三分間道場

あじろ けい

第1話

英語語学学校に通っていた時の話です。


先生はネイティブ、生徒は世界各国から、彼らのレベルもバラバラ、授業は英語で、という環境でした。


授業を始める前に必ずやっていた、というかやらされていたことがあります。


三分間、ひたすら書く。しゃべる。聞く。


テーマはあらかじめ先生から与えられます。そのテーマに沿った内容の英文を三分間、ひたすら書き綴る。辞書は使ってはいけません。とにかく、書く、書く、書く。後で先生が赤ペンで文法やつづりの間違いを指摘してくれます。


次の三分間は、とにかくしゃべる。やはり与えられたテーマについてしゃべり続けます。ペアを組んだ相手はひたすら聞き役に徹する。質問をしてはいけません。とにかく、しゃべり続ける。発音だの文法だの気にしない。しゃべる。


自分がしゃべる番が終わったら、攻守交替、聞き役にまわります。ひたすら相手の話に耳を傾ける。アクセントや発音の悪さがあって、何言ってるかよくわからない時もあります。しかし、質問せずに聞く。聞き取りに集中する。


三分間、「書く、しゃべる、聞く」に集中し続けたおかげで、その先生の授業を取っていた半年の間はずい分上達しました。


「読む」はね、どのお国の生徒さんも大抵できるんです。教科書を読んで勉強してきているからでしょうね。


「しゃべる」は、二つにわかれました。得意な生徒と苦手な生徒。おしゃべりな子は得意です。英語をしゃべりたくてしょうがないから。私は苦手でした。しゃべりだす前に、文法や発音を考えてなかなか言葉がでてこなかった。そんなの気にせずに、とにかくしゃべれ、と言われてしゃべるようになって、英会話に対する恐怖心のようなものがぬぐえた気がします。


「聞く」は、私は苦手ではなかったですが、おしゃべりな生徒は苦手なようでした。なにしろ自分がしゃべりたいし、しゃべっているから、相手の話を聞いていない。聞くことに集中できない。そういう生徒には効果あったようです。私にとっては、話の内容を理解できるようになるというよりは、さまざまな発音やアクセントに慣れるいい機会になりました。


「書く」は得意な方でした。とはいっても、母国語である日本語でですが。外国語となると話は違います。こちらもやはり文法を間違えてはいけないという点が気になり、はじめのうちは二、三行で終わってしまいました。慣れてくると、A4用紙いっぱいに書けるようになりました。全文「I」で始まっていたりしましたが。後で入れられた先生の赤ペンで、自分の苦手としている部分が判りました。私の場合は冠詞、「the」とか「a」です。どうしても抜けてしまっていました。今もって苦手です。


この三分間道場のおかげで、英語に対する苦手意識が払しょくできたと思います。特に、英語をしゃべるということに対して変な気構えがなくなりました。ネイティブのようにしゃべれなくて当たり前、カッコつけるより自分の言いたいことを伝えることができたほうがいい。


三時間も文法書を読みふけるよりずっと効果的な勉強方法だと思います。生きた語学を身につけたいとおもったら、この三分間道場にぜひトライしてみてください。

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三分間道場 あじろ けい @ajiro_kei

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