29話 まな と いのち

 苗が埋まるほど集めた、葉や実の肥料達は、ピノの分解能力でボロボロに崩れていった。

 おそらくこれで、土に栄養がいってくれると思う。

 しかし、土に溶け込むには少し時間がかかる。

 今度は枯れることなく成長してくれることを祈りつつ、俺達は一度船に戻ることにした。


 俺の半歩後ろを歩きながら、周囲の警戒をしてくれているピノ。

 N2なら、俺の周りにこそいてくれるが、気の向くままに歩いてるだろうな。

 ピノの従順な姿が、何となく申し訳なく思えてきて、ふと立ち止まる。


「肩にでも乗るか?」


「い、いえ、そんな……。ただでさえお疲れですのに」


 ピノはそう言うが、聞いたときに少し嬉しそうにしたのを、俺は見逃さなかった。


「ほら、地面歩くよりも、俺の肩の高さの方が遠くまで見渡せるしさ」


「確かにそうですが……。でも、よろしいのですか?」


「あぁ。いいよ。おいで」


 そう言って手を差し出すと、ピノは申し訳なさそうにちょこんと乗ってきた。

 ピノを肩に乗せ、すくっと立ち上がる。


「わぁ! 景色が全然違いますね! 植物達がたくさん!」


 俺が見ていた景色を見て喜ぶピノ。

 ほんとは色んな事が気になってるけど、実は我慢してたりするのかな。

 そういう好奇心の部分は、N2と変わりはないのかもしれない。

 ピノも空中に投げると喜んだりするのかな。

 もし頼まれたら、肩を壊さない程度に引き受けてやるとしよう。


 ピノを肩に乗せ歩く最中、ふとあることを思い出した。

 それは植物で埋め尽くされた小さな部屋で、初めて会ったときのこと。


「そういえばピノ、俺と最初に会ったとき、貴重なマナを~とかいってなかったか?」


「はい。それが何か……?」


「いったい何なんだそれ。聞いたこともない言葉だったから、俺にはさっぱりでさ」


「えぇ!? 知らずに分け与えて下さったのですか!?」


 耳元で急に大きな声だすんもんだから、びっくりした。

 てかピノって、そういうリアクションもするのか。


「では、N2はどうやって起動させたのですか!?」


「どうも何も、あいつは元から勝手に動いてたよ。あ、でも、N2に初めて触った時、気を失ったな」


「それですよそれ! 気を失うって、いったいどれ程のマナを……。おかしいとは思っていましたよ! あんな状態で動けるはずないですもの!」


 そ、そうなのか。

 いやまぁ、N2に関しては色々ボロボロだったけど。


「ピノの場合、起動時及び、身体を作る金属をコアから捻出する時に、分けて頂いたマナを消費します……。N2との接触時に、倦怠感が現れたのなら、同じくN2にもマナを分け与えているものと思います……」


 ピノは、更に続ける。


「マナとは、生きる力のこと……寿命そのものです。レイ様の寿命を削り……ピノ達は動けているのです……」


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