、高速で移動できるように足を変形させたのだ。


 牽制するために、N2がチャージしきれていないエネルギー弾を数発撃つが、ギリギリでかわされてしまう。

 次第に距離を詰められ、その勢いのまま黒い生命体はデカN2に蹴りをかました。

 足のバネを使ったその蹴りは、デカN2の巨体を軽々と飛ばす。


 飛ばされた先は燃え朽ちた植物。

 デカN2の巨体が落下し、灰が舞い散る。


 くそー、と言いながら起き上がるN2。

 N2の方にもダメージはない。

 

 物理攻撃だけでは勝負がつかないと判断したのか、黒い生命体は更なる形状変化を始めた。

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