28話 かれること と そだつこと

 探索の出発前に、ミニN2達に木の実の回収を頼んでおいたことを思い出した。

 回収された木の実は、皿から溢れるほどになっていた。

 手当たり次第に木の実を集め、有毒なものを皿に入れられても困る。

 そこで、ミニN2達には、一度食べたクアの実を中心に集めてもらっていた。

 クアの実を食べる際に、ピノにどういう反応をされるか不安だった。

 しかし、対話出来るのは植物本体だけらしく、切り離された実や葉に触れても、これといった反応はないそうだ。

 一つ一つが意思を持っていたら、やかましいことこの上ないだろうな。



 黒い生命体が破壊され、必要が無くなったかもしれないが、以前地下通路に潜った際に、索敵用のレーダーが欲しいとN2と話していた。

 黒い生命体からは少量の金属を回収したが、レーダーを1から作るには、量が足りないらしい。

 そこで、元々宇宙船に備えてあったレーダーに改良を加えるという案を思い付いた。

 それならば量も足りるし、遭難して初の部品の修理がかなう。

 正に一石二鳥だ。


「なら私は、しばらくレーダーの修理、及び改良をしておくよ。楽しみにしていてくれ」


「余計な機能付けんなよ?」


「し、しないさそんなこと!」


 念を押しておいて良かった。

 こいつ絶対何かする気だったぞ。



 レーダーのことはひとまずN2に任せ、ピノを連れて、ある植物のもとへと向かっていた。


「こいつなんだが、育っては枯れてを繰り返してるんだよ。原因が聞きたいんだけど、話せるか?」


 それは、探索中に見付けた、成熟しきれていない植物。

 何故他の植物と違い、うまく成長出来ないのか理由が知りたかった。


 やってみます、とピノ。

 そして、ゆっくりと成長している植物の苗に触れる。


「――この子は、ただひたすらに大きくなろうとしているだけのようです。枯れた、という記憶も無いですね。もしかしたら、この場所に埋まっている種子が、順番に芽をだし、枯れていってるのかもしれません」


 植物の種類で枯れてるわけじゃなくて、場所が原因なのか。

 となると……。

 他の場所に生えている植物の葉や実をちぎり、枯れる植物が生えている土の上に集める。


「レイ様、何をしているのですか?」


「枯れてる原因は、土の栄養不足かなと思ってさ。野菜を収穫し過ぎた土は痩せるって話を、昔じいちゃんがしてたんだ。だから肥料の代わりになるもんを、与えてあげればどうかなって」


 苗が埋まるほどの実や葉を、肥料として土の上に集めた。

 けど、肝心なことを忘れていた。

 栄養が土に溶け込むまでには、なかなかの時間がかかる。

 このペースで成長してたら、また枯れちまうなきっと。


「なるほど。そういうことでしたら……」


 ピノはそう言うと、集めた肥料に右手をかざした。

 右手が淡く輝いたかと思うと、腕の先が液体化し、薄緑の液体を肥料の葉に一滴垂らした。

 すると、液体が垂れた箇所から葉が溶けていく。


「な、何したのいったい」


「肥料となる葉っぱや実を、この子が吸収出来るまで細かくしました。しかし、流石レイ様です。ピノには思い付きませんでした」


 いや、怖いよピノ。

 俺がその液体触ったらどうなんの?

 溶けちゃうの?


 俺のひきつった顔を見てか、分解するのはここにある実と葉っぱだけですよ、とピノ。

 役目を終えたら、垂らした液体も戻ってくるんだって。

 すごいなー、便利な技術もあるんだなー……。

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