第28話 追憶
「だから黙れ…『ボトムズ』風情に命令されたくなけりゃ、おとなしく前へ出て『スライム』の前に立ちゃいいんだ…黙ってな」
俺は少し、『盾』に凄んでみせた。
「うるせぇ!! テメェ…」
タンッ!!
掴みかかろうとした『盾』の足の甲を俺は拳銃で撃ち抜いた。
「早くしろ…」
そのまま銃口を『盾』の額にあてる。
もう1人の『盾』は鉄板を翳して『スライム』の方へ歩いて行く。
「クソ…クソッ…」
うずくまって、足を押さえる『盾』
「解ったか? まだ解らないか? 返事はいらない…解ったら盾を構えて歩け」
「あぁ?! ………」
『盾』は俺の目を睨み返したが、すぐに視線を逸らした。
そして、足を引きずりながら歩き出した。
3mほど離れて俺も『スライム』へ近づいていく。
新型の火炎放射器はトリガー式で扱いやすい。
炎が緩い弧を描いて宙を走る。
『スライム』に炎が落ち包んでいく。
射程も長いようだ、俺は少しずつ後ろへ下がった。
ブルッ…ブルブル…
『スライム』が震えている。
(来るな…)
ブヂュンッ…『スライム』が弾けだす。
「ひっ!!」
最初に歩いた『盾』が身を引く
「動くな!!」
黙ってコチラを振り返る『盾』
目が完全に怯えている。
「そのまま身を低くしていろ…それが一番安全だ」
何度か頷く『盾』
あのウルサイ『盾』は、逃げ出している。
足を引いているため、緩慢ではあるが『スライム』から距離を取って行く。
「クズが…」
タンッ!!
『盾』の足元に銃弾を放つ。
「戻れ…隙間を空けるな」
「ふざけるな!!」
「ふざけるなだと…俺のセリフだバカ野郎…戻れ…『スライム』をコッチ側に飛ばすんじゃねぇ」
俺は思わず声を荒げてしまった。
この男の態度にイラついていたのだ。
『ボトムズ』のくせにと言うなら、コイツの身なりも場違いというか、『盾』らしくない。
スーツにネクタイ、こんな格好で錆びた鉄板を担いでトラックの荷台に放り込まれる、普通じゃない。
それに、この態度がイチイチ癇に障る。
(別にこの場で撃ち殺しても問題ないのだが…)
火炎放射器を、この男の方へ向けたくなる衝動を抑え、俺は『スライム』の破片を燃やしていく。
今回は回収するものがないとのことだから、遠慮はいらない。
ただ、細かくなった破片から順に燃やし尽くせばいいだけだ。
気が楽でいい。
ハッキリ言えば、このウルサイ『盾』さえいなければ、気楽な作業だったかもしれない。
『スライム』1匹、駆除するのには手間取ったほうなのだろう…
終わる頃には、疲れがドッと出た。
『盾』2人も生きている。
上出来だろう。
コイツ等、再利用できるんだ。
生きて帰れば振り込まれた手間賃、ソレを自分で使えるんだ。
「痛ぇ…クソッ、『ボトムズ』が、覚えてろよ、俺は…帰れば、お前なんか…」
足を押さえて、あの『盾』が俺を睨む。
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