第27章

大地震によって荒廃した関東の上空3000メートル。


ガブリエルの全霊の光のオーラの攻撃を受けた


アザゼルの姿は半透明になり、その実体が消えようとしていた。




「悪魔は地獄へ帰るがよい」


ガブリエルの顔に嘲あざける笑みが張り付く。




「これで終わりだ!」


ガブリエルの両手の掌がアザゼルに向けられる。


次の瞬間、ガブリエルのまとっていた光のオーラが飛散し始めた。


ひとつひとつは微小だが、その数は無数に見えるほどのおびただしい数だ。




光の魂がガブリエルから離れようとしているのだ。


ガブリエルの顔から余裕の色が失せた。




「どういうことだ?」




「それは・・・・・・言われ無き・・・・・・死を与えられた者の・・・


 ・・・無念だ。光の魂よ・・・・・・お前たちの穢れは私が背負う」


アザゼルの言葉と同時に、光の魂から極くわずかな闇のエネルギーが

蒸発するがごとく現れ、アザゼルの紅蓮の左目に吸い込まれていく。




「光の魂たちよ・・・天に昇ってゆけ。そこには神が・・・・・・お前たちを


 暖かく迎える神がおられる」




アザゼルは天を指し示した。微小な光は集まり河のようになって


天へ上っていく。




ガブリエルは唖然としていた。


堕天使の言葉を光の魂が受け入れたのだ。


そればかりか、光の守護者である自分を見捨てて・・・・・・




わずかながらも闇のエネルギーを得たアザゼルの姿は黒くどこまでも


漆黒の容姿を取り戻していた。




「ガァブリエル―――!」


アザゼルの絶叫が鳴り響く。


ガブリエルの顔に初めて、畏れの色が浮かんだ。

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