第16話 診断
俺は、ホテルに戻った。
「へへ…オマエがキレたおかげで、労せず金を貰えたぜ、1人減ったし、今夜はラッキーだ、ツイてるぜ、またオマエと組みたいもんだ、っと、その時は俺に銃を向けないでくれよ、ハハハ」
笑いながら帰って行く名も知らぬ『ボトムズ』いや…聞いたのかも知れないが、覚えてない、自分が名乗ったのかも定かでない。
「今夜はご活躍だったようだなオイ」
相変わらずの軽口、もとは換金所だったであろう場所を管理しているジジイが報酬を差し出しながら、からかう様に話しかけてきた。
「っと…オマエさんにコレが届いてるぜ…メディカルチェックだそうだ」
「メディカル?」
「よくしらねぇがよ、ココに行けだそうだ…アレじゃねぇか? 最近、出動が続いてるからなオマエさん、健康診断だろ」
「そんなものがあるのか?」
「さぁな~、1人死んだんだと?」
「あぁ…」
「まぁ気にするな、明日には補充されてらぁ」
「そうだろうな…あぁ…『ボトムズ』ってのは何人いるんだ?」
「あぁ? 火炎放射器の数だけ…だろ」
後ろの火炎放射器を親指で振り向かないまま指してニヤッと笑う。
「結構いるんだな…」
「その中で、オマエさんの出動が続いてんだ気にしたんじゃねぇか?」
「誰が?」
「上の連中が…かな」
今度は人差し指で天井を指す。
「で…誰が出動を決めている?」
「それも…だろ」
チョイチョイと上げたままの人差し指を動かし、言葉を続けた。
「あみだくじで決めてんのかもな、ハハハ」
「あぁ…まぁ…解ったよ」
俺は、書類が入っているであろう封筒を受け取り部屋へ戻った。
(健康診断?)
嘘だ…きっと今夜の事を話した奴がいるんだ。
意外かもしれないが俺達『ボトムズ』は薬物使用は禁止されている。
質の悪いドラッグなんか、ガムの感覚で葉っぱを噛んでいる連中が街には溢れている。
回収に支障を出すからだろう、別に俺達を気遣っているわけではない。
そうは言っても、葉っぱを噛みながら『スライム』を狩っている輩はいるのだが。
翌朝、とりあえず指定された医者に会いに行く。
一応、検問のような連中に書類を見せてホテルの上層階へ通される。
ホテルは強固な根城だ。
『マフィア』が恐れるのは『スライム』ではない。
恐れるのは同じ『マフィア』だ。
チェスの駒を奪い合うように覇権は入れ替わる。
別に上の首が挿げ変わろうとも、俺達『ボトムズ』には関係ない話だ。
こんな世界でも医者はいる。
元々の医療関係者から闇医者、免許も定かでないヤブ医者や詐欺師まで『医者』を名乗る者は少なくない。
『マフィア』がホテルに住まわせているのは、免許持ち、すなわち、クーデター前から医師・看護師だったものだけだ。
そういう意味では安心なんだが…俺達『ボトムズ』が看てもらうなんて聞いたことは無かった。
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