第29話 因果

「おい、いつになったら迎えが来るんだ?」

 あの『盾』が俺に話しかけてきた。

「朝まで来ない…いつもそうだ」

「朝まで? 冗談じゃない!! 俺は足を撃たれたんだぞ!!」

「そうだったな、黙らないと、もう片方の足も撃ち抜くぞ…アッチで座ってろ」

「テメェ!!」

『盾』が桜に掴みかかる。

 タンッ…

「グッ…」

『盾』がふとももを押さえて倒れ込む。

「座ってろ…」

 桜が銃をしまいながら、静かに凄みを効かす。

(別に、頭を撃ち抜いても良かったかもしれないな)

 うずくまる、うるさい『盾』を、少し離れたところから静観している桜。

「おい、オマエも騒ぐなよ、俺は疲れているんだ…苛立たせるな…弾がもったいないから、これ以上撃たせるな、いいな」

 もう1人の気弱そうな『盾』に言い聞かせる。

 黙って頷き、下を見る『盾』

「ふぅぅ」

 大きなため息を吐いて、座り込む桜、いつの間にか眠っていた…

 ほんの数分だったと思うが完全に意識が途切れていた。

 おぼろげながら見ていた夢を覚えている。

(黒く長い髪…華奢な身体の女…はオマエを知っている?)

 額に冷たい感触…意識が現実に引き戻される。

「どういうつもりだ?」

 気弱そうな『盾』が俺に銃を突きつけている。

 手がカタカタ小刻みに震えている。

 撃つ気は無くても、引き鉄を弾いてしまいそうな危うい手付き。

 黙って気弱そうな『盾』を目で威圧しようとする桜。

「自由に…自由になるんだ…」

 銃を持ったまま、気弱そうな『盾』はジリジリと桜に銃を向けたまま後ろへ下がって行く。

(これだけ距離が開けば、まず当たらないな…)

 拳銃を人体に当てるのは難しい、数m離れれば、慣れてない者に銃を向けられても怖いということはない。

「別に、逃げたきゃ逃げろ…追う気はない、仕事は終わったんだ…金が要らないなら、そのまま逃げろ…いや、できれば銃は返してもらいたい」

 手を差し出す桜。

「来るなよ…追いかけて来るなよ!!」

 桜と距離を取り後ろへ走り出す気弱そうな『盾』

「ハハハッ、ざまぁねぇな!! 『ボトムズ』」

 ウルサイ『盾』が笑う。

 気弱な『盾』が立ち止まり銃をウルサイ『盾』に向けた。

「はっ? どういう…」

 タンッ…タンッ…タンッ…

 3発立て続けに発射された弾丸は、何か言いかけたウルサイ『盾』の腹に命中した。

「……テメェ…いったい…」

 地面にうつ伏せた、ウルサイ『盾』這うように気弱な『盾』の方へ近づく。

「来るなーーー!!」

 後頭部に銃を当て引き金を弾く気弱な『盾』

 タンッ…

 ビクンッと身体が大きく跳ねて、ウルサイ『盾』は、やっと静かになった。


 肩で息をしている気弱そうな『盾』

「もういいだろ…銃を置いて行け、どのみち、弾もロクに残っていないんだ、調達できる金と伝手があれば別だが、オマエが持っていてもしょうがない…」


「うるせぇ!!」

 気弱な『盾』は残りの弾を全弾、俺に向けて撃ったが、1発も当たらなかった。

「クソッ!! ちくしょう!!」

 最後に銃を俺に投げつけ、走って逃げて行った。

 最後に投げつけた拳銃の本体だけ、皮肉にも俺の肩に当たって地面に落ちた。

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