第41話 得手

「桜~、ごはん」

「うん、何を食べる?」

「バター味」

 ナミは自分の大きいバッグからスナック菓子を取り出す。

「最近、コレ好き、あのさ、お菓子の工場とか無くならなくて良かったよね」

「そうだね…輸入品が増えたけどね」

「コレは~」

「コレは国産だよ、ここの工場は残っているんだ」

「じゃあよかったね」

 バリッと袋を開けて、パリポリとスナックを食べる。

「お菓子だけじゃ身体に悪いよ」

「コレも食べるよ」

 またバッグをガサゴソと漁り豆腐と納豆を出す。

「目玉焼きでも作るよ、俺は…」

「ナミのも~」


 ナミは、そのまま自室へは戻らず、桜の部屋でくつろいでいた。

「ナミ、俺は仕事があるから」

「うん、隣にいるんでしょ?」

「あぁ…お昼は適当に食べておいてくれ」

「うん、バイバイ」


 桜の部屋は、隣の事務所として使っている部屋と壁を抜いて鍵付のドアで繋がっている。

 廊下に出なくても事務所と部屋を行き来できるようにしたのだ。

 自室は角部屋で、非常口に最も近い。

 要はエレベーターを使わなくても外に出れるようになっているのだ、非常階段の下には24時間見張りが立っており、外部からの襲撃には備えてある。

 非常階段に落ちるように『スライム』のタンクも仕掛けてあり、桜の部屋から操作できるようになっている。

 この『スライム』はゴミの処理も兼ねている。

『マフィア』が出すゴミは生活ゴミだけではないので重宝されている。


 桜は『スライム』を狩るだけでなく、利用方法を模索している。

 そもそも、何でこんな生き物が急に生活の中に入り込んで来たのか? 『ボトムズ』として『スライム』と関わっていたときには疑問に思わなかった…だが、少し現場から離れた視点で『スライム』を眺めると、様々な疑問が湧いてきた。

 そこへきて、昨夜の浮浪者が言っていた『ゼロ』なる『スライム』である。

 興味というより、その疑問に関わる手がかりに繋がる何かを感じたのだ。


 コンコン…

「入れ」

「失礼します…お連れしました」

「少しは、マシになったかよ…爺さん」

「ハンバガ食いに来たんじゃ」

「あぁ…コチラの用事が済めば、好きなだけ食わせてやるよ」

「先にハンバガじゃ!!」

「おい!!」

 連れてきた『マフィア』が爺さんの肩を強く掴む。

「痛い!! 痛い!!」

「放してやれ、爺さん、じゃあこうしようか…俺の質問に答えれば、ハンバーガーを1個食わせてやる…どうだ?」

「ハンバガはどこにあるんじゃ?」

「用意させよう…おい!!」

 桜が『マフィア』を顎で指示する。

『マフィア』は電話を掛け、ハンバーガーを5個注文した。

「とりあえずは5個…飽きれば、ポテトでも何でも揃えよう…食いきれなければ、夕食のリクエストも聞く…だが…嘘を吐けば…」

「ハンバガはくれんのか?」

「オマエの指を1本づつ貰う…いいな?」

「ワシは嘘は好かん!!」

「俺もだ…奇遇だな、だから約束は守る、どういう意味か解るよな」

「ハンバガは食えないんじゃな?」

「フフ…指を貰うということさ…」

 桜は懐からバタフライナイフをクルクルと回しながら取り出した。

「俺はな…銃より、コッチの方が得意なんだ」

 ニコリと桜が笑った。

「さて…始めようか」



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