第7話
糸が切れたかのように泣いてしまった私を2人は少し慌てている。
それがわかった私は泣き止まなければ、と思ったものの涙を止めることは簡単ではなかった。
「和人……和人……!!」
ただただ名前を呼んで泣くことしかできなくて
やっと涙が止まったときは頭も胸も痛かった。
泣き顔でバスに乗るわけにも行かず、仕方なくタクシーで帰った。
見慣れたアパートの姿を見てフラフラした足取りで足を進めた。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
もちろんそんなこと考えても意味ないし、わかるわけもない。
その為に桐谷漸と手を組み、犯人を見つけようとしている。
そんなことは、わかっているのに
『どうして?』『なんで?』
という疑問しか頭の中にはなかった。
そんなことを思っているとまた自然と涙が零れそうになる。
止めなきゃ。
周りに見られてしまう。
私は目を擦り、誤魔化そうとした。
「そんなに乱暴に擦ったら目が腫れるよ」
「なんで……」
私の右手首を掴み、病院のときと同じ優しい表情で立っている桐谷漸の姿。
「そろそろ帰ってくるかなって思って」
「……なんの用?」
鼻声になりながら私が言うと自分が着ていた上着を私の頭に被せながら
「泣いてるんじゃないか、って思ってさ。
やっぱり僕の予想的中したね」
「バカじゃないの……」
「こんなときも強気だなー。
まあ、神崎ちゃんらしいけど」
『ほら、部屋入ろ』なんて言いながら、私の腕を引く。
相変わらずの情報力で私の部屋がどこかは把握済みらしい。
私が腕を引かれて前を見た時には私の部屋の前に立っていた。
鍵を開け、そのまま帰すのも気が引け
『入る?』
と聞くと
『おじゃましまーす』
という呑気な返事が返ってきた。
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