第33話 いだてん

 やあ、おいらです。


 この駄文を読んでくださる希少な方の中で、大河ドラマ『いだてん』をご覧になっている方はほぼゼロに近いでしょう。なにせ、分母が小さいからね。

 ところが、おいらと来たら『いだてん』が面白くて仕方ない。近年ではナンバーワンですよ。あくまでも、ここまでは、ですけどね。

 ああ、おいらはNHKさんのまいたサクラでも、宮藤官九郎フリークでもありませんよ。だいたいねえ、クドカン作品で面白かったのは『タイガー&ドラゴン』だけで、『あまちゃん』は観てないし、ああ、総集編をちょっとかじったけれど、なぜ、ブームになったのか全くわかりませんでした。さらに最低最悪の『うぬぼれ刑事』という、本当につまらないドラマを「もしかしたらどこかで面白くなるかも。だって『タイガー&ドラゴン』の宮藤官九郎だよ」って最終回まで観て、ひじょうに後悔したこともありますし、映画『真夜中の弥次さん喜多さん』を見に行って、あまりに下品なのと、後半が全く意味不明で「カネ、返せや。クドカンさんよ」って右頬の傷を見せつけ、匕首を持って『大人計画』の事務所に突っ込む一歩手前まで行きました。ああ、傷はフェイクです。

 だから、おいらは思うのです。「宮藤官九郎の評価は実際より高すぎる!」ってね。

 なのにですねえ、前評判から悪かった『いだてん』を観てしまったのは「とりあえず、一話だけ」という、いけないクスリに手を染めちゃう、倦怠期の奥さんみたいな心境だったのです。

 そうしたら、意に反して面白い。まあ、性にあってんでゲスね。

 まずねえ、オープニング曲がとてもいい。なんか、やるぞーって気になる。もちろん、実際には何もしませんけどね。

 で、悪評高い、たけし師匠の古今亭志ん生師匠ね。滑舌悪いってみなさん言っておられるけれど、本物の志ん生師匠だって、脳梗塞かなんかで、滑舌悪かったそうですよ。ただ、髪型がいけません。たけし師匠は『戦場のメリークリスマス』の時のように、つるっぱげにしなくちゃ。でさ、アドリブで「メリークリスマス、Mr.ローレンス!」とかやったら、一家大爆笑。

 それから、志ん生師匠の若い頃を演じている森山未來がすごくいいなあ。今日、初高座だったんですけど、へべれけに酔ってんの。でも喋りに光るものがある、って感じを出すためには相当な稽古をしたのでしょう。師匠、橘家圓喬役の松尾スズキもいい味出してる。まあ、大人計画大集合ですね。代役も含めて。

 そういうわけで、おいらは脇の部分ばっかり褒めていますな。中村勘九郎とか生田斗真とか役所広司なんかは別にどんなドラマに出ても上手にやるからさあ、批評するまでもないね。でも、金栗四三が足袋をあげたポルトガルの選手が日射病で亡くなったと伝えられたシーンは危うく泣きそうになった。でも、おいらは冷酷な人間(今作では)だから泣かなかったよ。


 まあ、そういうことです。多くの人が嫌っても好きな人が必ずいるから。

 おいらは待ってるぜ! 春風亭昇太が諦めてないんだからな。

 では。

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