第29章

東海地方と関東地方を襲った大地震は、後に東海関東大震災と名づけられた。


最大震度9.2を記録した、戦後最大のこの大地震は、多大な損害を及ぼした。


死者およそ32000人以上、ケガ人20万人、行方不明者12000人以上


という大災害となった。




愛知県では名古屋などの中心部での被害が多く、


住宅やマンションの倒壊、火災などで死者約8000人、ケガ人3万人余り、


行方不明者約2000人。




三重県では住宅・マンションの倒壊、火災などで


死者約3000人、ケガ人約4万人、行方不明者約1600人。


静岡県では住宅。マンションの倒壊、火災で死者6000人。ケガ人3万人。


土砂崩れなどの行方不明者2000人。


東京。神奈川の被害者が最も多く、住宅・マンションの倒壊、火災などで


1万人以上、ケガ人は10万人。行方不明者は6000人に上った。




しかし、この被害者の数は多くの地震学者、防災研究者の想定を大きく


下回っていた。というのも、当初このクラスの大地震が起きれば、


南海トラフにあるユーラシアプレートとフィリピンプレートのずれ込みで、


最大高さ50メートルの大津波が予想されていたのだ。




その大津波での被害で、累積的に被害は広がり、


実際の被害者の数は、それの数倍の数が予想されていたのだ。


その津波の被害が極めて小さかったこと。その要因として、


最初の直下型地震による


マグネチュード8を超える地震の後、フィリピンプレートと


ユーラシアプレートが再びずれ込みを始めるという、


地震学上では考えられない地殻変動が起きたためだった。




再度のふたつのプレートのずれ込みにより、日本側に迫りつつあった


巨大津波は、南海トラフ水深4000メートルの海溝に引き込まれたのだ。


それにより、津波のエネルギーは失速され、その勢いも弱まった。




それに別の偶然の幸運も重なった。


当初、日本国民に甚大な被害をもたらすであろうと


想定されていた、瞬間数速80メートルという超巨大台風18号が、


突如南南東―――太平洋側に向かってその進路を変えたこと。


この原因は後に判明したことだが、中国で発生した強い高気圧が


日本海側に張り出してきたため、台風18号は押し出される形に


なったのだった。


しかしそれがあ幸いしいた。ふたつのプレートの2度目のずれ込みで


その勢いは弱まったものの、津波はまだ高さ10メートルという


エネルギーを持っていた。


だが、この台風18号の進路が津波と真っ向から向かい合うことによって、


津波のエネルギーを削いだのだ。




結果的に、津波は6メートルほどおのものになり、沿岸付近以外は、


それほど深刻な被害は無かった。


床上浸水が神奈川県、三重県、四国などで12万戸。床下浸水は8万戸に


とどまった。




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