33話 ぴの の おもい

 俺の身の丈の1.5倍の大きさはあるロボットの肩に、N2が乗って現れた。

 勢いよく突っ込んできた人型のロボットは、そのまま黒い生命体を殴り飛ばす。

 完全に不意を突かれた黒い生命体は、殴られた勢いで炎の壁の中へと転がっていった。


「レイ!! 怪我はないか!?」


「あぁ、問題ない。けど、やつにガソリンっぽい液体をかけられた。周りの炎が消えるまで、迂闊に動けねぇ」


「なんだ、恐怖で漏らしたのかと」


 こいつ、直前までの俺の気も知らないで。

 まぁでも、今は普段通りの振舞のN2に救われる。

 とにかく助かった……。


「というか、ガソリンをかけられただと!? 私ですら、まだかけてないのに!」


 どこにキレてんだよ。

 今後お前にかけられるつもりもねぇよ。


「で、そいつ誰だよ。そのでっけえの」


 N2と共に、壁の外から突入してきた大きな人型ロボットについて問う。

 俺とピノが探索に出かけている間、N2はレーダーの修理をしてたはずだ。

 こんな大そうなもの作れる時間なんてない。


「これはミニN2の集合体さ! 5体をそれぞれ、頭、両腕、両足の接続部に配置して、組み上げたんだ! 言うなれば、『デカN2』ってとこかな!」


 まんまかよ!

 や、しかし考えたな。

 ミニN2の核となるチップ一枚では、ここまで大きな金属の塊は作れない。

 材料もミニN2と同様、落ちてる金属片で作れるしな。


「でも、よくここが分かったな」


「レーダーを修理して、試運転をしていたら、移動する二つの信号以外に、何かが接近していくのが見えたんだ。二つは固まって動いていたから、レイとピノだと分かった。けど、二つの信号がもう一つの信号から逃げるようにして移動していたから、二人が襲われてるんじゃないかと思ってね」


 修理早すぎるだろ。

 しかも宇宙船に元々積んであったレーダーは、人体には反応しなかったはずだ。

 早速お決まりのアップデートが入ってるよ。


「それで、シェルターの外に出てみたら、たくさんの植物達が燃えていた。絶対に何かあったと思って、デカN2を組み立てながらここに辿り着いたってわけさ」


 ちょっとでも遅れてたら、俺は今頃火だるまだったな。

 運が良いんだか、悪いんだか。


「それと、これを渡しておく」


 デカN2の胸部がパカッと開き、N2から何かを二つ投げ渡された。


 一つは水入りのペットボトル。

 確か雨水を貯めてたやつだ。


 もう一つはピノ。

 ピノ!?


 N2がこっちに向かってくる途中に飛んで来たらしい。

 急いで炎の中のレイ様のもとへ向かってほしいと頼まれ、一緒に連れてきたということだった。


 ピノは俺の手のひらの上で、わなわなと立ち上がり、


「レイ様……」


 弱々しくそう呟いた。


「もう二度と、ピノの目の前で自分が犠牲になるようなことはしないでください!! ピノは……ピノは、レイ様の身に、もしものことがあったら……!」


 なんとか立っている状態で、ピノは声を震わせながら懇願した。

 善かれと思い取った行動も、受け取る側にしてみれば、ただのお節介だったんだ。

 結果的に身を危険に晒し、死をも覚悟した。

 もしそうなっていたら、こいつらがどれだけ悲しむかを、全く考えていなかった。

 どこかで、所詮ロボットだ、という風に思っていたのかもしれない。


「ごめんな……。もうしない。もうしないよ」


 そう伝えると、ピノは安心したのか、ぱたりと倒れてしまった。

 もしくは暑さの限界が来たのかもしれないが。

 とにかく、一刻も早く休ませてやらないと。


 効果があるか分からないが、横たわるピノにペットボトルの雨水をかけてやった。

 これで暑さが和らいでくれたらいいのだが。

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