#5              

亜紀翔は急に真顔になった。

「見つけるの、遅くてゴメン。寒かったよね。

あと・・・」


そのあとの言葉に瑠美は泣きそうになった。





「会長がそんなに追い込まれていたなんて気がつかなくてゴメン。

もっと会長を支えられるようになりたいって陰から見ていたけど、

それだけではダメだね。もっと会長を支えられるようになりたい。

会長の一生の中に少しでも長くいたい。俺も支えられるように頑張るから、

会長も体を傷つけないで。そして、俺を頼って。ね?」


「あと、このことは誰にも言わないよ。」







いままで誰にも言えないでいた自分だけの秘密だったはずだった。

けれど、一人だけの秘密から二人の秘密になり瑠美は肩の力が少し抜けた感じがした。

そして、誰かに励まされる心強さを知った。

でも、もっと弱みを見せたくないと瑠美は泣かなかった。


「ありがとう・・・」


涙の代わりにその言葉を亜紀翔に言った。

瑠美はそのあとに立ちながら一言付け加えた。

「鞄を持ってきてくれて。」

その言葉は会長の強気から出た言葉だった。

「え~。そっちの意味のありがとうなの?違う意味の方は~?」

亜紀翔は不満げにでも楽しそうに言った来た。

「何のことですかね~?」

瑠美は笑いながら返した。


本当はありがとうという気持ちでいっぱいだった。

でも、今は会長の口から出ない。

強気な会長が邪魔して、瑠美の気持ちは言えなかった。

だから、ちゃんと瑠美の口からはっきりと素直な言葉が出るまで、


「待ってて。」ボソッ


亜紀翔は傘をさして会長に早く~っと手を振っていた。













#5 亜紀翔の言葉と瑠美の気持ち










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る