第3話
あのあと無理やり連絡先を交換され、タクシーで家へと帰った。
朝起きても体は重いし、ショックで大学に行くこともできなかった。
きっと話が大学内でも広がったのであろう。
携帯を見るとたくさんの通知。
その中にはあの桐谷漸の文字もあった。
返信する気にもなれなくて、そのままスマホを机の上に戻したときだった。
「電話?」
聞き慣れたバイブ音が響いた。
もう一度携帯を手に取ると友達である間中柚葉の文字。
彼女もきっと私を心配して連絡をくれたのだろう。
少し躊躇いながらも応答ボタンを押した。
「もしもし……」
「咲、大丈夫?」
「あー、うーん……」
そう言って、失笑してしまった。
笑って大丈夫だよ、と返せれば心配かけることもなかったのに失敗したなと少し思いながらも言うことが出来なかった。
「……そりゃそうだよね。
休学するぐらいだもんね」
「きゅ、休学!?
なにそれ!?」
全く聞き覚えのない話につい大きな声を出してしまった。
「え?
今日なんか男の人が来て咲が休学するって言ってたって……」
「なんの話……?」
嫌な予感がした。
あのとき桐谷漸は言っていた。
『権力持つ連続殺人犯』と。
「ごめん、ちょっと切るね……」
「あ、うん。
また何かあったら相談のるから」
「ありがとう」
優しい柚葉に申し訳なさを感じながら電話を切った。
もしかして他にも……?と思い、桐谷漸に電話をかける前にバイト先に電話をした。
「もしもし、神崎ですけど……」
「あぁ、神崎さん。
聞いたよ、彼氏さんのこと。
もしまた復帰できるようになって帰ってきてくれたら嬉しいな」
そう言って、電話は切られた。
思った通りだ。
脳裏に浮かぶのは1人の人物。
絶対にこれは桐谷漸の仕業だ。
私はそのまま桐谷漸に電話をかけた。
「もしもし」
「ちょっとどうゆうつもり?」
「そんな大きい声出さないでよ。
びっくりするじゃん」
「なんで勝手に学校やバイト先に……」
そう言った時に気づいた。
私は桐谷漸に名前しか言ってなかったはず。
なのにどうして……。
「学校やバイトがあると犯人見つけるのに時間とるでしょ?
なるべく神崎ちゃんだって早く見つけたいって思ってるだろうし。
そのために僕から連絡いれといたんだ」
「早く見つけたいけど、だからって……」
「あぁ、大丈夫。
終わった後大学に戻れるように手はうってあるから」
「……手を打ったって、どうゆうこと?」
「『権力持つ連続殺人犯』って言ったでしょ。
そんなこと僕にかかれば楽勝なんだよ。
さて、早速探そうか」
そう言った桐谷漸は事件のあった四丁目で待ち合わせ場所に決めた。
私はため息をつきながらもカバンを持って四丁目に向かった。
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