第3話 炸裂
『盾』の1人がサイリウムを投げ捨てて逃げようとした。
「バカ!! クソッ…なにやってんだ、高木!! さっさと撃て」
「はい」
腰の拳銃に手を伸ばし、不慣れな手つきで銃を構える高木。
「動くな!! …逃げるなら、この場で射殺します…するぞ」
敬語を命令口調に言い換えて逃げようとしている『盾』を牽制する。
「嫌だ…嫌だ…」
タンッ
渇いた音が響き、『盾』が倒れた。
「さっさと撃てよバカ…ソイツにサイリウム全部差して、スライムに喰わせるぞ」
榊が高木に命令する。
「あっ…はい…」
緑やオレンジの光に包まれた死体から少し距離を置く。
ウジュル…ウジュル…
3mほどのカラフルな塊がズルズル死体に近づいてくる。
ズルッ…ニュチャッ…
嫌な音を立てて、死体を包み隠すように絡まり丸まっていく…
「おら!! さっさと行かねぇか盾!!」
錆びた鉄板にその身体を隠しながらスライムに近づいていく『盾』と呼ばれた男2人。
「ったく…グズグズしてるんじゃねぇよ…刑期が縮む唯一のチャンスだろうが、サッと行って破裂させちまえっての」
榊がブツブツと愚痴る。
鉄板を盾の代わりにして、丸まったスライムを左右から挟み込んで倒れ込む。
「やっぱ2人じゃ無理だな…来るぞ…物陰に隠れろ…」
榊が僕達に声を掛けてトラックの荷台へ隠れる。
しばらくすると
ブチュンッ!!
重い水が内側から爆ぜるような音がして、ビチャッ、ビチャッと辺りに飛び散り引っ付く音が聴こえた。
「行くぜ!!」
榊が火炎放射器を構えて外に飛び出す。
ゴォッ…と炎が辺りを照らし、ボロいホロの隙間からオレンジの光と熱が入り込む。
「ボヤボヤすんなよ!! 回収するだけしたら、さっさと撤退するぞ」
僕達は、トラックから降りて飛び散ったスライムをライトで照らし貴金属を探す…
チラッと『盾』の方を見ると、1人はスライムが所々に張り付きもがいていた。
もう1人はすでに事切れているのか動かない…。
しばらくすると榊が
「もう限界だ!! トラックのエンジン掛けとけ!! 解ったのか新人!! おい高木!!」
「はいっ!!」
怒鳴るように急かす榊の声に弾かれたように返事する高木。
「回収は?」
「大方…行きましょう、奴ら塊だしました」
「そうだな…どら?」
僕の回収した貴金属類や金属の破片が入った箱の中を見た榊が満足げに笑う。
「おう…いい集めだな…上等だ」
バンッと僕の背中を叩いて、トラックの荷台へ転がるように乗り込む。
「出せ!!」
「はい…あの…盾の人は…まだ生きてますけど…」
運転席から荷台の榊へ高木が訪ねる。
「バカ野郎!! スライム塗れの『盾』なんて回収する気かバカ…行けよ!!」
トラックは勢いよく走りだした。
僕は助手席から置き去りにされる『盾』を見ていた…
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