第4話 報酬
回収した箱をドンッと置いて受付に渡す。
「ほう…大物だったのかい?」
受付の爺さんが榊に声を掛ける。
「3mほどだったが…結構、貯めこんでたな」
ニヤッと笑う榊。
「しかしよ…盾が3人ってのはどうなんだ?」
「たりねぇかい?」
「全然、たりねぇよ、あれじゃ飛び散る範囲が広すぎて回収もままならネェし、なにより危なくてしょうがねぇ」
「危ねぇのは承知の上だろうが、そのリスクと贅沢な生活で吊り合いを保ってるんだろうが」
「まぁそうなんだがよ…」
『ボトムズ』は底辺職と蔑まれている。
犯罪者や障害者、老人、なんらかの理由で口減らしされた『盾』と呼ばれる奴隷を使い『スライム』を狩る。
『スライム』を狩る理由は単に生活を脅かすからではない。
その特異な習性によるものだ。
貴金属や鉱物を、その体内に貯め込むという変わった習性。
そこらじゅうを這いまわり、その体内に貯めこんでいく、大きければ、その中身も比例してくる。
回収にはコツがいる。
刺激を与えると破裂して分散する『スライム』その破裂の威力は凄まじく地雷に等しい衝撃となる。
ゲル状とはいえ比重は重く、くらえば致命傷となりかねない。
なにより、その体内に貯め込んだ鉱物や貴金属も飛び散るのだ、まさに対人地雷のような生き物、それが『スライム』である。
生命力は凄まじく、斬る、潰すなどの物理的影響は受けない。
燃やす…原始的だがコレが最も効果的な対処方法となる。
『スライム』には、もうひとつ特異な習性をもっている。
日光には弱く日中は、活動を停止する、しかし夜になると動きだし、ネオン、LEDなどの人工的な灯りに反応して近寄ってくる。
その習性から狩るには、夜間、光で誘い、飛び散らぬように囲んで破裂させ焼き殺す、コレが一般的な狩りの方法になる。
なぜ『ボトムズ』が高給取りなのか?
それは、輸出入を生業としている『マフィア』と呼ばれる組織に飼われているからだ。
回収した貴金属、鉱物、または工業製品などは、海外へ高値で引き取られる。
『マフィア』は『ボトムズ』を抱え、その回収にあたらせている。
そう『ボトムズ』とは最低という意味で付いた仇名のようなものだ。
奴隷を使い捨て、『マフィア』に尻尾を振る、その生き様を侮蔑しているのだ。
だが、今やこの国は『マフィア』が乱立し、彼らの都合が『法』なのだ。
僕が暮らす、このホテルの部屋も、その『マフィア』に与えられた居場所だ。
3食寝床付き、この国で優遇されている農家の月収が5万円の、この国で、僕は20万円の月給、狩りから戻れば回収した分の5%が別途貰える。
資格はいらない。
必要なのは…全てを捨てる絶望という名の覚悟だけだ。
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