第14話 監視

「なっ!!」

 思わず俺は声を上げた。

『スライム』に包まれた『ボトムズ』は声を上げる間も無くもがいている…

 窒息しているのだ。

「何してる!! さっさと燃やせ、『盾』!! さっさと構えろバカ野郎!!」

 俺の前を歩く『ボトムズ』が怒鳴る。

 ざわつく『盾』の連中、当然、自分から前へ進み出る奴はいない。

「だから…テメェが仕切んだよ!!」

 俺を指さす『ボトムズ』

(嫌な役だ…)

 俺の隣に落ちてきたのだから仕方ないことだが…

「全員で囲め」

 ノロノロと『スライム』を囲む『盾』

 食事中の『スライム』は大人しい反面、刺激に敏感になる。

 隙間なく囲った『盾』

 皆、怯えた表情のまま目を閉じている。

「しっかり押さえてけよ…隙間が空けば死ぬのは…お前等なんだぜ」

『ボトムズ』が『盾』の連中を脅すように言った…

 スッと腰から爆竹を数束取り出す。

 火を点けて、『盾』の中心に放り投げて、建物の陰に隠れる。

(チッ…あの野郎…合図も無しにかよ)

 一足遅れで俺も路地に飛び込む。

 パンッ…パパパパパンッ!!

 軽い破裂音が響く…

 ドムッ!!

 湿った布が破裂したような重く鈍い音が少し遅れて聴こえた。

「破裂しやがった…」

 そっと、路地から様子を伺う。

 バラバラに隙間は空いているが、飛散は少ないようだ。

 優秀な『盾』のようだ。


『盾』の連中だって死にたくなければ、あの『ボトムズ』が言うように、しっかりと『盾』を構えて下手に動かない方が生存確率は上がるのだ。

 背中なんか見せたら、飛散した『スライム』が張り付き見捨てられるか…一緒に焼却されてしまう。

 だが…大抵は逃げてしまう…恐怖が身体を動かすのだ。

 訓練されたわけでもないのだ、彼ら『盾』は兵士でもなんでもない。

 そこが『ボトムズ』と違うところだろう。

『ボトムズ』は最低限の教育は受ける。

『ボトムズ』が逃げてしまえば『マフィア』も商売にならないのだから。

 それでも逃げる奴が出てくるのだ。

『盾』に逃げるなというのは、無理な話なのだが…今回は優秀だと言っていい。

「上出来だ!!」

 ゴォウッ!!

 向こうの角から炎が上がる。

 焼却を始めたのだ。

 飛散した小さい『スライム』から徐々に中心に向かっていく。

 ところが…中心のスライムは、まだ食事中だったようで、それなりの大きさを維持していた。

「チッ!! まだ食ってやがる」


 路地から出た俺の足元に、食われている『ボトムズ』の腕が転がっている。

 左手か…右手か…区別がつかない。

『スライム』がこびり付いている、その腕に火炎を吹きかける。

 ブスブスと焦げた腕を踏みつけて、俺は『盾』の隙間を狙って『スライム』に銃弾を浴びせた。

 ブルン…ブルン…と銃弾を飲みこむように震える『スライム』

 路地に緊張が走る。

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