第8話
殺人犯をこんな気軽に部屋に入れてしまう私もどうかしてるな、と思いながら靴を脱ぐ。
少しやけになってしまっているのかもしれない。
「適当に座って」
「はーい」
「コーヒーと紅茶どっちがいい?」
「コーヒーで」
お湯を沸かし、インスタントコーヒーを棚から出す。
ミルクと砂糖使うタイプだったっけ、なんて思いながら念の為準備をした。
「彼氏と仲良かったんだね」
「……そりゃね」
机の上に飾ってある写真を見ながら桐谷漸は言った。
写真は去年の夏に海に行った時のもの。
和人と海に行くのは初めてで子供みたいにすごくはしゃいでいたことを思い出した。
「いつから彼と付き合ってるの?」
「高校生のとき。
クラスが同じになって仲良くなってからかな」
「ふーん……。
その時から御堂君とも仲良かったの?」
「うーん、和人と仲良かったから話すって感じかな」
「御堂君を恋愛対象としては見なかったんだ」
お湯をカップに入れ終え、机の上に置く瞬間にそんなことを言うもんだからうっかりこぼしそうになる。
「なんかおかしい?」
「いや、御堂君って結構お金持ちだし美形だし。
モテモテだったでしょ?」
「まあね。
和人も人気者だったから2人が一緒にいると人が集まってたね」
「そうなんだ」
自分の高校生活を思い出しているのか、何も言わなくなった。
私も向かいに座り、コーヒーを口に運ぶ。
「……聞かないんだ、俺のこと」
沈黙の中、先に口を開いたのは桐谷漸だった。
「聞いて欲しいの?」
「普通聞くものじゃない?」
「あんたの場合、嘘つかれそうだからね」
「ははっ、そんなペテン師じゃないよ」
「それも嘘でしょ?」
「ひどいなー」
「じゃ、聞くけど!」
聞きたいことがありすぎて、何から聞けばいいのかわからない。
なんで人を殺しているのか、とか。
どこから情報を得てるのか、とか。
どうして権力があるのか、とか。
「せっかくだからさ、ちゃんと自己紹介しない?
まだ俺のこと、全然話してないし」
「……そうだね」
「んじゃ、改めて桐谷漸。
これはちゃんと本名だから安心してね。
前も言った通り、俺は連続殺人犯。
そうだ、これ」
そう言って見せてきたのはスマホに映る事件記事。
それは前に桐谷漸が話していた殺した人物の特徴だった。
「ね?
これで真実味が増したでしょ?」
「増さないでほしかったけどね……」
「ははっ、そんなこと言わないでよ。
で、年は22歳。
神崎ちゃんの1つ上だね。」
「え……」
年上には見えなくて自分で目を見開いていたのがわかった。
口調、態度共に年上だと感じる部分はほとんどなかったからだ。
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