第24話 推測

 深夜3時

 ボムッ!!

 外で何かが破裂するような音がした。


 すぐにスマホが鳴る。

「すぐにロビーに集合だ、急げ!!」

 浅い眠りを覚ました爆発音、苛立ち混じりの深いため息を吐いてロビーへ向かう。

 焦げ臭く慌ただしいロビー

「準備出来たヤツからホテルの外周に配置しろ、いいな!! 中に入れるんじゃねぇぞ!!」

「ボヤボヤするな!!」

 俺は突き飛ばされるように前へ押しやられ、火炎放射器を渡された。

「『スライム』か?」

「あぁ、ホテルの周りに巻き散らかしやがった!!」

「撒き散らされた?」

「どっかの『マフィア』だろ、クソったれが!! 急げ、お前は裏口へ回れ、いいか、中に入れるなよ!!」

 俺は早足で裏口へ向かった。

 ドアを開けると『ボトムズ』が2人すでに待機していた。

「おう、ラッキーだな、コッチ側には、いないみたいだぜ」

 ホテルで顔を見かけたことがあるような長身の『ボトムズ』が話しかけてくる。

「正面にだけ『スライム』を放したのか」

「みたいだな…トラックごと爆破して巻き散らかしたって話だ」

「ドライバーは?」

「死んだってよ」

 向こうから歩いてきた、もう1人の『ボトムズ』が話しに混ぜる。

「死んでた…の間違いじゃねぇのか?」

「在り得るな…死体にアクセルとハンドルを括り付けてリモコンでドカン!!…か」

 2人が笑いながら話している。

 どっちでもいいことだ。

「俺達は2回目の備えってことだろ」

 俺は火炎放射器を降ろしてドアを背もたれに腰を下ろした。

「備え…か。2撃目の可能性ね」

「無いだろうがな…」

 俺には確信があった。

 ドライバーは生きたまま括り付けられた、つまり…見せしめなのだ。

『マフィア』の裏切りに対する、見せしめ。

『スライム』はついでだ。

 目的は2つ、『身内への見せしめ』と『ここのマフィアに対する脅し』だ。

「なぜ無いと言える?」

 タバコに火を点けた長身の『ボトムズ』が俺に尋ねる。

 スッとタバコを差し出すが、俺は吸わないので手で断った。

「トラックは軍用だった…使い捨てにするには高価すぎる」

「爆破するつもりじゃなかったってことか?」

「あぁ…届けに来たんじゃないのか…」

「あぁ? 『スライム』だぜ積荷は?」

 もう1人の『ボトムズ』も俺の横に座った。

「だからだ…『スライム』に何が入っていたのか…ってことさ」

「運び屋か…裏切りがバレて殺された…」

「あぁ」

「じゃあ、回収の方が儲かるな正面に回るか?」

「いや…何もないさ、バレて泳がされ爆破されたんだろう…『スライム』は何も食ってない」


 運び屋は取引先に対する脅しの為に泳がされ殺された。

 ココの『マフィア』に対する『脅し』と『見せしめ』に過ぎない。


 だから2撃目はない。

『スライム』には何も入ってない…すり替えられたはずだ。


 裏口のドアを誰かが叩いた…俺の背中に低い衝撃が走る。


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