第64話 化物
鎖にぶら下がる
(笑ってた…)
下を見ると、仰向けに寝ている
雲から漏れる月明かりに白い顔が映し出される。
(笑っている)
ニタニタと不気味な笑みを浮かべる
「
ユキが手を伸ばしている。
「ひっ!!」
小さな悲鳴、ユキの顔が引きつる。
真横に並んだニタニタと笑ったままの美しく不気味な
「聞き分けのない子達ね…いいわ、オマエが姉と慕う、この子の正体を教えてあげる、それでも一緒に居たいなら好きになさい」
ビシャンッ!!
芝生に破裂音が吸い込まれ、静寂が戻る。
(ビシャッ…ってなんだよ…)
恐る恐る、下を見た
芝生しかない……
「ユキ?」
「フフフ…ユキはどこでしょう? 賢い我が子
「何をした?」
「何もしてないわ…ユキは、産まれながらに、ああいう子だったのよ」
芝生からグジュグジュと湧き立つスライムが人の形に変わっていく。
「私なら大丈夫よ…
溶けたようなユキの顔が少しずつ復元されていく…。
「うわぁぁああぁあー」
酷く汗ばんでいた。
頭痛は消えていた。
「ユキ…
桜は異常な喉の渇きを感じていた。
「俺の母だと…」
(あの黒髪…
記憶に食い込むような長い黒髪、
殴られたようにクラクラとする頭、揺れる記憶を両手で固定するように押さえて部屋を出た桜。
記憶に再び蓋をするように扉を閉めた。
(俺は遺伝子学上の父親と言っていたな…単に毛嫌いしたわけではないようだが…)
包丁の柄をグッと握りしめる。
『木島兼頭』は、此処の料理人で、俺の父親?
いやユキの父親でもあるのか…
つまり
自分の父親とは認めたくない、いや信じられない桜の思考は『木島兼頭』を綺璃子の伴侶として認識しようとしていた。
それすら、信じられないのだが…
隣の扉に手を掛ける。
もう後には引けない所まで踏み込んでいる。
この館、全ての扉を開け放った先に、あるのは己の記憶の扉。
ソレを開けるための準備運動、そんな気がしていた。
だから躊躇いはない。
扉を開けると窓が塞がれた部屋。
(観葉植物…)
鉢植えにされた植物がビッシリと並べられている。
「サボテンでもなさそうだし…」
並べられた植物は、見た事がない。
植物に詳しいわけではない。
それでも、見た目に違和感を感じる。
あからさまというわけではないが、どこか地球上のソレではないような違和感。
何かに似ているというわけでもなく、それでいて現実として、目の前にあるのだ。
そっと指で葉っぱに触れてみる。
多肉の厚みある葉、花は咲いていないが、もし花を咲かせるなら…その想像がつかない違和感ある植物たち。
「作り物みたいだ…」
ボソッと呟いて、ゾワッと鳥肌が立った。
「まさか…」
桜の脳裏に過ったのは…
(造ったのか!?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます