30話 ごめん と ありがとう

「ピノ達は、レイ様の寿命を削り、動けているのです……」


 ピノは、申し訳なさそうにそう言った。

 ピノからしてみれば、意図せず寿命を奪ってしまったようなもんだ。

 優しい性格のピノのことだから、さぞショックを受けてるに違いない。


 そうなってしまったもんは仕方がない……。

 もしかしたら、寿命が削られたと言っても、意外と大した期間じゃなかったりしてな。


「ちなみにさ、減った寿命ってどれくらいなのかな……」


 ピノがこれ以上罪悪感に苛まれないように、出来るだけ優しく問う。


「人体の指標で表すのは難しいのですが……5……くらいでしょうか……」


 5ヶ月くらいか?

 やっぱり大したことなかったな。


「なんだ、そのくらいなら全然平気だよ! ピノがそこまで気にしなくていいよ」


「年です、レイ様。5年です……。ちなみにピノの分だけで、です……」


 ……。

 5年か。

 もう1年あれば小学校卒業出来るな……。


「N2の分は、申し訳ないですが、想像がつきません……。ですが、ピノよりも多いのは確かです……」


 触れた時の怠さの比でいうと、倍かそれ以上……。

 スケールがでかすぎて、ちょっと想像出来ないや……。


 そうか……。


「話してくれてありがとな、ピノ」


「いいえ……」


 それでも、この件に関して、ピノは決して謝らなかった。

 きっと、申し訳ないと思う事が、失った俺の寿命を軽んじると考えたのだろう。

 N2はきっと、この事を知らない。

 教えてくれたのが、ピノで良かった……。


「そうか……うん……。まぁ、N2がいなかったら、何も出来ないままこの星で飢死してたかもしれないしな! 考え方によれば、寿命が延びたようなもんだよ」


「レイ様……」


「やることは、食料蓄えながら宇宙船を直すこと。寿命が減ろうが、そこは変わらないんだ」


 こんなところで死ぬ気もさらさらない。

 精一杯抗って、笑ってここを出てってやる。

 そんでもって、変なやつらと友達になったって自慢してやるんだ。


「ピノ、この事はN2には黙っておいてくれるか?」


 あいつはあのままでいい。

 変に気を使われても、空回るのが目に見えてるしな。


「はいです。内緒にしておきます」


「ありがとう。これからもよろしく頼む」


「はい!」




 気持ちを新たに、宇宙船へと歩く。


 遠くの空はいつの間にか、薄暗くなっていて、雲は雨を含んでいるような色をしていた。

 なんだろう……とても嫌な予感がする。

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