第2話

和人を……殺す……?


「あなたが、あなたが和人を殺したの!?」

「違うよ、殺そうとしていただけで殺してはいない」

「なんで、和人を……」

「んー、なんでって言われると困るけど……。

強いて言うなら僕の目に写ったからかな」

「は?」


何を言っているんだろう、この人は……。

目に写ったから殺す?


「人の……人の命をなんだと思ってるの!?」

「別に?

なんとも思ってないよ」


そう冷たく言い放った。

さすがの私も何も言えなくなってしまう。


「あーぁ、それにしても一体誰が彼を殺したんだろうね。

僕の計画全て台無しだ」

「……わからないよ、そんなの」

「なにもしないでいるのは腹立つからなー。

ねぇ、君は犯人を捜し出したい?」

「そんなの当たり前でしょ?」


大切な恋人が殺されたんだから。

犯人を見つけ出したいに決まってる。


「それじゃ僕と手を組まない?」

「は?」


ニコリと笑顔を浮かべながら問いかけてきた彼は私の目を見ながら言った。



「君は犯人を見つけたいんだろ?

僕もそれは同じだ。

君は殺された彼のため。

僕は犯人を殺すため」

「殺すって……!」

「当たり前でしょ。

僕のターゲットを殺したんだ。

邪魔者は排除しないと」


そう言って、怪しげな笑みを浮かべた。

その姿にゾクッとする。


「嫌とは言わせないよ。

これも大切な彼のためなんだから。

僕を味方にしといて損はないし、君にもメリットあるよ。

それに協力しないなら君を殺す」

「は?」

「だって君は僕の正体を知ってしまったんだから」

「正体って……」

「んー、よくわかっていないみたいだね」


そう言って彼はスマホを開き画面を私に見せた。

画面には『またもや殺人、連続犯の仕業か』の文字。

それは今テレビでよく報道されている事件だった。


「これの犯人、僕だよ」

「え?」

「今まで報道された人達全員僕が殺した」

「本気で言ってるの?」

「もちろん。

じゃ予言してあげるよ。

いつ見つかるかわからないけど。

次は40代男性で山奥で殺害、心臓一刺し」

「……あなた、何者?」

「んー、そうだな。

権力持つ連続殺人犯とでも言っておこうかな」


そう言いながら、彼は笑っていた。

なにも危機感を感じているように感じなかった。


「……あなた、異常ね」

「それは最高の褒め言葉だ。

あ、自己紹介してなかったね。

僕は桐谷漸。

君は?」

「神崎……咲……」

「神崎ちゃんかー。

それじゃ、これからよろしくね」


私に笑顔で手を差し出した彼は殺人犯になんて全く見えなかった。

ぎこちなくその手を握れば満足気な表情を浮かべた。

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