7話 テスト
『「レイー、なんだこれはー?」』
表情さえ分からないが、ミニN2がおそらくわくわくしながら、穴から芋を持ち帰ってきた。
よほど気になったのか穴の中の状況、広さ、奥行きその他もろもろの情報の報告をすっ飛ばして、中で拾ったであろう芋を見せびらかせてくる。
金属製の物質以外にはどうも疎いらしく、初めて見る芋に興味津々といった様子だった。
ミニN2が持ち帰ったそれは、大きさは直径5センチ、デコボコした荒い球体の形状をしていて、所々から根のような細い糸状のモノが伸びている。
「芋、かな多分。え、芋が穴の中にあったのか!?」
『「イモというのか? 少し進んだところで上からぶら下がっていたので、引きちぎってきた」』
「ちぎってきたって……。いや、よくやった。これは大発見だな」
不時着時に霧があったこと、土壌も砂漠化はしていない星であることを考えると、ある程度期待はしていたが実際に植物? が原生することを確認できた。
これがもし大量に見つかり、可食であるならば、食糧問題は一時解決する。
のだが、手に取ってみた感じ俺の知っている芋と若干異なり、ものすごく固いし重量もそこそこある。
この星の環境に合わせて順応した姿なのだろうか。
ひとまずこの芋は回収し、後で可食か調べるとしよう。
『「おっと、穴の報告を忘れていた。内部は入り口と同じ大きさほどの道がしばらく続いていて、少しづつ下へ下るような作りになっていたよ。レイの体の大きさだと通るのは困難だろうな。そして、奥へ進んでいくとこれがあったというわけさ、このイモが。で、穴はさらに続いていたがいったん引き返してきたんだ。イモはいったいあそこで何をしていたんだ?」』
「んー、何をというか、生きていたというか。植物は基本的には仲間を増やすために生きてるんだよ」
『「増えるのか? このヘンテコが? 増えてどうするんだ一体……」』
「増えて、食べられる。食べられてしまうんだ」
『「たべ……可哀そう……。一体どんな酷い奴がそんなことを……」』
「俺さ!」
『「なに!? レイ! 君ってやつは! 君ってやつはー!」』
とまぁ実際食べられるかは、調べてみないと分からない。
そんな茶番をミニN2としつつ、N2が現物を見てみたいというので、穴の奥がどこへ続いているのか気になるが、一度船に戻ることにした。
無事に戻ると、N2が早速回収した芋を見に来た。
「さぁ、おいで私のイモ! レイの近くにいると危ないぞッ」
「いうてなぁN2、実際俺は何か食べないと死ぬんだぜ? 俺が生きていくには、何かしらの食べ物が必要なんだ。分かってくれ」
「ぬぅ、それは分かっているー」
「じゃあ、この芋を俺とN2で半分こしよう。おまえの分はおまえの好きにしていい、それでどうだ?」
「このへんてこが、更に半分に……。だが、しかたない、そうしようか」
実際N2が芋を何に使うか謎だが、俺は半分の芋を使って可食テストと生産テストを行うことにした。
可食テストとは、文字通りその食物が食べても問題ない物なのかを確認するテストのこと。
生き延びるために食料を摂取して、それが毒物であり、死んでしまいました、では話にならない。
そういった問題を回避するためのテストだ。
昔文献で読んだ程度だから、正確に記憶しているわけじゃない。
けど、対象の食物を一定時間皮膚に当て、異常が見られなければ食べても問題がない、といった方法が一般的だ。
ミニN2が回収し、更に半分にされた芋の少量を口に含み反応を見ていく。
本来は、手などの皮膚が厚い部分でテストするのが安全だ。
しかし、時間がかかる上に今回の芋はそこまで危険な代物でもなさそうだったので、口内でのテストを選択した。
口に含み15分ほど経過したが、これといって悪い症状は見られなかった。
よって、この芋は食べても問題がないと判断した。
次に生産テストだが、サンプルが少なすぎるので、ひとまず穴で埋まっていた状態と、俺の星で育てている状態とを再現し、しばらく様子をみることにした。
種芋になる部分は、ある程度の大きさを確保すれば一つの芋を切り分けていくつも作ることが出来る。
もとの大きさの1/5ほどの大きさの種芋を二つ用意する。
一方はこの星の地面を少し掘った土を採取し、拾った金属の板でケースを作りそこに埋めた。
もう一方は同じく土を採取しそこに埋め、持参していた水を適量加えた。
これでしばらく様子を見ていこう。
次なる課題は、先ほど見つけた穴の探索だ。
穴の奥から吹く風が、あの穴がどこかの地下通路へとつながっていることを表している。
N2が活動していた地上とは違い、地下は環境も不明故に危険だが、探索してみる価値はあるだろう。
「シェルター作成が終わったら、今度はあの穴の更に奥へ行ってみようと思うんだが」
「終わったよ、だから行こうすぐに!」
「嘘つくなよ! 天井がまだ開いてるぞ!」
「ぬぅー、すぐに終わらせる!」
「手を抜かないでくれよー。船が壊されたらそれこそ帰れなくなるんだから」
作っておいてもらっている身で図々しいとは思うが、作るならきちんとしてもらわないとな。
天井部は宇宙船の発射時に邪魔にならないように開閉式に。
出入りの際はN2が信号を飛ばし、俺がやっと入れる程度のドアが開く仕組みになっている。
しばしの後、シェルターで宇宙船全体を包み終えたので、今度はN2と穴へ向かうことにした。
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