最後の三分間 藍

エリー.ファー

最後の三分間 藍

 最後の三分間というと、僕にとってはすべてが新鮮だった。

 同じような感覚に陥る人もいるだろう。

 何せ、どんなに最後というものを味わってきたとして、その三分間、つまりは、三分前の状態で、今、三分前だ、と認識することは間違いなく少ないからだ。終わった後に、確か、あの瞬間が三分前くらいだったのではないか、と思うにとどまると思う。

 大切なのは、だ。

 その三分後には終わりとなる、ということを認識したうえで残りの三分かをどう使うか、ということに他ならない。

 何せ、そこから先の三分間の中で組み立てられる予定というものは確かに大切であるし、それこそ、結果を大きく変える場合もあるのだ。

 最後が目に見えているからこそ、そこで、それが本当の意味での終わりにするのか。

 それとも。

 何かの始まりに変えるのか。

 それはその今が三分と気づいた後から始まる。

 一瞬一瞬の積み重ねの中で形作られる、一つの人生の破片そのものなのだ。

 僕の手元に猫がいる。

 可愛い猫だ。

 最後の三分間をこの猫と共に過ごすということに、いささか疑問もなければ、何の反論も出てこない。

 僕は猫を見つめる。


 以上が問題文となります。

 今回の試験では皆様の百廷官としての適性を図るためこのような形での試験となっております。また、今回の試験で使われた問題用紙また、計算用紙等はすべて回収となります。また筆記用具や消しゴム。そしてそこで出た消し滓も含めてこちらで処理いたしますので、そのつもりでお願いいたします。

 問題文の音読はあと一回行われますが、その際、聞き取りにくい、また知らない単語がある、他にも日本語であるため公平な試験ではない、というような意見、批判、質問等あるかと思いますが、試験管は全員答えませんのでお気を付けください。

 この問題に限り、解答用紙がありませんが筆記試験であるため、お手元の机や、床、天井等に記入した後、それらを入り口で渡しました赤いマーカーで囲い、受験者番号を書いていただければ採点いたします。また、前回、前々回と同様に赤いマーカーで二重に囲った場合は採点不可としますが、三重であった場合は採点結果に準じた追加点があります。この内容自体は百廷官の試験の公式ホームページでも確認できますので、お手元の携帯電話を取り出し確認してくださって構いません。ただし、試験中に限り、携帯電話を出すことは可能でも操作は不可ですのでご了承ください。

 多くの受験者がこの会場に入っているため、非常に息苦しく、また冷房等効きにくくなっております。その場合、試験官が順次部屋の中を巡回し、試験をこれ以上受けても合格が見込めない受験者の方の受験番号を大声で読み上げます。すると、私の左手、つまり受験者である皆さまの右手にあたる扉から機動隊の隊員の方が入ってきますので速やかにその方の元へ移動してください。十秒以上移動しなかった場合や、不服であることを伝えた場合、試験管に対して何か無礼な態度をとった場合は、射殺、もしくはその場で火葬という手段を取りますので承知していただけると幸いです。

 それでは問題文をもう一度読み、それが読み終わった段階で記述開始となります。百廷官試験、最後の三分間となりますので是非、頑張って頂きたいと思います。

 ちなみに、最後のアナウンスとなりますが名前の最初があ行の方とか行の方、この試験終了後。

 死刑です。

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