24話 タンサク


 天気は快晴。

 空に雲がちらほら見える、雨が降りそうな気配はない。

 風もこれといって吹いておらず、まさに散歩日和といった感じだ。


 現在N2と共に、周囲の状況を確認するための探索をしている。

 前回の探索では、大型機械の腕や、地下通路などを発見した。

 今回は、違う方向へ進み、星の状況の把握及び、別の何かを発見しようという魂胆だ。


 宇宙船から少し離れて分かったが、植物は地表にところ狭しと発生したわけではなかった。


 元々星の地表には、錆びた金属片が散らばっていたが、植物はその金属片に寄り添うようにして生えている。

 ので、植物だらけで進めないといった状況などではなく、ある程度道のようなものが出来ている。


 道上の植物は、見た感じシェルター前の植物達と状況は変わらない。

 実をつけているものもあれば、うまく育てず枯れてしまっているものもある。

 不思議なのは、一定以上の大きさの植物が無い点だ。

 たまたま見付けていないだけかもしれないが、いわゆる木と呼ぶほどの大きさの植物が見当たらない。

 水が足りないのか、土に栄養が少ないのかは分からないが、きっと何か別の条件があるはずだ。



 あたりをキョロキョロしながら、ふとN2が話しかけてきた。


「ここでクイズです!」


 なんだ、突然。

 なんか始まったぞ。


「こっちのイソクラの実と、あっちのナワシロイチゴ、どちらが私好みでしょう?」


 知るかそんなもん!

 どっちが食べられるか、毒があるか、とかじゃねーのかよ。


 まぁいい、答えてやろう。


「普通なら、色もいいし写真映えするあっちの実、なんとかイチゴ?の方だ。しかし、きっとお前はこっちのイソクラとかいう実の方だろ?」


 N2は、ぐぬと、少し後退りして、


「そ、その心は……?」


 なんでなぞかけだよ。

 そのなぞかけじゃないだろ。

 なんか意味違うけどいいや。


「芋と似てるから」


「……ケッコウナ、オテマエデ」


 ……クイズだったんだよなこれ?



 N2が見てた小説は、コメディーものだったのか?と少し不安になった。

 こいつがツッコミとか覚えたら四六時中やってそうだ。

 勘弁してほしい。



 探索を始めてから30分くらいが経とうとしていた。



「んー、これといって真新しいものは特に見当たらないな」


「うん。植物が発生して、視界が悪いのも原因かも。現に私が見る景色は、ほとんど植物ばかりだよ」



 そりゃなぞかけしたくもなるさ! とN2。

 いやお前のは、クイズ以下の何かだけどな。



「そうだ、レイ。私を思いっきり上に投げてくれないか?」



 なるほど、上から見て何か発見しようという作戦か。

 金属で出来ていると言えど、体重は軽いので、投げ上げることも出来るだろう。



「いいぜ。ただ、うまくキャッチできる保証はないぞ?」


「大丈夫、その時はその時だ。もし落ちても問題はないと思う」



 それもそうか。

 銃弾が平気なんだ、地面にぶつかるくらいわけないだろう。



「それじゃいくぜ。せー……っの!」



 わあああと言いながら、N2が天高く舞い上がっていく。

 けど、思ったより回転してるな。

 あれじゃうまく見渡せないだろう。

 投げ方工夫しなきゃ。


 N2の叫びが遠くなり、今度は近くなり、5秒程でN2が自由落下しながら、俺の元に帰ってきた。



 両手でうまくキャッチすると、


「レイ、もっかい! もっかいやって!」


「楽しんでんじゃねーよ! 高い高いか!」



 慣れない動きだから、結構疲れんだぞこれ。



「普通に投げたらどうしても回転するから、次は俺が投げる直前に、手のひらをジャンプ台にする要領で飛んでみろ」


「おーけー!」



 これならN2自身のジャンプ力も加わって、更に広範囲の探索が出来そうだ。



「じゃ2回目いくぞ。せー……っの!」



 投げる直前、手のひらが軽く押し戻された。

 そういえばこいつ、力が結構あるんだよな。


 1回目とは比較にならない程の手ごたえを感じる。

 10秒経ってもN2は落ちてこなかった。

 あれ、飛びすぎじゃね?


 15秒あたりで、近くの植物にバサッと何かが降ってきた。

 はー楽しかった、と草の中からもそもそと、N2が出てきた。


「どうだった? 何か見付かったか?」


「見付かった! 少し離れたところに、10メートル範囲で植物が密集してるところがあったよ。他の植物と生え方が違うから、何かある気がする」


 遠目からだったから、詳しくは分からないらしいが、危険な感じはないようだ。

 俺達はさっそく、その植物の密集地へ向かうことにした。


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